フリーランスの案件獲得や単価交渉の方法は?UI/UX デザイナーの本音対談
会社員と異なり、すべてを自分でこなすフリーランス生活。わからないことを聞ける同期や仲間がいないため、始めたばかりの頃は「これで合っているのか」と不安になることもしばしばあるでしょう。特にクリエイティブ系の人々にとって案件獲得や単価交渉の方法などは手探りで進めるケースが多いかもしれません。
そこで今回の「フリーランスの本音対談」第4弾では UI/UX デザイナーの2人を招き、会社員との違い、案件の取り方、報酬単価の決め方などそれぞれの体験を赤裸々に語ってもらいました。デザイナーはもちろん、これからフリーランスとしてのキャリアを始めたい他職種の皆さんもぜひ参考にしてください。
会社員時代よりも幅広い経験が積める一方、デザインに専念しづらい面も
町田:僕がフリーランスになったきっかけは、デザインの幅を広げようと思ったからでした。勤めていたスタートアップに残ることも考えたのですが、1つの事業に何年も関わるよりも多様な経験を積むことを優先したんです。
今はフリーランスになって3~4年ですが、やはり会社のなかで働くのと外から関わるのは違いますね。よい面としては、複数の案件に同時に携われるので、別案件でやったことを抽象化してほかに適用できる点。いろんな経験値を同時並行で得られるのは貴重だなと感じます。
松浦:同感です。その反面、こまごまとしたタスクを自分でこなさなきゃいけないのは大変かな。経理や、契約、マーケティングなどは会社にいればほかの人がやってくれたので自分はデザインに専念できた。でもフリーランスだと、そうはいきません。
町田:そういうタスクの知識は、どうやって学びましたか?
松浦:周りにフリーランスが少なくて聞ける相手もおらず、自分で調べたりハローワークに行ったりしました。町田さんは起業経験があるので少しは知識があったんでしょうか?
町田:いえ、僕も最初はわからないことだらけでした。でも今は YouTube でいろいろ学べるので、ある程度情報は取りやすかったかなと思います。
松浦:税金だと大河内薫さんとかわかりやすいですよね!フリーランスなら見てる人も多いんじゃないでしょうか。
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案件獲得の決め手は、自分なりの判断基準
松浦:僕がフリーランスになった経緯は、町田さんとは違ってなりゆきでした。起業する計画がコロナ禍で頓挫して暇になったので、とりあえず飲食店のテイクアウト情報をまとめたポータルサイトを作ってみたら、掲載したカレー店からシールデザインの依頼をもらいまして。それがフリーランスデザイナーとしての始まりです。
コロナが落ち着いてからはネットワーキングイベントに参加して仕事を獲得することも多かったですね。でも個別に営業するのも手間なので、ここ1年くらいはもっぱらエージェントやマッチングプラットフォームに頼っています。
町田:初案件で言うと、僕の場合は前の会社の仕事でした。退職して独立すると伝えたところ「辞めても手伝ってほしい」と言われたんです。それ以降は紹介がつながってお仕事をいただけています。
松浦:町田さんはどんな基準で仕事を選んでいますか?
町田:大事にしているのは、自分の価値をしっかり提供できる相手かどうかですね。具体的には、グラフィックデザインなど専門外の領域は断ることが多いです。これは企業の利益を考えての判断でもあります。
あとは経営者がデザインに投資する企業だと価値を発揮しやすいと感じます。UI/UX の良し悪しは企業の競争力に直結するので、時間とお金をかける意味で投資と捉える企業のお手伝いができるとうれしいですね。
松浦:僕は「報酬」と「おもしろいと思うかどうか」、この2つをかけ合わせてできる面積で決めています。だから極論、報酬が1円でもめちゃくちゃおもしろそうだったら受けますし、おもしろくなくても報酬が高かったらやる。厳密に広さの基準を厳密に決めているわけではないですけど。
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報酬単価の提示や交渉は、相談の余地を残しながら慎重に
町田:たしかに報酬も大事ですよね。松浦さんと違って僕の場合は、金額の下限をある程度決めて、それ以上の範囲で案件を受けています。といっても最初は基準がなかったので、相場を調べて決めました。
松浦:報酬額って最初はどう決めました?
町田:前職企業の案件だったので、「給与とフリーランスの報酬を一緒に考えてはいけない」とは思っていました。フリーランスの時給は会社員給与の時給換算の1.3~1.5倍という情報もどこかで見かけて悩んだのですが、最初はフリーランスとしての実績もないのに高すぎてもどうかと思い、結局相場を調べてそのやや上ぐらいにしました。松浦さんは?
松浦:実は最初の案件は「印刷費だけでいいのでやらせてください」ってお願いしたんです。その後チラシやメニューのデザインも依頼されたので、そのときはフリーランスの案件紹介サイトで似たような案件の金額を調べて、そこに少し上乗せして提示しました。
町田:デザイン費無料とはすごいですね。
松浦:最初は軽い案件を無料で手がけて、その後アップセルを狙うという方法はよく採ります。まず信頼関係を作ってしまえば、その後の提示金額が多少相場より高くても受け入れられますから。でも一度おつき合いを始めたら、途中で値上げはしません。
町田:僕も途中で引き上げることは基本的にはないですが、先日インボイス事業者として登録したのを機に時給を上げました。記帳の手間や税理士費用が余計にかかりますから。新規取引先に対しては、自分が出せる価値に応じて金額を10〜20%高めに設定するときもあります。
松浦:値上げしたり高めの金額を提示したりするなら「じゃああなたじゃなくていい」と言われる覚悟が必要ですよね。僕はその勇気がまだちょっとないのかな。
町田:なので僕も高めの金額を提示する際には「予算もあるでしょうし、気軽にご相談ください」という伝え方をしています。
松浦さん
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信頼構築の鍵は取引先を安心させる姿勢や行動
町田:先ほど信頼構築の話が出ましたが、松浦さんはほかにどんなことをやっていますか?
松浦:早めの返信ですね。あとは話す時間を作ること。定例ミーティング以外にも「これについて軽く話していいですか」などとできるだけ機会を作ります。リモートで仕事をする場合は特に、意欲的な姿勢を見せることが安心感につながるのかなと。町田さんはどうですか?
町田:サービスの UI/UX をデザインする場合は取引先の業務フローに入り込むので、外部という意識ではなくチームメンバーというマインドセットでやっています。あとは稼働時間が限られているので、事前に見通しやアウトラインを共有するとか。即レスもそうですけど、早めの対応は大事ですよね。
松浦:一方で相性の悪い取引先もいますよね。たとえばいつまでも修正が終わらない取引先の仕事はもう受けないようにしています。
町田:僕の場合、なじみのない領域の仕事を丸投げしてくる取引先は困りますね。
松浦:ただ取引先が専門家に全部任せてくれているという風にも取れますよね。デザイナーとしてそこは掘り下げるプロセスも必要なんじゃないでしょうか?
町田:おっしゃるとおりで、なじみのある領域だとこちらから提案します。でも金融や製造業、法律関係などまったく知識のない業界で丸投げされると、情報収集に時間がかかり、自分の価値が十分発揮できなくなってしまう。それは結局お互いにとって時間とお金の浪費になりますよね。しっかり貢献するには取引先と共創できる環境が不可欠だと感じます。
松浦:たしかにそうですね。今日は色々とお話しできて興味深かったです。ありがとうございました!
町田:こちらこそありがとうございました!