【男性更年期×40〜50代フリーランス】経験者が語るリアルと、うまく付き合うヒント Article Image

【男性更年期×40〜50代フリーランス】経験者が語るリアルと、うまく付き合うヒント

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男性更年期障害の経済損失は年間1兆2000億円*¹—。2024年2月に経済産業省がこんな試算を公表すると、多くのメディアが男性更年期障害による欠勤やパフォーマンス低下がもたらす影響を取り上げました。

男性更年期障害に対する認知度は低く、2022年に厚生労働省が行った調査によると、更年期によって心身の不調が訪れることを「よく知っている」と答えた男性はわずか1割強*²。冒頭の発表などによって「男性更年期」の存在自体は少しずつ知られるようになったものの、現在も更年期にまつわる不調について十分に理解している男性は決して多くないようです

この理解不足こそ、男性更年期における経済損失の大きな要因だと考えられます。実は、正しい情報を得て自分に合う対策を講じれば、症状を抑えて仕事のパフォーマンスを維持することは可能。特に柔軟な働き方を選べるフリーランスの場合は、更年期を「フリーランスとして長く活躍するための、心身を見直す機会」として前向きに捉えることもできるのです。

そこで今回は、実際に男性更年期の症状を経験しつつも仕事で活躍しているハイスキルフリーランス2名に話を聞きました。リアルな経験談に男性更年期の基礎知識を交えながら、心身のゆらぎとうまく付き合いつつ活躍し続けるヒントを探ります。

*¹ 出典:女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について(令和6年2月)
*² 出典:厚生労働省「更年期症状・障害に関する意識調査(令和4年3月実施)

👨渡辺さん(仮名)50歳/フリーランス歴10年以上/デザイナー

  • 症状を初めて感じた年齢:46歳頃
  • 働き方:自宅でフルリモート。仕事での外出は月2回程度

👨‍🦰西さん(仮名)50歳/フリーランス歴2カ月/IT・事業コンサルタント

  • 症状を初めて感じた年齢: 不調を感じたのは42〜43歳頃、受診したのは47歳
  • 働き方:自宅でフルリモート。コワーキングスペースの利用を検討中

「集中力が続かない」「疲れやすい」長引く不調で男性更年期を自覚

男性更年期障害(別名:LOH症候群、加齢男性性腺機能低下症候群)は、男性ホルモンであるテストステロン値の低下によって起こります。その症状は次のとおりさまざまです。

身体症状の例
肩こり、関節痛(腰・膝・手足)、倦怠感、疲れやすい、動悸・息切れ、頭痛、めまい、耳鳴り、胃腸の不調、性欲減退 など

精神症状の例
イライラ、興味や意欲の低下、不眠、記憶力の低下 など

参考:内閣府「令和5年度 男女の健康意識に関する調査報告書」

これらは一見すると「男性更年期特有の症状」とは気づきにくいものです。そもそも男性更年期の知識がなければ、仕事のストレスや加齢によるものだと思うかもしれません。

渡辺さんと西さんも、当初は男性更年期についてほとんど知らず、西さんに至っては「更年期は女性だけにしか訪れないと思い込んでいた」といいます。

そんな2人が更年期の症状だと気づくきっかけとなったのは、一時的ではない、長引く心身の不調でした。

「男性更年期障害かも」と感じた症状は?

👨渡辺さん
(46歳頃から)

  • 興味のあることに対して集中力が続かなくなった(以前は長時間没頭できた)
  • 無理をした際、回復に時間がかかるようになった
  • 日中に眠気を感じ、昼寝が必要になることが増えた
  • 休日(プライベート)に無気力感を覚えることが多くなった

👨‍🦰西さん
(42~43歳頃から)

  • 疲労感、不安感、怒りっぽさが徐々に増大
  • 顎のラインに老化が目立つなど、顔まわりに加齢による痩せ方があらわれた
  • 思うように体を動かせないほどの目まいを何度か経験

(47歳頃から)

  • 首こりや腰痛が悪化。視力、筋力が低下
  • 気分の落ち込み、憂うつ、倦怠感がさらに顕著に
  • 19時以降に倒れ込みそうなほどの極度の疲労感、夜間の不眠症状
  • 趣味や楽しみに興味を失い、好きなアーティストの音楽を聴くことさえ苦痛に感じるようになった
  • 性的欲求が完全に消失(悟りを開いたと勘違いしそうなほど!)

テストステロン補充療法で症状が劇的に改善

西さんに症状が出始めたのは42~43歳頃、会社員として月に250~280時間も働いていた時期でした。最初は運動不足による不調だと考えていたそうですが、次第に歩くスピードが遅くなり、「80代の高齢者になったように思えた」と振り返ります。日々の生活に限界を感じ始めていた頃、パートナーからいくつかの症状を「まるで女性の更年期みたい」と指摘され、医療機関を訪れました。その際、近隣の泌尿器科などに男性更年期の診療が可能かどうか、また保険診療の範囲についても問い合わせてから受診したそうです。

👨‍🦰西さんの医療機関での治療内容
テストステロン(男性ホルモン)の補充療法中。治療開始当時は2週間に1度、現在は3週間に1度のペースで通院し、注射薬(保険適用)の投与を受けている。自宅ではテストステロンが含有されたクリーム(保険適用外)も使用。毎回通院後の2週間ほどは体調が良好だが、テストステロン値が下がると急激に疲労感や倦怠感、老眼とは別の視力や筋力の低下、気分のムラがあらわれる。それでも、通院開始前と比べて体調は大きく改善し、症状に合わせて仕事や生活を調整できるように。

治療を始めてから西さんの症状は劇的に改善。周期的に注射を打つことで体調が悪くなるタイミングがほぼ予測できるようになり、計画的に仕事の緩急をつけやすくなりました

西さんのように、更年期障害の自覚に時間がかかるケースは決して珍しくありません。というのも、男性更年期は女性と異なり、男性ホルモンの減少がゆるやかに進むため症状がわかりにくいという特徴があるからです。西さんは自身の経験から「40歳を超えたら単なる老化と決めつけず、調子が悪ければすぐに受診した方がいい」と話します。

なお、ホルモン値の測定は、泌尿器科や男性更年期専門の医療機関で受けることができます。また男性更年期の症状は「AMSスコア」と呼ばれる質問票でセルフチェックできるため、「もしかして…?」と感じたら、まずは自身で確認するとよいでしょう。AMSスコアは医療機関のWebサイトなどで簡単に見つけられます。

生活習慣の見直しや、体調の波の把握も効果的

テストステロンの減少は、生活習慣の見直しでもある程度抑えることができます。実際、渡辺さんは医療機関を利用せず、生活の工夫だけで更年期の症状をほとんど感じなくなったそうです。

👨渡辺さんの生活面での工夫

  • 定期的に筋トレを行い、筋力低下を防止
  • デリバリーで済ませていたランチを、ヘルシーで低カロリーメニュー(完全食のパンや栄養管理された冷凍食品)に変更し、食生活を改善
  • 更年期の対策に取り組んでいること自体が、不安の軽減に役立っている

さまざまな工夫のなかで、渡辺さんが最も効果を感じたのは、ランチ内容の見直しです。デリバリー中心のランチをヘルシーな食事に切り替えたことで、増加傾向にあった体重が減少。肥満が更年期症状悪化の一因だと考えていた渡辺さんにとって、体重管理に効果があっただけでなく「手間がかからず、時短で済む」という予想外のメリットも得られました。

一方、治療を継続中の西さんも、症状に合わせて働き方を見直した結果、仕事のパフォーマンスが徐々に回復したといいます。またテストステロン補充療法の効果を実感していることで、定期的な通院そのものが心の安定にもつながっているようです。

👨‍🦰西さんの生活面での工夫

  • 最低6~7時間の睡眠時間を確保。不足時は日中に15~20分程度の仮眠を取って調整
  • 翌日に仕事がある日は原則禁酒(会食のある日のみ飲酒)
  • 自分の体調の波(調子の良い時間帯や疲れやすい時間帯など)を把握し、それに合わせて仕事の予定を調整(加減を調整)
  • メンタルコントロールを意識し、自分の体調に注意を払うことで心身の安定を図る

更年期障害への対処が、将来や健康を前向きに考えるチャンスに

男性更年期の症状には個人差があり、自覚症状がない人もいます。しかし、加齢に伴うホルモンの減少はすべての人に起こり得るもの。「知られたら恥ずかしい」と過度に気にする必要はありません。

実際に、渡辺さんは、更年期の症状を同年代の仕事仲間に打ち明けたそうです。また西さんも治療を通じて、周囲に同じような症状を抱える人がいることに気づいたといいます。身近な人に状況を話すことは、「自分は特殊ではない」と感じ、不安や孤独感を軽減できるという効果も期待できます。

さらに更年期への適切な対処は、生き方やマインドセットの面でのポジティブな変化にもつながるようです。2人は人生で本当に大切にしたいことに注力するようになったり、健康管理の重要性を再確認したりと、事業の持続可能性を高める重要な気づきを得たといいます。

男性更年期を自覚してよかったことは?

👨渡辺さん
仕事や趣味を厳選するように。これからは本当にやりたいことだけを選ぼうと思った。

👨‍🦰西さん
男性は更年期との付き合いが長期に及ぶかもしれないので、身体を大切にする意識が強くなった。

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20~30代からストレス管理と生活習慣の改善を

男性更年期の知識を得るのは、20~30代でも決して早すぎることはありません。西さんは症状の重さに数年悩んだ経験から20代を振り返り、こうアドバイスします。

「お酒は更年期障害に影響するため、適度な量を心がけるのがベスト。過剰な飲酒を少し後悔しています。そして、なにかしらの運動や筋トレの継続をおすすめします」。

更年期障害の有無にかかわらず、フリーランスが長く活躍し続けるには、心身の健康管理が鍵です。特に、自宅で働くフリーランスは、生活リズムが不規則になりがちです。今一度、自分の生活を振り返り、少しずつ健康を意識した生活にシフトしていきましょう。

渡辺さんと西さんの経験とメッセージを参考にして、ぜひ自身に合った男性更年期との付き合い方を見つけてください。

👨渡辺さん
更年期はミッドライフ・クライシス(中年の危機)の時期と重なりやすく、「キャリア上の悩みからくるストレス」と「更年期による心身の不調」との見分けが難しいもの。キャリアの問題は簡単に解決できませんが、更年期には対処法があります。たとえば、気分が上がるジム通いや自分に合ったサプリを試すなど、前向きに向き合うことが大切です。

👨‍🦰西さん
仕事熱心なのはよいことですが、日頃から運動、睡眠、食生活など、体調に影響する要素には気を配ることをおすすめします。また、ストレスは更年期に大きな影響を与えるので、自分に合う解消法を身につけたり、ストレス源から距離を置いたり、完全にゼロにはできなくても、軽減する努力をしましょう。

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