Miro のマーケティング責任者が語る、成功するチーム作りと社外協業の秘訣
アイデアから成果までのプロセスを加速するイノベーションワークスペースの Miro は、2021年の日本進出以降、富士通やニコンなど、数々の企業に導入されてきました。そんな急成長を遂げる同社では、どんなチーム作りが行われ、どのように外部エキスパートと協業しているのでしょうか。Miro でマーケティングディレクターを務める溝口宗太郎さんに、チーム作りで大事にしていることや、リーダーとしての信念、さらには社外コラボレーションのコツを聞きました。
成功するチームには、利他の精神と顧客中心の判断基準が必要
― まずは溝口さんのお仕事内容を教えてください。
私は Miro のマーケティング組織のなかでも、Revenue Marketing Team の日本担当責任者をしています。シンプルに言うと、営業チームとタッグを組んで案件を創出するチームです。
またそれとは別に、日本市場向けの PR 活動も現場での当事者として支援しています。厳密に言えば私のチームの業務範囲ではないのですが、Miro にはまだ日本専任の PR 担当がいないんです。でも会社としての効果を考えると、誰かがやった方がいいですよね。それに自分の枠のなかだけで仕事をしていたら成長はできませんから。
― PR のお仕事は自発的にされているということでしょうか?
そのとおりです。私はお願いされたことに対して、基本的にできるだけ NO とは言わないようにしています。それでときどきリソースがひっ迫する事態にもなるのですが、できる限りはお手伝いしてあげたい。そうして他者の成功に貢献する姿勢は周りからの信頼につながりますし、みんなに価値を提供できているという実感が自分のやりがいにもなっています。
先日2日間で3つのイベントを行ったのですが、企画から運営、コンテンツにも関わり、当日は MC まで担当しました。準備期間中はさすがに倒れるかと思ったのですが、終了後は多くの人が感謝しにきてくれて、イベントの NPS(ネット・プロモーター・スコア)もすごく高かったんです。そのとき、みんなのための価値を作り出すことができて本当によかったと思いました。
― その考え方は、溝口さんのチーム作りにも反映されていそうですね。
スタートアップでは自分の枠をどんどん越えて、会社全体の成功のためにすべきことは何かを常に意識したほうがいいと思っています。つまり自分自身の、自分のチームの目標を達成することはもちろん、周りの人をどうやって助けられるか、幸せにできるかという利他の精神を常に持ち続けることが大事なんですね。
マーケティングの仕事は、価値を作り出すことです。それは誰にとっての価値かというと、サービスを買ってくれるお客さまだったり、それを売りにいく社内のメンバーです。だからマーケターにとって、「その人たちに何を提供したら喜んでくれるか」を考えて自発的に周りの人たちと協業していくマインドは欠かせません。私はこれまで、「自分の利益を最優先に考える」利己のマインドを持つ人たちが集まった組織が崩壊していくさまを何度か見てきました。なので、メンバーに対しても、自分が持っている知識や、得られたインサイトは、周りの人に進んで教えてあげなさいと言っています。
あとチーム作りで大事にしているのは、外資系企業として「自分たちがしていることが、日本のお客さまの価値につながるかどうか」を常に頭に入れることですね。本社から下りてくる方針や施策をそのまま実施しているだけでは、評価はされやすいかもしれませんが、必ずしも日本のお客さまのためにならないこともあるんです。顧客を中心とした判断基準を持つことが、結果的に成功には重要だと思っています。
画面上は、溝口さんが手がけたイベントでの集合写真
― 溝口さん自身が、リーダーとして心がけていることを教えてください。
3つあって、1つ目はリーダーの権威です。権威とは権力とは違い、役職に関係なく、考え方やふるまいによって周囲から認められる価値の力です。正しい思う価値観のもとに、周りの模範となるようなふるまいをすることで、たとえマーケティング ディレクターの肩書きがなくてもついていこうと思ってもらえるようになろうと心がけています。
2つ目は、チームの向き(アラインメント)を揃えること。チームとして成功するには、目標やその達成のためにすべきことに関する共通認識の形成が欠かせません。だからチームミーティングでは、くどいぐらいに何度も同じことを言うようにしています。
3つ目は、自分が細部まで指示をするのではなくまずはメンバーにやらせてみて、求められたときだけアドバイスをする姿勢です。そうさせてあげないと、仕事に対するやりがいは生まれないと思うんですね。失敗するか成功するかは蓋を開けてみるまでわかりませんが、やれる限りのことを全力でやってみた結果なら私はいいと思うんです。マーケティングに百発百中はありませんから。むしろ失敗からしっかり学び、そのインサイトをチームに共有することが、チームの成功につながるのではないでしょうか。
私は、「役職が高い人ほどハードワークをするべき」だと思っています。役の分、大きな価値を作り出さなくちゃいけない。それでこそ、周りからの評価が得られるので、その姿勢はメンバーにも見せていきたいですね。
社外協業では、互いにゴールを達成できる win-win な関係性を重視
― これまで、外部エキスパートと協業する機会はありましたか?
はい、イベントや PR、広告運用などでは代理店にお仕事をお願いしています。
ほかにもMiro では、イベントの際やお客さまによりよい体験を提供したいときに、Miro エクスペリエンスデザインという美しいデザインの Miro ボードを作るんですね。たとえば、イベントではその概要やコンテンツ、議事録、質問と回答、アンケート、動画、関連資料などをまとめたコンパニオンボードというのがあるのですが、これを作っているのは Miro の本拠地であるアムステルダムのデザインチームが業務委託しているフリーランスのデザイナーさんたちです。
今も、ある国内企業さん向けイベントのボードを作っているのですが、そのデザインにおいて業務委託の方に入ってもらっています。メールのバナーとかも全部その人が作っていますね。
― 業務委託の方や代理店への評価基準も確立されているのでしょうか?
エクスペリエンスデザインに関わるフリーランスのデザイナーさんへの評価については、プロジェクトが終わると毎回オンラインでアンケートが飛んできます。ただ日本では外部エキスパートに対する評価基準が厳密にあるわけではないので、これからですね。
― 日本でフリーランスを採用した経験はありますか?
コンテンツのローカライゼーションを担当するメンバーでは、業務委託から正社員になった人がいます。ものすごく優秀で、ローカライゼーションの職人という感じの方です。
マーケティングチームではまだいないのですが、フリーランスだからというわけではありません。私たちが求めるスキルセットを持ち、Miro の価値に共感いただける方がいれば、お願いしたいと思っています。考えられるのは、Miro のブランドガイドラインに沿ったさまざまなアセットのデザインや、そのデザインをもとにしたテンプレートの作成、SfA やマーケティングオートメーションツールを使った顧客向けのニュースレターの送付、コンテンツ作りなどでしょうか。
― 外部エキスパートを採用する際、スキル以外にはどんなことを重視しますか?
win-win になる関係性でいられるかどうか、ですね。発注側・受注側ではなく、一緒に目標を達成するパートナーでありたいので。代理店パートナーであれ業務委託のフリーランスであれ、仕事相手とは対等の関係であるという意識を大事にしています。
というのも、パートナー側にも Miro との仕事で成し遂げたいことがあると思うんですよね。弊社の行動指針である Miro Values に共感いただき、Miro が作り出したい価値を一緒に作り出してもらうだけでなく、お互いのゴールをちゃんと達成できる関係を築くことがすごく重要だと考えています。
― 逆に、社外との協業で避けるべきことは何でしょうか?
無理難題を押しつけたり、土日祝日まで働かせるような要求を通すといったことは、絶対にやってはいけないと思います。パートナーを見下すような態度では、いいものは生まれません。
あと、期待どおりのものが出てこない場合は、こちらにも責任があります。ちゃんとディレクションできていないからそうなってしまう。それを、「お金を払ってるのはこっちだ」で通すのは違いますよね。
だから、外部の方とは対等な仲間という意識でいたいし、向こうにもそう思ってもらいたいです。一緒になって目標を達成しようという当事者意識が、いい結果につながると思います。
― 社外コラボレーションをスムーズに進めるために、工夫していることはありますか?
宣伝になってしまいますが、Miro ボードの活用ですね。代理店の方々とも Miro のボードで仕事を進めています。必要な情報を集約できるうえに、セキュリティも担保されていますから。たとえば、情報を勝手にローカルにダウンロードされたくなかったら、ダウンロードやコピペを防止する権限を設定できるので安心です。
あと、マーケターをはじめ、企画や分析、それからクリエイティブな仕事に関わる人々にとって、集中できる時間の確保は非常に重要です。その点 Miro は同期でも非同期でもコラボレーションしやすいので、各自がそれぞれ都合のよいときに頭と手を動かすことができ、無駄なミーティングも減らせます。
― 最後に溝口さん自身の、フリーランスに対する印象をお聞かせください。
昔いた会社で、私が担当したソフトウェア製品のマニュアルをフリーランスの方と一緒に制作した経験があるのですが、その方はもう本当にプロフェッショナルでした。まさに仲間として仕事をしただけでなく、私自身がたくさん学ばせてもらった記憶があります。広報の仕事で関わる方々にも、唸るような記事を書いてくれるフリーランスのライターさんがたくさんいらっしゃいます。
それに、自分の裁量で仕事ができるのは、見ていてうらやましいと思うときがあります。会社にいたらこの時期に絶対にこれをやらなきゃいけない、というのがありますから。私の先輩でもフリーランスで活躍している方々がいらっしゃいますし、私自身もチャンスがあればやってみたいと思っています。
これからの時代、会社員として働くだけが選択肢ではないと思うんですよね。能力やビジネスセンスのある方は、自分で起業するなり、フリーランスで力を遺憾なく発揮するような仕事をすればいいと思います。先ほども言ったように、Miro の価値に共感してもらえる優秀な方がいれば、どんどん一緒にお仕事をしていきたいです。
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Writer / Yuna Park
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