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フリーランスの戦略コンサルタントが語る、独立人材ならではの提供価値
M&A の是非判断や海外進出、新規事業の立ち上げなど、企業の将来を左右する重大な意思決定を支援する、戦略コンサルタント。コンサルティングファームに属するコンサルタントがその役割を担うと考えられがちですが、必ずしもそうとは限りません。
今回登場する Sollective 認定プロの住野恭規さんは、コンサルティングファーム2社の戦略部門での経験を生かし、フリーランスとして独立後も多くの企業の成長を支えています。
なぜ、大手ファームの正社員からフリーランスという生き方を選んだのか。転身の理由、そして独立したからこそ発揮できる価値について聞きました。
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ファームでは難しい、型にはまらない柔軟な伴走型コンサルティングへ
――大手コンサルティングファームを退職してフリーランスに転身した理由を教えてください。
ファーム時代は戦略を描いてもその後の立ち上げや実行フェーズには関与しづらいことが多く、物足りなさを感じるようになりました。そこで、戦略から実行まで一貫して関われる中小企業の支援に力を注ぎたいと思うようになったんです。
そこで、まずは経営者の「気軽な相談相手」を目指そうと。従来のようにいわゆる「型」にはまった成果物を出すだけでなく、柔軟に関わりながら経験の幅を広げたいと考えました。
実際、独立して半年弱ですが、ファームでは関われなかった範囲まで積極的に関われています。その1つが外資系スニーカーブランドの日本展開で、EC 店舗立ち上げや物流ベンダーの選定など、戦略コンサルタントの枠を超えた実務にも取り組みました。さらに、日本を除くアジア諸国向け食品流通プラットフォームへの出資案件では、過去の経験を生かしながら現地に消費財などを届ける新しい仕組みづくりにも携わっています。
――独立にあたって、不安はありませんでしたか?
フリーランスの戦略コンサルタントが身近にいなかったため、どうやって案件を獲得するのか、そもそも仕事があるのか、イメージできていなかったのが正直なところです。なので不安がまったくなかったわけではありませんが、もしやっていけなかったら再就職すればいいかな、と。
でも実際に独立してみると、想像以上にフリーランスの戦略コンサルタントの需要があって驚きました。今はプラットフォームに加え知人経由の引き合いもあり、自分がやりたい仕事を選べています。
――フリーランスになって一番の変化は何でしょうか?
やはり、自分で案件を選べるようになったことですね。ファームにいた頃は、アサインされた案件に取り組むのが基本でしたから。それもあって、以前は「ネットワークを広げる」という意識をあまり持っていませんでした。
独立後は、自分がやりたい領域で案件を得るために、海外の商工会議所主催のイベントで日本市場への参入を検討している企業を探したり、自分と近いテーマに取り組む人と情報交換したり。ネットワーキングの重要性を強く意識するようになりました。
背景には、過去にご一緒した投資ファンドの経営者の影響もあります。人脈を活かして事業を大きく動かす姿を目の当たりにし、人とのつながりが中小企業や新規参入を支援するうえでも、大きな力になると考えています。

迅速な対応と大胆な提案。フリーランスだからできる価値提供
――仕事の進め方の面ではどうでしょうか?
時間の使い方が変わり、気持ちに余裕が生まれましたね。ファーム時代は社内でもクライアントに対しても「長時間対応してこそ評価される」という雰囲気が少なからずあり、すべての案件に時間をかけがちでした。
それが今は、どの案件にどのくらいの時間を割くか自分で決められるため、次につながる重要案件に優先的に時間を使えるようになりました。クライアントから「住野さんの稼働状況を考慮して、どこまで対応可能ですか?」と相談されるケースもありますが、これもファームの一員として働いていた時代なら考えられなかったこと。今は自分の裁量で仕事を進められる状態に満足しています。
――フリーランスのコンサルタントだからこそ提供できている価値はありますか?
スピード感や柔軟性でしょうか。ファーム時代は案件の相談があっても、見積もり準備などの社内調整に時間がかかり、着手までどうしても間が空いていました。フリーランスになってからは形式的な手続きを経ずに動けるので、クライアントから「まずはちょっと相談してみよう」という感じで気軽に声をかけてもらえます。
さらに、大胆な提案もできるようになりましたね。以前は動かしている金額が大きく、会社の看板を背負っている緊張感が常にあり、会社の立場やリスクを意識して発言が慎重になりがちでした。思い切った提案や率直な意見を伝えられるのも、フリーランスのコンサルタントの強みだと思います。
――そうした提案の場面で特に意識していることは何でしょうか?
より細やかにニーズを汲み取ることを強く意識するようになりました。たとえば案件のスコープを話し合う場面で、クライアントが気にしている箇所があれば必ず掘り下げて尋ねます。すると「実は社内独自の事情があって…」と背景を共有してくれるんです。その事情を提案に反映させることで、「理解してもらえている」という信頼にもつながります。
そのためには、クライアントのなかで気軽に話せる人を見極めることも大事だと考えています。ニーズを汲み取った提案を重ねて「この人と話す時間には意味がある」と認識してもらう。すると事業戦略など担当範囲外の情報も共有してもらえるので、より広い視点からの提案も可能になります。こうして丁寧に探って得られた情報があることで、課題に踏みこんだ提案や、企業にはない発想を示せるのだと思います。

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早い段階で成果を示すことが、安心と信頼を生む
――企業のなかには、フリーランスのコンサルタントに懐疑的な人もいるかもしれません。重要な案件を任せてもらうには何が大切だと思いますか。
プロジェクトの初期段階から成果を示すことです。たとえば最初のミーティングでワークプランを提示して全体像を共有し、その後「1週目でここまで整理しました」と具体的な結果を伝える。そうすると、クライアントは進捗が実感でき、不安なく任せてもらえるようになります。
逆に成果が見えないと、「ここは大丈夫ですか?」と何度も確認され、プロジェクトがスムーズに進まなくなってしまう。ファーム時代はチームでフォローし合えるのでリカバリーの余地がありましたが、フリーランスは1人なのでそうはいきません。そのため、初めから安心してもらえる状況をつくることが何より重要だと思います。
――今後の展望を教えてください。
まずはコンサルタントとして、中小企業支援をさらに広げたいです。今後は食品や飲食を切り口に、観光客向けの集客拡大につながるコンサル案件にも取り組みたいですね。
その延長で、自身でも日本酒をテーマにした事業を立ち上げたいと考えています。具体的には、インバウンド向けの日本酒の酒蔵ツアー企画など。すでに日本酒のテイスティングイベントに参加したり、酒蔵の方に声をかけたりと動き始めています。
私は16歳から25歳まで海外で過ごしたのですが、そのときに飲んだ日本酒が正直美味しいと感じられなかったんです。でも日本には驚くほど美味しい日本酒があり、しかも価格設定もワインに比べて安い。そのギャップが非常にもったいないなと。日本酒の価値を国内外で高められるようなビジネスに挑戦したいですね。
――これから独立を考えている人へ、メッセージをお願いします。
キャリアを考えると、組織にいた方が安心だと感じる人も多いと思います。けれど、私はフリーランスになってから見える世界が一気に広がり、自分の強みや本当にやりたいことを再発見できました。
フリーランスになったからといって、その働き方をずっと続けなければいけないわけではありません。合わなければ会社員に戻ってもいいんです。成長したい、もっと羽ばたきたいと思う人は、一度飛び出してみてもいいのではないでしょうか。
――本日はありがとうございました!
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Writer / Shinobu Takayama
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Editor / Yuna Park
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