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2022.10.27# Trends

メタバースが変える働き方の未来とは? 海外事例から学ぶ新しいコミュニケーション

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新型コロナウイルスの影響もあり、世界中で普及したリモートワーク。ですが、リモートワークと幸福度は比例しないということも明らかになっています。

SDGsの流れなどから、社員が心身ともに健やかに過ごせる組織環境を整える「ウェルビーイング経営」も求められる今、新しい働き方を模索している企業も多いようです。

今主流になってきている「ハイブリッドワーク」は、その名の通りオフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたもので、多様な働き方の実現に欠かせない働き方になっています。

そんな中、2021年から話題になっている「メタバース」は、ハイブリッドワークを支える新しい働き方になるのではないかと話題になっています。

この記事では、「メタバース」が今後どのように私たちの働き方に影響するのか、海外の事例や考察と共に解説していきます。

メタバースとは? 「距離を超えた体験」ができる仮想空間

約一年前 Facebook 社がブランド名を変更したことにより、 Instagram や Facebook アプリの起動時に「Meta」という言葉を見る機会が増えました。しかし実際のところ、メタバースとは何なのでしょうか?

Forbes の記事  「What is The Metaverse and Why Should You Care?(メタバースとは何なのか、そしてなぜ気にするべきなのか)」 では以下のように説明しています。

ブラウザやヘッドセットを介してアクセスする仮想現実と複合現実の世界を組み合わせたプラットフォームに、人々が距離を超えて、リアルタイムの相互作用や体験をすることを可能にするものに対して「メタバース」という用語が使われています。

WIRED によると、Meta(元 Facebook)CEO マーク・ザッカーバーグや Microsoft CEO サティア・ナデラは、「メタバースはインターネットの未来であり、ビデオゲームのようなもの」、さらには、「とても不快な悪いバージョンの Zoom かもしれない」とも発言しています。

また同記事では、以下のようにメタバースを説明しています。

企業が「メタバース」について語るとき、バーチャルリアリティ(遊んでいないときにも存在し続ける持続的な仮想世界)や、デジタル世界と物理世界の側面を組み合わせた拡張現実を含む技術を指すことがあります。しかし、これらの空間は VR や AR によってのみアクセスできるわけではありません。フォートナイト(2017年に公開されたオンラインゲーム)のように、パソコンやゲーム機、携帯電話からアクセスできる仮想世界を「メタバース」と呼ぶようになったのです。

メタバースは仮想空間と現実世界を繋ぐことができるツールであり、専用の機械などを使わず、 パソコンや携帯電話など既に私たちが持っている電子機器でアクセスすることも可能になってきています。そのため、メタバースがより身近な存在になってきているのかもしれません。

海外でのメタバース活用事例

とはいえ、日本では「メタバース」という言葉だけが先行していて、日常的にメタバースを使用している人は少ない印象です。

海外ではどのようにメタバースを活用しているのでしょうか。ここでは、3つの事例を紹介します。

■1. メタバースを活用した就職説明会

コンサルティング企業のキャップジェミニとHR企業である Hirect は、メタバースを使って就職説明会を開催し、成功を収めたと Forbes の記事「 An Emerging HR Trend: Employee Experiences In The Metavers(新たな HR トレンド。メタバーズにおける従業員の経験)」で紹介されています。

参加者は自分のアバターを作成し、 VR ヘッドセットを装着して、ウェブブラウザからイベントに参加しました。バーチャル採用の最大の利点は、採用担当者がリアルタイムで候補者と面接し、評価できることです。テクノロジーによって、バーチャルロビーやホログラムのプレゼンテーションで会社の情報を紹介することができます。 採用担当者は、この別世界(メタバース)での行動を通して候補者を知り、誰が自分の組織に最も適しているか、十分に推測することができるのです。候補者が個人として、あるいはグループ内でどのように交流しているかを観察することもできます。

■2. グローバルブランドがメタバースに進出

Influencer MarketingHub の記事「20 Brands Leaping into the Metaverse (メタバースに進出する20ブランド)」によると、ナイキやコカコーラ、サムスンなど20のグローバルブランドがメタバースに進出し、注目を集めています。

調査会社 MarketsandMarkets によると、メタバース市場の規模は2022年現在の618億ドルから、2027年には4269億ドルに成長すると予測されています。同時にソーシャルメディアの未来における重要なツールになるとも予測されているため、ブランドマーケターは最先端のキャンペーンをいち早く展開しようと、戦略を練っているそうです。

同記事では、ナイキによるメタバースを使ったキャンペーンを以下のように紹介しています。

2021年11月、スポーツブランドであるナイキは、ミニゲームで遊びながら、スポーツと遊びを中心としたライフスタイルを満喫できるインタラクティブな世界「NIKELAND (ナイキランド)」を発表しました。 NIKELAND は、ユーザーに没入型の体験を提供することで知られるメタバースプラットフォーム「Roblox」上に設営されています。デジタル空間に市場を持つことで、より多くの人々に商品やサービスに興味を持ってもらうことができます。 デジタルコミュニティには、リアルタイムで体を動かすこともできるゲームがあふれています。アバターをカスタマイズして、ゲーム内の衣装コレクションで紹介されている NIKE ギアを着せ、その衣装をショールームでシェアして、仲間に見てもらうことができます。

さらに、ナイキランドを発表した翌月の2021年12月、 NFT スニーカーとアバターアクセサリーを専門とするスタジオ  RTFKT を310万ドル(約3億5000万円)で買収しました。この買収により Nike は更なるステージへと進み、メタバース上での存在感も強めていくでしょう。

メタバースを使ったマーケティングでは、より多くのお客様に出会うことができ、ブランドの新しい可能性を生み出すチャンスになっているのかもしれません。

■3. 国がメタバースを通じて認知度を高め、仕事を作る

COINTELEGRAPH の記事「Organizations bring Africa, Costa Rica and Ukraine to the Metaverse to raise awareness(アフリカ、コスタリカ、ウクライナをメタバースに登場させ、認知度を向上させる団体)」によると、メタバースが持つ潜在的な可能性から、世界各地でバーチャル上での存在確立に向けた取り組みが始まっているそうです。

今年7月、ドバイは「ドバイ・メタバース戦略」の立ち上げを発表しました。ドバイ・メタバース戦略は海外から企業やプロジェクトを誘致したり、デジタルプラットフォームの開発者、コンテンツ制作者、ユーザーを対象としたメタバース教育におけるサポートの提供を目指しています。

また同記事によると、 Web3 ユーザーは、アフリカ、コスタリカ、ウクライナの3カ国をメタバースで体験できるようになると紹介しています。

アフリカ発のメタバースプラットフォーム「Ubuntuland」を運営する Africarare(アフリカーレ)共同創業者兼 CEO のミック・マン氏は COINTELEGRAPH に対し、Africarareはアフリカと世界のデジタル経済をつなぐものだと語りました。

アフリカは世界で最も人口が増加している地域のひとつであり、2050年までには最大の人口を抱えるようになると予測されています。そのため、今こそが新しい世界に向けてアフリカの若者をスキルアップさせる絶好の機会だと考えたのです。Africarare は、アフリカ人とこの大陸の人々とつながりたい組織のために、仕事の未来を創造しようとしています。

このように組織や企業が目的を持って仮想環境を再現し、国の未来へ投資していることがわかります。

メタバースが私たちの働き方に与える影響

■メタバースがリモートワークの課題を改善する

Fortune の記事「The metaverse is replacing the office. Meet the gamified workforce of the future(メタバースはオフィスに取って代わる。未来のゲーミフィケーション人材に出会う)」によると、2028年までに73%のチームがリモートワーカーを抱えることになり、ニーズと関心のバランスを取ることが大切になると述べられています。

企業はさまざまな方法で「仕事」を受け入れることができるようになりました。 優れた人材を求める企業は、どのようにコラボレーションを行い、テクノロジーを活用し、さまざまな社員の実態・要求に対応できるかを知っておく必要があります。従業員による、アクセスのしやすさ・働き方の柔軟性についての継続的なフィードバックの繰り返しによってルールを改善し、生産性を高めることが重要です。 また、最新の「リモートワークの現状」レポートでは、コミュニケーション・コラボレーションの不足(17%)、孤独(19%)、モチベーション維持の困難(12%)といった課題にも対処する必要があると挙げられています。

これらの課題がある中で、メタバースのような没入型プラットフォームは、従来の職場環境を PC やスマートフォン、 VR ヘッドセットなどのデバイスを介してアクセスできる混合融合世界に押し上げていくことができる同記事では述べられています。

それにより、チームのミーティングや会社の祝賀会などをよりリアルに体験することができるようになります。実際にチームメンバーと対面することができない場合でも、よりつながりの強い企業文化を構築する上で有効な方法の一つかもしれません。

同記事では、以下のようにも説明されています。

メタバースがもたらすコミュニティの感覚は、もはやゲームだけに限定されません。職場が進化するにつれて、従業員はますますメタバースで共同作業をし、コミュニケーションを図るようになります。

従来のオンラインミーティングのみでは、必要最低限のコミュニケーションしか取れず、信頼関係を構築することは難しい印象です。しかしメタバースによって、リモートワークのコミュニケーション課題を改善できるかもしれません。

■アバターが相手に与える影響を活用することもできる

Forbes の記事「What Our Avatars Say About Us In The Virtual Working World Of The Metaverse(メタバース上の職場でアバターが語る私たちの姿)」によると、私たちが自分で選んだアバター(外見)は、メタバース上での他者との交流に影響を与えるということが次第に明らかになってきています。

テキサス大学アーリントン校の研究によると、専門職の場合、顧客と対話する際に使用するアバターは、外見と行動の両方がリアルであることが重要であるそうです。 しかし、「アバターのこの2つの部分を一致させるのは難しい」と研究者は説明します。「(外見など)物理的な面と行動が一致しない場合、アバターの使用効果は不安定なものになり、メタバースに関係のない背景(金融リスクなど)に左右されるだけです。

アバターに対しての課題がある一方で、アバターを使うメリットも大きいようです。

顧客とカスタマーサービス担当者の間で複雑な事柄・コミュニケーションが交わされる際、知的な見た目をしているときに相手の反応が良くなるということがわかりました。同様に、メンタルヘルスに関する話など、よりプライベートな話題では、あまりリアルでないアバターの方が効果的であることがわかりました。

私たちの外見はコミュニケーションに大きく影響します。そのことを踏まえ、状況に応じたアバターを使用することによって、社内コミュニケーションのツールとしてメタバースを導入する利点を生み出すことができるかもしれません。

メタバースはオフィスの代わりにはならない?

世界中でメタバースの持つ可能性が期待されている一方、Harvard Business Review の記事「The Metaverse Will Enhance — Not Replace — Companies’ Physical Locations(メタバースは、企業の物理的な拠点を代替するのではなく、強化するものである。)」では、メタバースは職場の代替というより、職場を補完するものになると述べています。

メタバースは、デジタルの世界をよりリアルに体験できるようにし、豊かなコンテンツや多様な人材に出会う可能性を広げます。また場所間の移動コストを下げ、データに基づく意思決定や、体験を個人に向け大きく最適化することを可能にします。 しかし、人間が実際の場所に集まって協力するときに起こる感情の合図、表情や身振り、偶然に生まれる機会やコミニュケーション、多様性を再現することはまだできないのです。

今後メタバースの技術がさらに向上する可能性は大いにありますが、私たちのコミュニケーションは想像以上に複雑なものであることがわかります。直接会話することによって見える細かな動作や感情の変化など、メタバースでは表現できない何かに私たちは価値を感じているのかもしれません。

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