アメリカの職場文化の今を表すトレンドキーワード3選
コロナ禍や景気後退などここ数年の状況によって、アメリカでは仕事に対する考え方が大きく変わりました。それにともない、職場における人々の行動も変化しています。
そこで今回は3つのキーワードを通して、アメリカの職場文化のトレンドとその背景をご紹介。そこから日本でも生かせるポイントを考えていきましょう。
Hey hanging(「Hey」だけのメッセージを送ること)
Hey hanging とは、チャットメッセージで「Hey」(やあ)のみを送ることです。一見問題がないように感じるかもれませんが、誰が送信したかによってはストレスとなる可能性があります。
たとえば、上司やよく知らない同僚から突然「Hey」のみが来たらどうでしょう?わざわざ「要件は何ですか?」と返す手間がかかるのはもちろん、それに対する返事がすぐにないと「もしや悪いニュース?」などの想像が広がってしまい、仕事に集中できなくなるかもしれません。
リモートおよびハイブリッドワークから生まれた現代ならではの課題
Hey hanging は、アメリカの Huffington Post の記事で提案されたワードです。その背景には、SNS 上に数多く投稿された「Hey のみ送られると混乱する」という声がありました。
リモートやハイブリッドワークが普及する前は「同期的なコミュニケーション」、つまり全員が同じ場所やタイミングでやり取りするのが当たり前でした。しかし働く時間や場所が多様化している今、コミュニケーションは「非同期型」、つまり各自が都合のよいタイミングで確認し返信する方法へと変化しています。そのため、要件のないメッセージを見て困惑する人が増えているのでしょう。
また記事のなかで専門家は、「Hey hanging が起こる主な要因は、チャットツールを対面でのコミュニケーションと同じように扱っているから」と指摘しています。チャットツールに限らず、新たなツールを使う際はその特性や導入の背景を理解したうえで効果的なコミュニケーション方法を考えることが大切です。
Bare minimum Monday(月曜日は最低限で)
Bare minimum Monday は Sunday scaries(日曜日の憂鬱、日本でいう「サザエさん症候群」)の対処方法としてトレンドワードになりました。具体的な取り入れ方としては、月曜日に行うタスクを最小限に抑えたり、在宅勤務の場合はセルフケアに時間を割くなどが挙げられます。個人レベルで実践するだけでなく、マネージャーがチームとともに取り入れるケースもあるようです。
TikTok 発祥のトレンド。しかし実践には賛否両論
Bare minimum Monday が広まったきっかけはフリーランスの TikTok クリエイター Marisa Jo さんの投稿です。反応は賛否両論で、Bare minimum Monday を称賛するユーザーもいる反面、制度としては取り入れなくてもよいという声もあります。
さまざまな意見があるなか、トレンドの火つけ役となった Jo さんは「Bare minimum Monday を取り入れた今は、前よりも生産性が高く、全体的に幸せです」と主張しています。
日曜日の憂鬱は以前からある現象でしたが、コロナ禍を経てメンタルヘルスに重点が置かれるようになってから解決すべきものとして注目されるようになりました。月曜日の気分を軽くしたい人は、まず自分1人でできる範囲のことから始めてみてはどうでしょうか。
Quiet thriving(ちょっとしたモチベーションアップ)
Quiet thrivingは、働いているうえで自分が達成感を感じられるような小さな取り組みを行うことです。その方法はさまざまですが、たとえば次のようなものがあります。 ・上司と相談して自分の強みや興味を考慮して業務に優先順位をつける ・同僚との仲を深める ・職場の長所を常にメモする ・適度に休憩を取る
ストレスを抱えながらも退職しづらい経済状況が背景に
Quiet thriving は心理療法士の Lesley Alderman さんが Washington Post で提唱したワードです。Alderman さんは自らが提供するカウンセリングのセッションで、多くの人が人間関係や燃え尽き症候群など、仕事関連の悩みを抱える現実を見てきました。
しかしアメリカでは不安定な経済状況が続いており、そうしたストレスを抱えつつも退職しづらいという人が増えています。Quiet thriving は、「辞められないのなら、今いる場所を少しでもよくしよう」という発想の転換が生んだトレンドだと言えるでしょう。
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トレンドワードが組織の現状やニーズをつかむ手がかりに
今回取り上げたキーワードが表す職場文化のトレンドは、実はアメリカに限った話ではありません。日本で働く皆さんにも、「おつかれさまです」とだけ書かれたメッセージが届いた経験はないでしょうか?また、チャットメッセージなのにメールのようなあいさつ文が長々と書かれているとうんざりするという人もいるでしょう。
これらはいずれも Hey hanging と同じように、全員が新たな働き方やコミュニケーション方法の変化にうまく適応できていない現状を映し出しています。また、「Bare minimum Monday」と「Quiet thriving」から見えるのは、従業員自身がメンタルヘルスを優先する姿勢です。
皆さんの会社でも、従業員の間で流行っている言葉はないでしょうか?組織の現状やニーズをつかんで改善につなげたいのなら、そうしたトレンドワードがよい手がかりになるかもしれません。
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