UU 数が20%増加。フリーランス採用でペダルノートが実感する「プロを迎える意義」 Article Image
2024.03.19# Case Study

UU 数が20%増加。フリーランス採用でペダルノートが実感する「プロを迎える意義」

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必要な知見やスキルが自社にない場合、プロジェクト単位で補いたいと考える企業は多いでしょう。「探さないで見つかる」をコンセプトに独自の IoT-SaaS を展開するペダルノートもその1社です。

創業6年目にサービスをヘルスケア領域にまで広げたペダルノート。しかし当初チームには UI/UX デザイナーがおらず、開発だけが先に進んでいる状態でした。そんな同社が初めて迎えた UI/UX デザイナーが、 Sollective を通して出会った名古屋在住のフリーランス、松浦克彦さんです。

当初3か月の予定だった協業は、2年が経った現在も続いています。その理由は、松浦さんがデザインに手を入れると UU 数が普段より20%増加するなど目に見える効果を感じられているから。それだけでなく、「チームへの新しい視点と刺激も得られている」と小原さんは語ります。

東京にオフィスを構えるペダルノートと、名古屋から完全リモートで働く松浦さんはどのようにプロジェクトを進め、長期の協業関係を実現しているのか、ペダルノート代表の小原芳章さんと松浦さんに話を聞きました。

👤 松浦克彦さん(UI/UX デザイナー) 2014年4月に株式会社アイシンに入社し、機械部品などのプロダクトデザインやグラフィックデザインなど幅広く従事。2020年に退職後は食関連の事業で起業を試みるもコロナ禍で方向転換し、フリーランスデザイナーとして活動を開始。UI/UX にも領域を拡大し、現在は主にスタートアップのデザインに携わる。 https://www.sollective.jp/freelancer/matsuurakatsuhiko 🏢 株式会社ペダルノート 2014年の創業時より、独自の IoT-SaaS を基にしたインフラ構築によって、盗難自転車や迷子のペットが「見つかる・協力する」サービス開発に取り組む。2019年8月に「探す」の発想から「探さない」の発想へシフトし、現在は病院内にある医療機器の現在地を可視化する医療機器管理 loT-SaaS システム『forista SECURE Asset(フォリスタ セキュア アセット)』を展開する。 https://pedalnote.jp/

企業とフリーランスのニーズが合致。相性のよさで協業を即決

―― 今回の協業の背景を教えてください。

小原:ペダルノートでは、IoT を活用して医療機器の置き場を可視化する『foristaSECURE ASSET(フォリスタセキュアアセット)』という SaaS を主力事業として展開しています。

創業当時は、盗難自転車や迷子のペットを追跡するサービスをメインにしていたところ、ある病院から「院内の医療機器も簡単に探せないだろうか」と問い合わせがあったんです。そこで医療現場における探す時間や労力の削減にも貢献しようと、2019年から開発に取り組んできました。

当初はエンジニアしかいない環境で進めていましたが、ユーザーは命を預かる医療従事者です。現場の「使いやすさ」は非常に重要であり、その追求に UX デザイナーは欠かせません。それで Sollective に相談し、紹介してもらったうちの1人が松浦さんでした。

松浦: 実は当時、Sollective からはもう1社紹介があったんです。どちらに決めるか相談にのってもらうなかで「ペダルノートはデザイナーが不在」という話が決め手になりました。

その理由は、デザイナーが多くいるチームに加わるより、1人で幅広く携われたほうがやりがいを感じられると考えたから。フリーランスとしてさまざまな現場で培ってきたノウハウも活かせそうだったので、話を進めてもらうようお願いしました。

―― どのように契約まで進んだのでしょうか?

小原:最初の面談は、訳あって私が新幹線の車中にいるときだったんです。じっくり話せませんでしたが、ポートフォリオが充実していたので、松浦さんに活躍してもらえるイメージがすぐに持てました。ぱっと見て、純粋に「いい仕事をしているな」と。受賞歴の多さも、デザインへの信頼度につながりましたね。

その時点で私は「一緒に働きたい」と思ったのですが、念のために長く勤めている社員とも、後日面談をしてもらいました。そうしたら、彼も「いいね」って。私たちのひと目惚れ状態でした(笑)。

松浦:通話が途切れて30分弱しか話せなかったのに、こちら側の条件に対して「問題ない、大丈夫だから」って繰り返し言ってくださったんです。小原さんは最初からフランクな印象で、一緒に仕事ができたら面白いだろうなと思いました。

―― 小原さんはほぼ即決だったとのことですが、松浦さんは協業にあたって不安はありませんでしたか?

松浦:強いて言うなら、医療分野のシステムにかかわるのが初めてだったので、デザイナーとしてバリューをきちんと発揮できるかは不安でした。だからこそ、面談で小原さんの人柄に触れて安心しましたね。

フリーランスからの納得感の高い提案が、既存チームの意識を変える

―― 実際に協業が始まってからはどうでしたか?

小原:正直、リモートで働くフリーランスの松浦さんが社内に溶け込めるか心配しましたが、杞憂でした。というのも最初のチームミーティングで、カスタマージャーニーマップをはじめプロダクトに足りないものが一目でわかる資料を準備してくれたんです。

エンジニアはある意味技術に対して一直線なので、どうしても視野が狭くなってしまうときがあります。松浦さんがユーザーの動線を俯瞰的に整理してくれたおかげで、視野を広げ、全体を見ながら進められるようになりました。インパクトもあったし、チームメンバーが違和感なく受け入れられた、その提案力が素敵だなと。

松浦:UX デザイナーとしてエンジニアに提案する際は、そもそもなぜ改善が必要なのか、その理由を理解してもらうことが大事だと思っています。

たとえば「このメニューバーのデザインは直した方がいい」と伝えるだけでは、受け入れてもらえないですよね。だからユーザーの視点に立って検討できる資料の準備と、提案をするよう今も心がけています。

―― 小原さんは東京、松浦さんは名古屋ですが、業務の進行に支障はありませんか?

小原:松浦さんは常に納得感の高い提案をしてくれるので、細かな説明を求める必要がないんです。なので直接顔を会わさずとも大丈夫ですね。

松浦:普段のコミュニケーションは主に文字ベースですが、悩みや不明点があった時点で話す時間をもらうようにしています。なので僕の方も問題はありません。

―― 当初の予定よりも長く、2年以上も協業が続いています。その理由をぜひ教えてください。

小原:松浦さんのいいところは、専門家としてきちんと自分の考えを伝えてくれる点。フリーランスだからとか、ほかの社員よりも若いからといって物怖じしたり遠慮したりしないんです。加えて、説明に納得感もある。

そのためエンジニアをはじめ、チームメンバーもいい意味で緊張感を持って仕事ができるし、「もっと自分たちで考えていかないと」という意識に変わっていく。それが松浦さんと長く仕事を続けている理由です

松浦:正直、エンジニアサイドからすれば、築き上げてきたものに対して、途中から入ってきたフリーランスに「あれも、これも直して」と言われるのは苦痛だと思うんです。

UX を改善しなくても既にプロダクトは動いているので、気持ちもよくわかります。でも、ユーザーの使い勝手を考慮すると改善した方がいいし、僕はデザイナーである以上「ユーザーにとっての使いやすさ」を諦めてはいけないと考えています。その意図をチームメンバーに伝えるコミュニケーションこそ大事だと思っており、丁寧に取り組んでいる自覚はありますね。

「チームの司令塔になって欲しい」―いちデザイナーの役割を超えた協業関係を実現

――2年以上の協業を経て、それぞれどのような効果を感じていますか?

小原:たとえサイトの軽微なデザイン調整でも、松浦さんが手を入れるとユニークユーザー(UU)数は普段より20%増加するんです。そこはやはり、プロの UI/UX デザイナーが組織にいる意義を感じます。

でもいちばんの効果は、チームへの新しい視点と刺激です。それに松浦さんがチームに入ったことで、メンバーのスキルや意向をうまく吸い上げて調整する役割の重要性にも気づかされました。今後、プロジェクトマネージャー的な人もチームに必要になりそうです。

松浦:僕はペダルノートとの協業でデザイナー不在の環境を初めて体験して、普段当たり前にやっている提案が「こんなに喜ばれるんだ」という気づきがありました。あとはリソースが限られた環境で、既にある資産をどんな流れでどう変えていけばユーザーの利便性が高まるのか、そのプロセスの追求が学びになっています。

―― いちデザイナーの役割を超え、組織の課題も共有できる関係が築けているんですね。おふたりの今後の展望をぜひお聞かせください。

小原:今回の協業を通して、UX デザイナーは、開発において司令塔にもなり得るポジションだと実感しました。今後は松浦さんにその役割をお願いできるくらい、会社を成長させていきたいですね。

直近の目標は、ヘルスケア領域での認知向上です。今は松浦さんの改善案を5月の学会に向けて実装すべく動いているので、引き続きよろしくお願いします!

松浦: BtoC の情報サイトとは違って BtoB のプロダクトは、UX の改善がどう成果に結びつくのか見えにくいんです。その点では不甲斐なさを感じつつも、自分のバリューが発揮できることを今後も追い求めていきたいです。

―― 本日はありがとうございました!

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