【フリーランスの時間管理術】案件数は月15件!独立15年の女性ライターに聞く秘訣
働く時間や場所が自由だからこそ、フリーランスを長く安定して続けるには工夫が必要です。では実際に長く活躍するフリーランスは、普段どのような1日を過ごしているのでしょうか。
仕事が途切れないフリーランスの日々の仕事の進め方から、そのヒントを探る本シリーズ。初回の本記事に登場するのは、2008年からフリーランスのエディター・ライターとして月に15件もの案件を抱える、吉野ユリ子さんです。
「自分の言葉を通して、変わりたいと願う女性たちの後押しをしたい」と語る吉野さん。執筆の時間を確保しつつ、小学生の子どもとの時間や趣味の時間も大切にするその時間管理術を探ります。
🎙吉野ユリ子(ライフスタイルジャーナリスト/エディター/ライター)
大学卒業後、企画制作会社、アシェット婦人画報社(現ハースト・デジタル・ジャパン)などを経て2008年よりフリー。エディター、ライターとして女性誌を中心に、豊かな生き方・暮らし方の提案を行うほか、ブランディングライターとして企業のサービスや商品の価値を言語化し届けることにも力を注ぐ。個人サービスとして note にてパーソナルインタビュー&ライティングサービス「A PIECE OF LIFE」主宰。また講演、キャスティング、コンサルティングなども行う。プライベートでは、2016年に出産するまではトライアスロンが趣味で、アイアンマンを3度完走。現在の日課は瞑想、朗読、物件探し。
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吉野さんのある1日
1. 各タスクの時間を見積もり、スケジュールを確保
現在「ライフスタイルジャーナリスト」という肩書きで働く吉野さんの仕事は多岐にわたります。女性誌や出版社の Web メディアを中心に、企業や大学の広報・PR、ブランディングにまつわる執筆と編集業務に加え、企業の販促イベントの企画やキャスティングも手がけます。
「全部がやりたい仕事で幸せ」と話す吉野さんが、現在抱えているタスクは大小含め43個。「やること」が発生するたびにスプレッドシートにタスクを書き出し、毎週日曜日に Google カレンダーへ書き込んでいくそうです。
吉野さんがタスクを管理するスプレッドシート
その際、「このインタビュー記事は執筆に3時間」「打ち合わせは移動含めて2時間」など、かかる時間を予測してカレンダーを埋めていきます。そして業務の内容ごとに色分けし、1週間の埋まり具合を確認、調整します。毎週の繰り返しと振り返りによって、必要な時間を見積もる精度が上がるため、仕事を受けすぎて焦ったり、残業で休日が削られたりする状況を極力避けられるといいます。
ポイントは、週の終わりの金曜日に余白を作ること。そうすれば、万が一あふれてしまったタスクをこなし、急な依頼にも対応できるようになります。もし空き時間ができたら、リサーチや読書など「未来の仕事」に向けた種まきをするそうです。
2. 多くの仕事をこなすコツは、徹底した「線引き」
吉野さんのように多くの仕事をこなすには、一見、複数のタスクを並行して進める方法が効率的だと感じるかもしれません。しかし、吉野さんは「私はマルチタスクでは原稿に集中できない」と断言します。
「たとえばインタビュー記事の場合、話し手から預かった言葉を、届けたい人に合わせて紡いでいくには、いわば『イタコ』のようにその世界に入り込まないと書けなくて」
吉野さんがそこまで執筆に情熱を注ぐ原点にあるのは、化粧品メーカーの PR 誌を作っていた企画制作会社時代の経験です。
「化粧を楽しめない敏感肌の女の子や、素顔に自信をなくしたご婦人。私の文章をきっかけに化粧品を手に取り、彼女たちの人生がわずかでも前向きに変化するのなら、こんなにうれしいことはありません。その気持ちが今も『書く仕事』の原動力となっています」
インタビューの仕事をする吉野さん
そんな思いを込めた原稿の執筆には、かなりの集中力を要します。そのため「この3時間は執筆に専念する」と決めたら、時間内はほかの作業に手をつけず、メールやビジネスチャットの通知にも極力反応しません。
同じ理由で、「仕事はシェアオフィスで」と決めているそうです。自宅で仕事をすると、つい合間に家事をしたり、子どもとのコミュニケーションで中断したりして、結局すべてが中途半端になりがちだからです。帰宅後を仕事時間の計画に入れない、完全にはできなくてもそう「決める」ことが大事だといいます。
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3. 取引先とのコミュニケーションは簡潔、迅速に
1日のなかで、メールやビジネスチャットに費やす時間は思いのほか多いものです。そのため吉野さんは、まずメールやメッセージを確認するタイミングを朝イチ、昼食後、仕事が一区切りついたときなどに設定。その際、目を通した順に一旦処理していくのが「時間を取られないコツ」だといいます。
たとえば取材案件の依頼メールが届いた場合、まずはスケジュールを確認し、受けられるかどうかを即座に判断。希望日程など、先方が必要とする情報を先回りして伝えつつ、「資料はのちほど確認します」といった一言を添えて返信します。そして、スプレッドシートに 「資料確認」のタスクを追加するそうです。
「その場でじっくり資料を確認しようとして返信に時間をかけたり、調べればわかることを気軽に尋ねてメールのやり取りを増やしたりすると、メールチェックが長引き、予定していた仕事の時間も圧迫してしまう。結果として、大切な執筆時間にまで影響が出かねません」
また、プライベートの時間を確保したい人は、仕事とプライベートの境界線を周りに伝えた方がいい、と吉野さんは提言します。実際に、吉野さんはメールの署名欄にビジネスアワーを入れたり、夜間におよぶ可能性が高そうな案件の依頼は受ける前に「基本的に18時以降は仕事ができませんが問題ないでしょうか」とはっきり聞いたりしているそうです。
このような工夫は、結果的に取引先との良好な関係につながっています。これこそまさに、吉野さんへの依頼が途絶えない理由の1つでしょう。
長く続けたいからこそ、「自己犠牲」はやめる
仕事と生活の場を分ける、18時以降は作業時間の計画に入れない…「できるだけ」と前置きはあるものの、吉野さんの毎日はストイックとも言える「決めごと」で成り立っています。すべては、大好きな書く仕事に多くの時間を注ぐため、そしてライターの仕事を長く続けていくためです。
「20代や30代の頃には、何日も徹夜するような『仕事のがんばりどき』もあると思うんです。私も出版社で編集者として働いていたときはそんな時期があり、結果的には体調を崩してしまいました。いくら仕事が好きで楽しくても、年齢を重ねるごとに自分を大切にしていかないと、長くは続けられません」
ライフステージやからだの変化にきちんと向きあってきたからこそ、50代に入り、さらにその思いが強くなった吉野さん。食事は朝晩自炊、睡眠時間はしっかり確保、オフタイムは趣味のヨガや朗読教室へと、心身ともに健康な状態で働くためのセルフケアも欠かしません。「今では驚くほどヘルシーな生活を送っています」と話すその姿からは、仕事だけでなく、人生の優先順位が明らかなことが伝わってきます。
趣味の朗読発表会の様子
「仕事でも家庭でも、時間に追われて余裕のない状態でがんばりすぎると、自分がつぶれてしまいます。そうすると仕事のクオリティにも影響して、評価も下がってしまう。自分を犠牲にしないよう心がけること、それがいちばん大事な気がします」
最後に、吉野さんは女性フリーランスとして心がけていることも加えます。
「フリーランスで長く働き続ける女性は、まだまだマイノリティだと感じています。がんばっている女性を紹介し合ったり SNS で応援したり。そうやって支え合い、高め合うことで、私たち女性フリーランスが長く活躍できる場も広がっていくと信じています」。
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Writer / Shinobu Takayama
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Editor / Yuna Park
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