フリーランスデータエンジニアの現実は?収入、キャリア、クライアント戦略を本音対談 Article Image

フリーランスデータエンジニアの現実は?収入、キャリア、クライアント戦略を本音対談

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膨大なデータの活用が事業の成長を左右するといわれる昨今、経験豊富で即戦力となるフリーランスのデータエンジニアが企業に求められる場面は、ますます増えると考えられます。現在エンジニアとして仕事をしているフリーランスのなかには、データエンジニアへの転身を検討している人も少なくないでしょう。​​

一方、新しい技術が次々と登場する今、必要とされるスキルは絶えず変化するのも現実です。こうした状況のなかで、フリーランスのデータエンジニアが長期的にキャリアを築くためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?

今回は、ソフトウェアエンジニアからデータエンジニアへキャリアチェンジした、フリーランス歴21年の河村さんと、8年の岩崎さんのキャリアを振り返りながら、長く活躍し続けるためのヒントを探ります。収入面の変化や自身の強み、エンジニアとして生き残るためにやった方がよいことなど、赤裸々に語ってもらいました。

🎙岩崎晃さん(以下、岩崎):データエンジニア、データアナリスト
大手 SIer 企業に入社後、エンタープライズ向けハードウェア機器の OS 開発等に従事。2017年よりフリーランスで活動開始、2021年に法人化。現在はデータエンジニア、アナリティクスエンジニアとして国内プラットフォーム事業の案件を複数受け持っている。https://www.sollective.jp/en/freelancer/aiwasaki

🎙河村謙治さん(以下、河村):データエンジニア、データベースコンサルタント
2社でソフトウェアエンジニアとして計9年間勤務したのち、2003年よりフリーランス。PostgreSQL の研究開発、導入、Oracleからの移行、顧客サポート、教育などに携わる。次のキャリアは AI、データ利活用、データサイエンス、後進の育成に興味あり。https://www.sollective.jp/en/freelancer/kubojin9

技術トレンドの収集を怠らず、将来性を見越して戦略的にスキルを獲得

岩崎: 僕は長年 SIer 企業で働き、フリーランスになって8年が経ちます。独立した当時は Web やアプリ開発エンジニアの需要が高く、競争優位に立つのは難しいのではと考えたんです。一方、データエンジニアはまだ名前すらなかった時代で、新規参入者の参入障壁が低かったのと、データ関係の案件は将来的に必ず伸びると考えていたので、将来性を見越してデータエンジニアの道を選択しました。

河村:岩崎さんはフリーランスになった当初から、戦略的にスキルの差異化を図ったんですね。データエンジニアとしてのキャリアがない状況で、最初はどうやって仕事を獲得していきましたか?

岩崎:フリーランスになったばかりの頃は、OS やネットワーク周りの経験はありましたが、当時主流となり始めていたクラウド開発の経験はありませんでした。なので、知人のツテを駆使して、信用スコアリング系企業のデータ分析基盤をオンプレミスからクラウドに移行する案件に参画しました。そこで経験を積んだあとは、大企業向けにはこのデータの専門スキル、中小企業向けにはこのスキル、というように、企業の性格ごとに求められるスキルを磨いていったんです。

スキルの幅が広がるとともに、収入も会社員時代と比べて大幅に増えましたね。3年前に法人化してからは技術相談など案件の幅が広がり、バイネームでも依頼をいただけるようになってきたところです。

河村:すばらしいですね。岩崎さんは先ほど、この道に進んだのは「データエンジニアとしての将来性を見越して」ともおっしゃいましたが、普段からどのように技術に関するアンテナを張っているのですか?

岩崎:X で流れてくる技術系の動向や海外のテック系の記事を中心に、技術トレンドは日常的に追っています。あと、企業は積極的にテック系のセミナー、ウェビナーを開催しているので、名前を売る意味でも極力参加するようにしています。

ソファに座って打ち合わせを行う岩崎さん

クライアントの期待に応えつつ、自分の市場価値を常に把握

河村: 私がフリーランスになったきっかけは、勤めていた会社の事業方針や配属部署によって、エンジニアとしてのスキルパスが狭まる状況にリスクを感じたからです。ちょうど知人の経営者から声をかけていただいたのを機に独立し、21年経ちます。

当時は、「フリーランスになれば自分の好きな仕事を自由に選べる」と考えていましたが、実際にはスキルや実績をもとに仕事を任されるので、そこは想定と違いましたね。最初は会社員時代と同じくソフトウェア開発に携わり、3年目からデータベースに関わるようになりました。

岩崎:フリーランス歴21年という長いキャリアのなかで、働き方や収入面はどのように変化していきましたか?

河村​​:12年という超長期案件に恵まれ、会社員のように毎月安定した収入を得られた時期があったんです。それがデータエンジニアとしての地位を確立し、フリーランスとして長く活動できた理由の1つでもあります。しかし、エンジニアとしての市場価値や相場の把握から遠ざかってしまい、自分のスキルをより高い報酬で生かせる可能性を探らなかったのは、無頓着だったなと。

また、フリーランスエンジニアの契約形態の多くは稼働時間で収入が決まり、契約で記された稼働時間が要求されます。つまり、効率的に短時間で仕事をしても収入には反映されず、逆に時間をかけるほど収入が増えるという矛盾です。でも私は、もともと超過勤務や残業が嫌いで、どうすれば効率的にできるかを常に意識して取り組んできました。最適化を追求しながら確実に納期を守ることで、クライアントからの信頼を得てきた気がします。

岩崎:それはまさに「お客さまファースト」の姿勢ですよね。単に仕事を丁寧にこなすだけではなく、クライアントが抱える課題や目標に対する深い理解が大事だと、僕も日頃から思うんです。

河村:たしかにそれでこそクライアントの期待に応えられると感じます。あと意識していることとしては、コミュニケーションは先延ばしせずに「すばやく投げ返す」ことでしょうか。

岩崎:僕も同じです。クライアントからの問いかけや要望にはすばやく対応し、自分が「ボールを長く持たない」ようにしていますね。

河村:それに加えて、私が心がけているのはクライアントとの期待値の調整ですね。全部仕上げた状態ではなく、作業が3割程度完了した時点で方向性の確認をします。もし違っても早めに軌道修正できるので、期待と実際の仕上がりとのギャップを抑えられますから。

Sollective のイベントで、ソファに座ってコミュニティマネージャーと話す河村さん

フリーランスのエンジニアは、積極的な発信などビジネス視点も重要

岩崎:クライアントの期待に応えながら長く活躍していくために、「働きやすい環境作り」も常に考えていますね。意外かもしれませんが、プロジェクトに関わる仲間が「明るく楽しく働ける」環境って、技術の追求以上に大事ではないかと。

河村:私も、フリーランスの立場でも働きやすい環境づくりに貢献できると思っています。たとえばメンバーの技術を底上げすれば、結果的に超過勤務や残業の削減につながりますよね。なので今後は若手エンジニアの育成にどんどん関わっていきたいですね。企業の社員の方々はプロジェクトの遂行に注力されているので、若手にノウハウを伝えるのもキャリアの長い自分の使命かなと。実際、「技術面でのサポートに加え、チームメンバーの成長支援にも尽力してくれている」と評価をいただいた経験もあります。

岩崎:育成に携わることは、長く活躍していくための重要な戦略にもなりますよね。僕も今は後進の育成に注力しています。

また、自分のスキルと市場のニーズが合致するかの見極めも必要だと思います。そのためには、先ほども挙げたように日頃から X や Web などで 技術や市場の動向を注意深く観察したり、未経験や不得意な領域にチャレンジして視野を広げ、自分のスキルを客観的に捉えたり。このような活動に日常の約2割を充て、得た知見やスキルは積極的に外部へ発信しています。

河村:それが目にとまって仕事につながったり、横のつながりができるきっかけになったりしますよね。

実は以前、知人の経営者から「河村さんの持つスキルや実績が世間に知られていないのが問題。それでは新規の仕事が来なくなる」と言われたんです。そのとおりだと思ったので、今は Sollective をはじめとするネットワーキングイベントに参加して、異業種の人とも交流を持つようにしています。

岩崎:僕もセミナーの登壇や交流会など、露出できる機会は見逃しません。そこでのご縁を機に、異業種の方から思いがけず依頼をいただくことが、実は少なくないんです。

エンジニアのスキルは陳腐化のスピードが早く、AI の登場でさらにその傾向が増しています。そのため、これからはビジネスの仕組みを理解し、それを活用できるスキルがより重要になる。だからビジネスの視点を養うためにも、僕はエンジニアでありながら営業のように外に出て、さまざまな人とコミュニケーションを取るようにしています。

河村:今回の岩崎さんとの対談は、すごく刺激になりました。

岩崎:こちらこそ、ありがとうございました!

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