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【女性更年期×フリーランス】経験者が語る、治療と仕事両立の鍵
私はフリーランス3年目、43歳のときに「更年期障害」と診断されました。
フリーランスの働き方は日々のパフォーマンスが収入に直結しやすく、心身の状態が仕事に大きく影響します。診断を受けた当時は身近にロールモデルとなるフリーランス女性がおらず、「これから仕事はどうなるんだろう…」と不安が膨らむ一方でした。
その後働き方を見直し、フリーとして7年目を迎える今では、当時ほど将来への不安は感じなくなっています。更年期の知識不足かつ、ロールモデル不在で心細い思いをした経験から、ライフステージの変化に備えたい方へ、私の体調の変化や更年期との向き合い方をお伝えします。
👩TSUKASA(仮名)47歳/フリーランス歴7年/編集者
- 症状を初めて感じた年齢:40歳頃、受診したのは43歳
- 働き方:フルリモート。週に4日程度シェアオフィスを利用
不正出血を機に受診、更年期障害の診断は想定外
自分が更年期だとわかったのはコロナ禍でした。フリーランスの編集者として請け負っていた仕事の多くが止まって生活が一変した頃、不正出血があったのです。
心配になった私は、最寄りの婦人科を受診。超音波検査と子宮体がん検査に加え、医師から「年齢的にも、血液検査をした方がいい」と提案がありました。
その検査結果から、LH(ルポトロン)値 と FSH 値(卵胞刺激ホルモン)が基準値よりも高く、卵巣機能が低下していることが判明。ほかに大きな問題もなく、どうやらそれが出血を引き起こしたようでした。
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LHとFSHは卵巣を刺激して女性ホルモン(エストロゲン)を分泌させるホルモンです。エストロゲンが減少すると、脳が卵巣を刺激して LH 値と FSH 値が上昇するため、これが卵巣機能の低下を示す指標になる、と先生から説明がありました。
原因がわかってほっとしたと同時に、驚いたのを覚えています。コロナ禍でフリーランスとしての将来が見えないストレスによるものだと思っていたので、更年期は想定外だったのです。
実は当時、むくみや冷え、イライラ、集中力の低下などに慢性的に悩まされていました。2時間以上座り続けると足が冷えて痛みを感じ、仕事の手が止まったり、度々強い眠気に襲われて集中力が途切れたり。あきらかに30代には見られなかった症状についても相談したところ、更年期障害と診断され、ホルモン補充療法(HRT)を勧められました。
処方されたのは、女性ホルモンの一種であるエストロゲンを補う飲み薬、ホルモン補充による子宮内膜への負担を抑える飲み薬、そしてむくみに効果が期待できる漢方薬の3種類でした。
更年期とは
閉経の前後約5年ずつの10年くらいを指し、一般的には45~55歳頃が更年期にあたります。この頃に卵巣機能が低下し女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少することで、人によっては次のような症状が起こります。
🚩症状の例:疲れやすい、肩こり・腰痛・手足の痛みがある、汗をかきやすい、腰や手足が冷えやすい、怒りやすい・すぐにイライラする、寝つきが悪い、眠りが浅い、など
更年期障害について
更年期症状が生活に支障を来す場合を「更年期障害」と呼びます。主な治療法は、ホルモン補充療法(HRT)と漢方治療ですが、精神的な症状が強い場合は、抗うつ剤や睡眠剤などが処方されることもあります。
参照:「働く女性の健康応援サイト」一般財団法人女性労働協会(厚生労働省委託事業)
「更年期の知識を持っていれば…」診断後に後悔
婦人科では、自分の知識不足を痛感しました。
更年期には多様な症状があること、血液検査で指針となる数値が測定可能なこと、飲み薬だけでなく貼り薬や塗り薬による治療方法があることも、初めて耳にする情報ばかり。
集中力の低下や冷えを「加齢によるもの」とすっかり思い込み、数年放置していましたが、これらも更年期症状のひとつだと知っていれば…不調を感じた段階で治療に取り組み、仕事への影響も早めに抑えられたはず。
そんな後悔から診断後、更年期に関する情報収集に加え、すぐに次の3つに取り組みました。
【診断後すぐやったこと:更年期障害を友人・知人に公言】
ほかのフリーランス女性がどう更年期に向き合っているかを知りたくて、「更年期 × フリーランス」で検索。当時は会社員の方の体験談が中心で、参考となる人は見つけられませんでした。
そこで、機会をみつけては「実は更年期で…」と周囲に公言することに。すると、更年期に向き合っている人たちが意外にも身近にいたのです。
女性ホルモンの低下に伴う指の関節痛に悩み、キーボードを操作性の高いものに買い替えた30代後半のライター、住宅ローンの支払いに不安を抱えてフリーから会社員へ転身したデザイナーの同級生、リラクゼーション効果を求めてヨガを始めた取引先の50代前半の女性など。それぞれの症状に合わせた働き方の工夫を知って「自分だけじゃない」という気づきを得たことは、大きな励みにもなりました。
そのとき思ったのは、更年期は誰にでも訪れるのに、普段あまり話題に上らないということ。しかし公言すると、「私も」「知りたい」と多くの人が反応してくれます。情報交換は自分だけでなく、ときに相手の助けにもなるので、ぜひ話題にしてみてください。
【診断後すぐやったこと:家族に症状と基礎知識を説明】
仕事中に強い眠気を感じたときは、よく昼寝や散歩をしていました。自分なりの対処法でしたが、リモートワーク中の会社員の夫に「サボっている」「フリーランスはお気楽」だと思われるのが嫌で、心理的な抵抗を感じるように…。
「察してほしい」では夫に通用しないと考え、婦人科のホームページに載っていた更年期の基礎情報と検査結果を見せながら、自分の症状を説明しました。知ってもらうだけでも、気持ちが随分と楽になった気がします。
家族に理解を求める一方で、イライラをぶつけたり甘えすぎたり、「更年期だからしょうがない」を免罪符にしないよう気をつけています。
【診断後すぐやったこと:仕事の内容を見直す】
仕事が減っていた時期とはいえ、土日や深夜の稼働を当たり前としていました。しかし、集中力だけでなく年齢とともに体力も落ちるのに、こんな働き方では仕事自体を続けるのが難しくなると考え、週に2日はしっかり休もうと決意。
加えて、「体調の波があっても、収入を維持できる仕事のしかた」への転換を目指しました。まずは仕事内容を見直し、音源の文字起こしや確定申告など「必要だが自分でやらなくていいもの」は外注を検討。また、時間やスキルが足りずに断っていた規模の大きな仕事も受注できるよう、チーム体制を作ろうと考えました。取引先の許諾は当然必要ですが、信頼できるライターやデザイナーの友人に声をかけ、少しずつ共同作業の機会を増やしていったのです。
今では受けられる仕事の幅が広がり、不調なときは「助けてもらえる」という安心感やリスク管理につながっています。
👩更年期の症状と変化
(40歳頃から)
- 日中に強い眠気を感じる日が増加
- 足首と足先の冷えが強く、痛みまで感じるようになった
- 急にネガティブな思考や怒りの感情にとらわれ、引きずる日が多くなる
(更年期障害の診断を受けた、43歳頃)
- 不正出血があり、生理周期が乱れる
- 肩や首のこりが悪化。ドライアイの症状が加速し、視力も大きく低下
- 太もも周りを中心に汗をかくため、汗ジミが目立つ色のボトムを避けるようになった
- 集中力が続かないため作業能率が低下。やる気が出ず、「めんどくさい」と思う場面が増えた
(HRT 治療開始後に見られた大きな変化)
- 日中眠気を感じる日が減少
- ネガティブな感情を引きずらなくなった
- 少しの不調も放っておかずに、すぐに婦人科へ相談するようになった
💡関連記事:「フリーランスで働くキャリア上のメリット4:調査結果と成功者が語る新事実」
治療と仕事を両立させる鍵は「快適さ」の追求
更年期障害の治療を始めて4年。まだ終わりは見えませんが、試行錯誤を繰り返しながら、少しずつうまく付き合えるようになったと感じます。
フリーランスとして働きながら治療を続けるなかで、特にやってよかったことを紹介します。
【うまく付き合うためにやったこと:信頼できる医師や看護師に不安を相談】
現在は3か月に1度の定期受診で治療内容を見直し、必要に応じて超音波検査や血液検査、がん検査を受けています。
私が通う婦人科では診察とは別に、個室で看護師さんと1対1で話せる時間があります。乳がんや子宮がんを経験している身内が多く、ホルモン剤の副作用への不安が大きい私にとって、薬の効果や心身の状態をじっくり聞き取ったうえで治療法を提案してくれるこの方針を、とてもありがたく感じています。
治療には長いと10年以上かかるケースもあるため、フリーランスとしての働き方や悩みに寄り添ってくれる医師や看護師の存在は大きいです。私は「相談しやすさ」を重視して口コミサイトで探し、初めて受診した婦人科の対応に安心できたので、そのまま通い続けています。信頼できる病院にすぐに出会えるとは限らないため、不調を感じたら早めに病院探しを始めるのをおすすめします。
【うまく付き合うためにやったこと:シェアオフィスを契約】
コロナ禍以降、仕事の多くがオンラインで完結するように。便利な反面、毎日自宅で働いていると気分の切り替えが難しく、身なりにも気を使わなくなる日が増え…やがてその状況がストレスとなりました。
労働環境は作業効率に大きく影響します。「もったいないのでは」と躊躇しましたが、思い切ってシェアオフィスを契約。全国に拠点があるところを選んだので、その日の予定や気分に合わせて働く場所を柔軟に変えられます。移動が、軽い運動やストレス解消にもなっていると感じます。
もちろん、自宅の方が集中できるフリーランスの方もいるでしょう。その場合も、多少コストがかかっても設備投資を行うなど、快適な仕事環境を追求したほうがよいと思います。
【うまく付き合うためにやったこと:遊びの予定を優先】
フリーランス3年目くらいまでは、プライベートの予定をなかなか優先できませんでした。突発的な依頼や仕事への対応に備え、休日にも余裕を持たせたかったからです。
今は逆で、遊びの予定を真っ先に入れます。仕事を優先し続けると、遊びに必要な体力や気力が残らないことに気づいたのです。悲しいかな、更年期と加齢の影響で「まったく不調を感じない日」はそう多くありません。特に体力を使うライブや旅行は、仕事の予定が決まる前に積極的にスケジュールに組み込んでいます。
仕事に費やす時間は減りましたが、その分、適正な仕事量や内容を見極められるようになりました。更年期判明後すぐに進めた、外注化やチーム化も支えになっています。
体力づくりは、来るべき更年期への投資
一方で、更年期に向けてもっと早い時期から「やっておけばよかった」と後悔していることもあります。
【やっておけばよかったこと:時差のある国への旅行】
旅行は趣味のひとつですが、最近はもっぱら国内や近場の海外が中心に。仕事をやりくりしてでも「もっと遠方の海外へ、長期間行けばよかった」と思っています。
時差や気候の変化が大きい地域への旅は、不眠や倦怠感など更年期の症状が悪化する場合があり、帰国後に体調を整える時間も必要です。実際、一昨年にヨーロッパ方面を旅しましたが、睡眠の乱れや体力の回復に一週間近くを要し、仕事に遅れがでてしまいました。
行き先や時期の選択には慎重にならざるを得ませんが、日程を工夫すれば帰国後のスケジュールに余裕が持てます。たとえば、多くの取引先も休む年末年始なら、進行中の案件に気を取られることもないので、更年期だからといって諦めず、今後もチャレンジしたいです。
海外でのワーケーションやノマドワークに興味がある方も、「やりたい」と思ったタイミングでどんどん挑戦してください!
【やっておけばよかったこと:運動の習慣化】
遊びも仕事も、体力の必要性を年々実感しています。更年期を迎え、もっとも後悔しているのは、運動をほとんどしてこなかったことです。
もともと運動が苦手なため、継続しやすい環境を作ろうとジムに入会しましたが、「いつでも行ける」というフリーランスの自由さが仇となり挫折。さらに、更年期特有の「やる気が出ない」症状も加わり、習慣化が難しくなってしまいました。
それでも最近は、階段を利用して歩数を増やすなど意識して体を動かしているので、足のむくむ日が減ってきました。適度な運動は更年期症状を緩和し、ひいては仕事のパフォーマンスの維持にも期待できるので、運動が苦手な人ほど早めに取り組み、習慣化を目指した方がよいと思います。
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おわりに
更年期障害を抱えると、それまでと同じペースで働くのは確かに難しくなります。
つい、できないことに目がいきがちですが、私は「今後の人生をどう生きるか」を真剣に考えるきっかけになったので、その点はよかったと感じています。
仕事の内容も量も、一緒に働く相手も、選択できるのがフリーランスの利点。変わりゆく心身の調子に合わせて、自分なりの働き方を見つけられたらと思います。そして、更年期障害に1人で悩むフリーランス女性が減るよう、今後も自身の経験を発信する機会を作っていきたいです。
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Writer / Tsukasa
Editor / Yuna Park
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