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唯一無二の価値を突き詰めるフリーランスデザイナー【インタビュー】

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「フリーランス」といえば、最もイメージしやすいのはクリエイティブ系の仕事ではないでしょうか。

特にデザイナーとして活躍するフリーランスは多い一方で、他者との差別化や今後の方向性に悩んでいる人もいるかもしれません。

今回登場するのは、インテリアなど形あるプロダクトのデザインから、デジタルプロダクトデザイン、デザイン組織のコンサルティングへと領域を広げている関口太一さん。組織を作れるデザイナーという独自の強みを持つ関口さんですが、独立当初は苦労の日々があったそうです。

もがきながらも、自分が価値を発揮できる場所をどのように見つけていったのか。その道のりを聞きました。

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仕事を取れない時期を越え、フレームワークと出会う

ー 関口さんは美術大学在学中からデザインの仕事を始めていたんですね。大学卒業後フリーランスになるまでの経緯を教えてください。

大学時代は友人と制作会社を立ち上げて活動していました。僕たちが作るものをおもしろがってくれる大手企業があり、新規事業の販促物を一式請け負ってポスターや展示会のブースなどのデザインをしていたんです。

一方で、専攻していたインテリアデザインの分野でも個人として仕事を得て、フリーランスの道も探っていました。

大学卒業後その制作会社は映像案件に主軸を移し、専攻を活かしたかった僕は会社を友人に任せて完全にフリーランスに。企業に就職したい気持ちはないし、学生ながら個人で仕事ができていたので、どこまで通用するかチャレンジしてみたかったんですね。

ー 在学中からフリーランスを視野に入れて着々と準備していたわけですね。

いえ、思い返せば世間知らずでした。準備といっても万全ではなく、いざやってみると壁にぶつかり…。

ー どんな壁ですか?

「仕事を取る」ってことを全然考えられていなかったんです。

ついこの間まで学生だった僕に仕事をくれるような人脈も信頼もありません。学生時代から企業との「付き合い」はあれど、そこからずっと仕事がもらえると僕が勝手に期待していただけ。

需要があるから仕事が来る、その当たり前の事実から目をそらしていたんですよね。結果、生活費すら稼げない時期もありました。

学生時代、制作会社の仕事現場にて

学生時代、制作会社の仕事現場にて

ー そこから、どのように仕事を広げていったんでしょうか?

初めは専攻の空間デザインの仕事をしていたのですが、それだけでは食べていけずウェブデザインの仕事も受けていました。

ここで縁ができた企業から、あるプロジェクトに加わるチャンスが舞い込んだんです。新規事業でデジタルプロダクトを作るから、デザイン組織の一員として働いてみないかと。

引き受けてはみたものの、デジタルプロダクトに関わるのも、フリーランスデザイナー同士で机を並べてチームで仕事をするのも初めて。実務のなかで必死に勉強してアウトプットを繰り返しました。

ー この時期に得た経験で今につながっているのは何ですか?

フレームワークを利用して情報や課題を整理する」手法を学べたことですね。

たまたまコンサルタントと仕事をする機会が続いて、課題の分析にはこれ、アイデアの深掘りにはこれ、という具合に、各フレームワークを実践でどう使いこなすかを教わりました。

ちょうどこの2016年頃は、世の中全体でデジタルプロダクトの新規事業案件が増えていた時期。ニーズが高まっているデジタルプロダクトを組織で生み出すなかで、「この仕事、自分に合ってるかも」と感じていました。この感覚が、僕のキャリアを今の状態へと動かし始めていたのだと思います。

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「自分じゃなくても進むプロセス」を作れるのは自分しかいない

ー 現在、関口さんはプロダクトデザインだけでなく、デザイン組織のコンサルティングも手掛けています。どんなきっかけで組織作りへと仕事が広がったのでしょうか。

組織に働きかける仕事の始まりは、デザイン組織のマネジメントでした。それまでのプロダクトの実績を見て、あるデザイン会社が声をかけてくれたんです。

この仕事では、デザイナーたちのチーム編成を決め、評価基準を作って面談をし、育成プログラムも考えました。そこから現在の「外部から組織に伴走する仕事」にも発展しています。

ー デザイナーの仕事内容とは大きく違うように思いますが、戸惑いはありませんでしたか?

プロダクトデザインと組織作りとの一番の違いは、アウトプットにはっきりした形がないことです。

最初に「成果物」としてアウトプットしたのはメンバーの評価シートでしたが、「これでお金もらっていいのかな」と心配になりましたね(笑)。

ー そこから今に至るまで、どんなふうに自信を積み上げてきたのでしょうか?

取引先の要望に1つひとつ応えていくのみですね。契約が延長されたら、それが答えだと受け取っています。ちゃんとやれていたんだな、と。

あとは、これは自分にしか出せないと言える価値を見つけて、そこに注力しています。

ー たとえばどんなことですか?

大きく2つあって、1つはフレームワークを駆使して、メンバーが質の高いプロダクトを生み出せるしくみを作ることです。

フレームワークが身についていたのもあり、やってみると僕は「誰かの判断に依存しなくても進むプロセス作り」が得意なんだと気がつきました

もう1つは、チームとして機能しつつもデザイナーがそれぞれの個性を発揮できるしくみに仕立てること。

デザイナーって独特な職業で、組織の一員として協調性も持ちつつ、アウトプットには各自の個性を発揮しないといけません。

このバランスを考えられるのは、僕自身がデザイナーの仕事を深く理解しているから。メンバーが僕を信頼して質問や相談をくれたりすると、うれしいし自信になりますね。

今後は、僕が離れたあとも組織が自走して成果を出せるしくみ、体制、ひいては文化を作りたいです。いつか、僕が卒業した組織のうわさを聞く日が来たらいいですね。「あのチームはいい仕事する」、なんて。

2018年頃、スタートアップとのプロジェクトで

2018年頃、スタートアップとのプロジェクトで

軸を定めて突き詰めていれば、自然と差別化されていく

ー これからの方向性に悩んでいる若いデザイナーへアドバイスをお願いします。

市場や世の中のニーズを見すぎずに、自分がやりたいことから軸を定めて、何ができるか考えてみるのはどうでしょうか。

僕の場合、フレームワークを使うようになったのは「この先ニーズがある」とか「デザイナーで使える人が少ない」と周りを見たからではなく、僕自身がおもしろい、もっと使いたいと思ったから。

差別化を意識しすぎて「変なことやる人」になっちゃったり、尖らせようと強みを狭めすぎたりすると、深掘りに限界が来て自分の価値を高められません。

どんな方向にしろ、やりたい軸を「ちゃんと突き詰めている人」になればニーズはあとからついてきて、自然と差別化されていくと思いますよ。

ー 本日はありがとうございました!

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