正社員にこだわらない、組織フェーズに応じたチーム設計【人事図書館登壇レポート】 Article Image
2025.08.21# Event

正社員にこだわらない、組織フェーズに応じたチーム設計【人事図書館登壇レポート】

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事業の成長とともに、組織に求められる人材やチーム構成は変化します。立ち上げ期を支えた体制が成長期にはボトルネックになることも珍しくありません。しかし新たに採用しようと思っても、労働人口の減少により優秀な人材の確保は年々困難になりつつあります。

こうした課題を解決するうえで重要なのが、「最適なタイミングで、最適なケイパビリティを呼び込む」組織戦略です。

今回は、組織の成長フェーズに応じたチームづくりと、正社員採用に頼らないハイスキル人材の活用法について解説した「人事図書館」のイベント内容をお届け。ソレクティブ共同創業者 兼 CEO・岩井エリカと、国内外の多数の組織支援を手がけ、『グローバル企業のための新日本型人材マネジメントのすすめ』の著者で TM HR Advisory & Coaching 合同会社 CEO/SAP Japan 株式会社 HXM Value Advisory Director の南知宏が語り合った実践的なアプローチを紹介します。

🗣 登壇者:岩井 エリカ(以下、エリカ)
株式会社ソレクティブ共同創業者兼 CEO。Imperial College London 工学部修士課程修了後、2010年に住友電気工業に新卒入社し新規技術の特許獲得等に貢献。その後渡米し UCLA Anderson School of Management で MBA を取得後、大手玩具メーカー Mattel, Inc. やメガベンチャー Riot Games, Inc. で HR ビジネスパートナーを務める。帰国後は Geometry Ogilvy 日本支部の人材マネジメント統括を経て、フリーランスの人事コンサルタントとして独立。2020年にウォン アレンとともに株式会社ソレクティブを設立。

🗣 登壇者:南 知宏(以下、南)
TM HR Advisory & Coaching 合同会社 CEO/SAP Japan 株式会社 HXM Value Advisory Director。
早稲田大学グローバル・ストラテジック・リーダーシップ研究会 招聘研究員。
大手鉄道会社、米国でのキャリアコーチ、日系化学メーカー、外資系医薬品メーカー、外資系コンサルティングファームを経て現職。日本と東南アジア各国での人事制度設計や人事機能強化、人材の現地化に向けた組織・後継者計画設計などに関する豊富な経験を有する。2024年8月30日『グローバル企業のための新日本型人材マネジメントのすすめ』上梓。2007年に Florida International University にて人事管理学修士号を取得。

まずやるべきは、事業の成長期ごとに適した組織設計

南:今回のテーマは「組織構造と人材ポートフォリオ」ですが、申し込み時のアンケートを拝見すると、多くの方が「人材」面に関心をお持ちのようです。

ただ、私は「組織」と「人」は切り分けて考えるべきだと思っています。「どんな組織を作りたいか」が明確になっていないと、「どんな人が必要か」は判断できないからです。

企業にコンサルタントとして入ると、戦略や市場については目標から逆算して何をすべきかを論理的に議論できるのに、組織の話になると途端に感覚的になる傾向があります。「今の人員がこうだからこんな体制に」と、現状を起点に組織を設計しようとするんです。

エリカ:特に組織が拡大するフェーズでは、現状の人員配置を前提にした改善では限界が見えてきますよね。実際、「上司が複数いて方針がぶれる」「報告ラインが曖昧」「部門間の連携が機能しない」などの課題があるという声も聞こえてきます。こうした問題は、人ではなく組織構造そのものに起因するケースが多いと感じます。

南:まさにそのとおりです。立ち上げ期は「組織や役割を意識せず何でもやる人」を集めがちですが、組織が急拡大したあともそうした仕組みのままだと、連携のズレや意思決定の遅れが起きやすくなります。

だからこそ、まずはフェーズごとに最適な組織という「箱」を設計し、必要な機能や役割を明確にする。そのうえで、誰をどこに配置するかを考えることが重要です。

南知宏が人事図書館でマイクを持ち、身振りを交えて語っている様子。背景に本棚とスクリーン

定期的な組織の見直しによって、事業成長が加速

エリカ:関係者やプロジェクトが増えると、属人化していた業務を機能や役割ごとに分解して再配置する必要があります。そのため、「組織は事業の成長に合わせて定期的に設計し直すもの」という視点が欠かせません。私自身、複数の企業であらゆるフェーズを経験してきましたが、やはり段階ごとに必要な組織とケイパビリティはまったく違うと実感しています。

南:フェーズごとのひずみを避けるには、意図的に組織を揺り動かし、次の成長に備える必要があります。これは新規事業の立ち上げも同じで、既存組織の延長線上では新たな価値が生まれにくい。本業と切り離した専任チームや、プロジェクト単位で動ける体制が必要です。

エリカ:以前勤めていたメガベンチャーの Riot Games では、事業の段階に応じて経営トップを入れ替えていましたね。攻めのフェーズでは事業推進に強い人、守りや再構築の局面ではコーポレートやファイナンス人材を配置するなど、フェーズごとに柔軟に組み替えていたんです。

南:ただし、どんなに優れた「箱」を設計しても、そこに入る人の力が伴わなければ機能しません。誰が入るかも同じくらい重要です。

エリカ:つまり、よい人をどう採ってくるか。そして、その人たちが気持ちよく、継続的に成長できる仕組みがあるか。そこもすごく大事なポイントですね。

岩井エリカが人事図書館でマイクを持ち、真剣な表情で発言している様子。背景に本棚

事業スピードを重視したフリーランス活用という人材戦略

南:ここまで組織という箱の話をしてきましたが、それを機能させるためには、当然「人材戦略」も必要です。特に今のように変化の早い時代には、自社で人を育てるだけではなく、外部からの刺激や知見を取り入れることが不可欠です。

ただ、その刺激を正社員採用というかたちで補おうとすると、「一度採用すると簡単には辞めさせられない」「固定費としての負担が大きい」などの懸念から、慎重になる企業が多い。

エリカ:そこで新たな選択肢として注目されているのが、フリーランスの活用です。

必要なタイミングで必要なスキルを投入できるうえ、「変動費」として扱えるため、結果的に正社員よりもコストを抑えられるケースが多い。生産年齢人口が減っている今、すべてのケイパビリティを正社員だけで揃えるのは、もはや現実的ではありません。

南:人材の獲得スピードも重要な課題ですよね。正社員として採用してから稼働まで数か月かかると、その間に事業の状況や求められるスキルが変わる可能性があります。

エリカ:その点、フリーランスの場合、早ければ3日で稼働を開始できます。

実際、企業のフリーランス活用は増加傾向にあり、Sollective にもコンサル、人事、IT など多様な分野で実績を積んだプロフェッショナルたちが在籍し、力を発揮しています。

南:こうしたスピード感と柔軟さが、今の組織運営においては非常に大事ですね。

エリカ:ただし、フリーランスなら誰でもいいわけではありません。そのため、Sollective では通過率10%以下の厳格な審査制を設け、一定の水準をクリアしたプロ人材だけを企業にご紹介しています。

岩井エリカと南知宏が人事図書館で登壇。スクリーンに『最高の組織の作り方』と表示され、真剣な表情で議論している様子

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フリーランス活用を成功させるカギは、期待値の明確化

南:フリーランス人材に力を発揮してもらうには、関わり方にも工夫が必要ですよね。今回のイベントでもいくつか質問をいただきました。まず、「フリーランスは流動性が高いため、広範な業務を任せたときに会社として知見が蓄積されづらいのでは」という懸念についてです。

エリカ:フリーランスに限らず、転職が一般的になってきていることから正社員でも中途退職されるケースは珍しくないでよね。重要なのは、属人化させない仕組みを持つことです。たとえば、業務のプロセスや手順をきちんとドキュメント化し、誰でもアクセスできるよう整える。その仕組みが組織としてのリスクヘッジにつながります。

南:また、「フリーランスは自分の役割や守備範囲を明確にしたがる人が多い印象がある」との声もあがりました。契約範囲に含みきれない細かなタスクが生じたときに、「そのボールは拾いたくない」と一線を引かれるケースがあったそうです。

エリカ:それは雇用形態の問題というより、世代やパーソナリティによるところが大きいと感じます。ただ、フリーランスの業務範囲は契約で決まるからこそ、最初の契約設計が重要です。時間、つまり業務の遂行やプロセをベースに業務を柔軟に依頼したい場合は準委任契約、成果物が明確なら請負契約というように、適した契約形態を選ぶことが大前提になります。

そして、期待値のギャップを防ぐには、​​採用の段階で業務範囲にどの程度の柔軟性が求められるか参画後の具体的なイメージをしっかりすり合わせ、業務開始後も対話を重ねることが大事です。そうした信頼関係の積み重ねによって、正社員への移行につながるケースもあります。

南:関係性を築くうえでは、その人が組織になじむかどうかを気にする企業も多いようです。「カルチャーフィットの見極め方や、受け入れ後の対応」に関する質問もありました。

エリカ:私は企業とフリーランスの面談に立ち会う際、「どんなカルチャーですか?」とあわせて、「どういう人が NG ですか?」もよく聞きます。理想の人物像はどの企業も似ていますが、NG なタイプを聞くと、その企業特有の価値観が見えてくるんです。

ただ、同じ業界や規模感の企業でも、内にいる人や文化はそれぞれ。「他社でうまくいったからうちでも」という横展開ではなかなかうまくいきません。大事なのは、自社にとって「どんな関わり方や人材配置が、どのフェーズで機能するのか」を見極め、試行錯誤しながら柔軟に最適解を探っていく姿勢だと思います。

岩井エリカと南知宏が人事図書館で登壇し、マイクを持って笑顔で対談している様子。背景に本棚とスクリーン

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