免税事業者向け!インボイス登録の決め手はこの2つ【税理士監修】 Article Image
2023.06.24# Tips

免税事業者向け!インボイス登録の決め手はこの2つ【税理士監修】

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Sollective(ソレクティブ)では先日、コミュニティメンバーに対してインボイス制度への対応状況や情報収集方法に関するアンケートを実施。すると、「登録する」「登録しない」「わからない/決めていない」と答えた人々がそれぞれ約3分の1ずつときれいに分かれる結果となりました。

さらにインボイス制度の理解度について尋ねたところ、17人中8人が「わからない点や不安な点がある」もしくは「まったく理解していない」と回答。制度の開始が迫るなか、理解度に不安を持つ人が少なくないようです。

そこでインボイス制度シリーズ第2回の今回は、インボイス登録・非登録でそれぞれ考えられるデメリットを整理したうえで、登録の決め手を解説。鍵は、主な取引先の意向今後のビジネス戦略です。

💡関連記事:インボイス制度、正直どうする?緊急アンケートから見えた現状とは👀

免税事業者が押さえたいインボイス登録・非登録のデメリット

現在免税事業者であるフリーランスの皆さんは、インボイス登録をしてもしなくてもデメリットが生じる可能性があります。まずはそれぞれのポイントを理解しましょう。

インボイス登録で生じるデメリット

①納税額が増える

売上が1,000万円以下、あるいは開業して2年以内のフリーランスは免税事業者として消費税の納付が免除されています。しかしインボイス事業者として登録すると、その消費税を納める必要があるため、実質的に負担が増えてしまいます。

②納税額計算や申告等の手間が増える

免税事業者のときは所得税の確定申告だけでよかったものが、インボイス事業者になると消費税も確定申告しなければなりません。そしてその確定申告では、原則として「売上に伴い受け取った消費税」から「経費に伴い支払った消費税」を差し引いた額を算出するため、日頃から消費税を正しく記帳する手間が発生します。

特に厄介なのが軽減税率の対象を分けること。たとえばコンビニで新聞とペンを買った場合は、新聞の消費税が8%、ペンの消費税を10%として記帳する必要があるのです。

ただし、この手間を最小限にとどめる方法もあります。それが負担軽減措置として登場した2割特例です。

2割特例とは、売上に伴って受け取った消費税の20%を納める制度です。この制度を使えば、売上が500万円の場合、受け取る消費税は50万円になるため、その20%である10万円を消費税として納めます。納める税額は自動的に決まるため、記帳や計算の必要はありません。

ただし、個人事業主が2割特例を使えるのは2023年10月1日から2026年12月31日までです。また赤字の場合は消費税の還付を受けられるため、原則どおりに処理した方がよいでしょう。

非登録で生じるデメリット

①現在の契約が更新されない可能性がある

2023年10月以降に皆さんが免税事業者のままでいる場合でも、取引先に対してこれまでどおり消費税を請求できます。そして取引先がそれを理由に皆さんに値下げを要求したり、インボイス登録を強要したりするのは原則としてNGです。

しかしそのままでは取引先が皆さんに支払った消費税を、自社の売上に伴って受け取った消費税から差し引くことができません。つまり、取引先の納税額が増えるのです。

そうなると、現在の契約期間が終わったら次はインボイス事業者と契約しようと判断される可能性が考えられます。

②コンペなど他事業者との競争の際に不利になる可能性がある

新たな取引先を開拓する際にも不安があります。発注元が複数の事業者を比較検討している場合、その他の条件が同じであればインボイス事業者が有利になる可能性があるからです。

たとえば売上1,000万円の企業が、フリーランスに200万円のプロジェクトを発注するとしましょう。この場合、発注先がインボイス事業者なら納める消費税額が100万円-20万円=80万円となるのに対し、免税事業者ならその差し引きができないため100万円です。これでは企業がインボイス事業者を優先しても不思議ではありません。

インボイス登録の決め手①主な取引先の意向

インボイス登録・非登録のデメリットを押さえたところで、ここからは決めるために行いたいことを2つ見ていきましょう。

1つ目は、主な取引先の意向確認です。実は、取引先によっては次のようにインボイス登録が要らないケースがあります。

・取引先が免税事業者の場合 ・取引先は課税事業者だが、2割特例あるいは簡易課税制度を用いる場合 ・取引先は海外の企業のみで、役務が輸出に当たる場合 ・取引先が一般消費者のみの場合(小売店や飲食店など)

また、たとえ免税事業者のままでいても、関係性によってはこれまでどおりの条件で契約を続けてもらえる場合もあります。

というのも、発注元にも特例があるからです。その特例を使うと、発注元はインボイス制度導入後6年間は、免税事業者からの仕入れから一定の割合を控除できます。その割合は2023年10月から2026年9月までの3年間は80%、2029年の9月までは50%です。

先ほど例として売上1,000万円の企業が200万円のプロジェクトを発注する場合を挙げましたが、この特例を使えば、発注先が免税事業者でも支払った消費税20万円の80%にあたる16万円を控除できるというわけです。

ほかにも、この機会に値上げするという方法もあります。昨今の物価高で賃上げを実行する企業が多い現状を考えると、フリーランスも交渉しやすいタイミングです。そうして値上げに応じてもらえそうならインボイス登録を行うという判断でもよいでしょう。

📍まとめ ・主要取引先が原則どおりの課税事業者がどうか確認する ・免税事業者のままでいる場合、従来通りの条件で契約を続けてもらえるか確認する ・現在の契約金額を上げられるかどうか交渉してみる

インボイス登録の決め手②今後のビジネス戦略

もう1つのポイントは、これからのビジネス展望です。

皆さんは、今後も売上を1,000万円以下に抑え続ける予定でしょうか?それともビジネスを成長させていく意向はありますか?

もし後者であれば、この機会に成長戦略を策定し、実行に向けて舵を切るのもよいでしょう。取引先を増やすのであればインボイス事業者の方が有利になると考えられるうえ、売上が1,000万円を超えるとその2年後から消費税の納税義務が発生します。そのため、今をビジネス成長のきっかけだと捉えてインボイス事業者登録するのも1つの手です。

成長といっても何から始めればよいのかわからない人は、成功しているフリーランスから学べるイベントなどに参加してみましょう。また単発の仕事ばかり請け負ってきた人は、継続して参加できるプロジェクトを探せば収入の確保につながります。思い切って新たなプラットフォームを活用するなど、仕事の探し方を変えてみるのもよいでしょう。

取引先を増やす際は小規模事業者持続化補助金の活用も検討してみてください。免税事業者が新たにインボイス登録すると特例が適用され、通常枠での申請の場合、補助上限が50万円のところに50万円が上乗せされます。補助率は3分の2なので、150万円を販路開拓に使うと100万円の補助が受けられるというわけです。

📍まとめ ・今後、取引先を増やしていきたいかどうか明確にする ・ビジネス成長の、具体的な戦略を考える ・補助金を活用して取引先を増やせそうか考える

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ここまでで考えるべきポイントがかなり明確になったのではないでしょうか。とはいえ、個別の事情など細かな疑問も残っているかもしれません。

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Contributor / Keiichiro Nishiura(公認会計士・税理士) Sollective : https://www.sollective.jp/freelancer/keiichiro-nishiura Twitterhttps://twitter.com/Keiichiro_ni Writer / Yuna Park Sollective:https://www.sollective.jp/freelancer/Yuna/ LinkedIn:https://www.linkedin.com/in/yuna-park-9a802411b/ note:https://note.com/yunapark

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