Sollective代表 岩井エリカインタビュー「フリーランスが日本経済再生のトリガーになる」 Article Image
2022.12.01# Other

Sollective代表 岩井エリカインタビュー「フリーランスが日本経済再生のトリガーになる」

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皆さまこんにちは!株式会社ソレクティブにて、 Marketing Communications を担当している Yui です。 ソレクティブは、完全審査制フリーランスプラットフォーム(マッチングサービス)を軸に、フリーランスのための SaaS 型プロダクト(バックオフィスツール)を展開しています。

企業として「即戦力フリーランスで日本経済再生へ」、そして 「フリーランスファースト」 を掲げていますが、ここまでフリーランスの可能性を確信している理由は、弊社代表 岩井エリカのバックグラウンドにあります。

そこで今回、9歳で単身イギリス留学をし、アメリカで MBA を取得するというグローバルな人生を歩んできた岩井に、「 MBA 取得までのストーリーとソレクティブ立ち上げの背景」「元人事として思う日本の人材採用の課題」「今後の展望」について聞いてみました。

9歳で単身イギリス留学し、UCLAでMBAを取得するという異例の経歴を歩んだ理由

—— エリカさんは9歳で単身イギリス留学されたそうですね。どういった経緯で留学されることになったのでしょうか。

当時私が8歳で、弟が4歳の夏休み期間でした。 母は若くしてお母さんになった人なのですが、夏休みなどの長期休みに好奇心旺盛な小さな子供二人の面倒をみるのは大変だったようで。私は一人、カナダのサマーキャンプに参加することになったんです。

キャンプへはアメリカ人はもちろん、アフリカやヨーロッパなどから世界中の子供たちが集まっていて。あまり細かくは覚えてないのですが、工作などのアクティビティをして、とっても楽しかった記憶があります。

サマーキャンプを終えて帰国後、「色んな国の人に出会ってとても楽しかったけど、もっと英語が話せて、コミュニケーションが取れたらよかったなぁ」と母に伝えたんです。そしたら母が、「英語をもっと話したいんだったら、インターナショナルスクールに行くかイギリスに留学に行ってきたら」みたいな選択肢を提示してくれて。結局イギリスを選び、渡英しました。

—— インターナショナルスクールとイギリス留学の二つが選択肢としてあげられた理由は何だったのでしょうか。

インターナショナルスクールの場合、奈良出身なので通える学校が神戸にしかなかったんですが、少し遠い場所にあって。 母自身、子供の頃の通学時間が長くて電車で寝過ごしてしまったりと大変だったらしいんです。だったらもう「ベットから飛び出てそのまま学校に行けるような環境がいいんじゃない」という話になり、イギリスの全寮制を勧めてくれて、そこに決めました。 何故イギリスという選択肢が出ていたのかなど、細かいところは覚えてないのですが(笑)

—— 9歳で単身海外へ行くということはとても勇気が必要なことだと思います。実際渡英してみてどうでしたか?

行ってみたらすごく大変でした(笑)

まず、英語が全然喋れない。渡英する直前まで英会話レッスンを受けてはいたのですが、本当に喋れませんでした。しかも、9歳って小学3年生くらいじゃないですか。当時、親から離れるということが具体的にどういうことなのか、どんな大変なことが待ち侘びているのかなど、全く予想できなかったんです。頭の中では楽しいことしか描けていなかったのだと思います。「行きたいから、行く!」という感じで(笑)

しかしいざ行ってみたら、家族とも会えないし、友達もいないし、すごく大変というか悲しかった。毎日泣いてたと思います。 ご飯は、これでもか!というくらいパンとポテト、ビスケットが出てきて。まずいというか本当に食事が合わなくて、慣れるまで大変でした。

渡英したばかりのころ(9歳)

渡英したばかりのころ(9歳)

—— 当時、エリカさんはどんな小学生でしたか?

ぬいぐるみが大好きな子でした。 でも遊ぶというより、それを飾ってるのが好きでしたね。色んなぬいぐるみを集めました。 実はラクロスのチームにも入ってたんですが、中学生になった頃から、かなりの運動嫌いになっていきました(笑)

—— その後、Imperial College London(インペリアル・カレッジ・ロンドン) にて工学部修士を卒業したそうですね。工学部を選択された理由を教えてください。

学校では理科や研究が好きだったのでもっと追求したいと思い、工学部を選択しました。

イギリスは専攻科目をかなり早い段階で絞り、得意なもの(教科)に多くの時間を使って強みを伸ばしていくという教育方針なんです。高校最後の2年間に関しては、4科目(!)しか取らないのですが、私はファインアート(純粋美術)と経済、数学、物理を専攻していました。

Londonの大学時代、同じ工学部の友人と

Londonの大学時代、同じ工学部の友人と

インペリアル・カレッジ・ロンドンの卒業式にて

インペリアル・カレッジ・ロンドンの卒業式にて

—— エリカさんがエンジニア(研究者)だったということは、ソレクティブメンバーでも最近知った人が多いんですよね(笑) 大学卒業後はどのような道を歩まれましたか?

2010年に帰国し、新卒で住友電気工業というトップメーカーで様々な研究をさせてもらいました。大学時代、一人で取り組むことが多かった研究も、住友電気工業ではチームで運営していました。その経験により、実際に世の中の役に立つ製品を作るには、チームの力が必要なのだなと実感したんです。

例えばチームで実験一つするだけでも、現場の技術者チームや安全管理者など、その実験を回すために様々な役割の人が必要になります。それぞれのメンバーが得意分野を担当してコラボレーションすることによって効率性と生産性が高まり、より良い結果が生まれるんだなとを体感しました。そこから"組織作り"に興味を持ち始め、もっと追求していきたいなと思うようになったんです。

—— そこから MBA 取得へと繋がっていったのでしょうか?

はい。「組織作り」に興味関心を持ち始めたものの、研究者から人事になるって簡単なことではない。自分で何かキッカケを作らなければないらないと考え、今でいう「リスキリング(新しい知識やスキルを学ぶこと)」をするため、 UCLA  Anderson School of Management(アンダーソン・スクール・オブ・マネージメント)にて MBA を取得するために渡米しました。

UCLA(MBA)時代、コンサルティングプロジェクトチームと

UCLA(MBA)時代、コンサルティングプロジェクトチームと

MBA在学中からインターン入社していたマテル社で正社員となり、採用、タレントマネジメント、HRBPを歴任。

UCLAの友人らとロスにて

UCLAの友人らとロスにて

—— UCLA 在学期間中、アメリカで最も歴史あるおもちゃ会社 Mattel Inc. (マテル)にて 3ヶ月間のフルタイムインターンシップをされたんですね。

学んだことを実務経験するというのはすごく重要だと考え、インターンとして入社しました。そしてその後、正社員として採用してもらいました。

—— インターン先としても就職先としてもマテルを選んだ理由を教えてください。

マテル社や、Amazon・Googleなど、様々なトップ企業が UCLA に採用イベントをしに来ていたのですが、私はマテル社のイベントにとても圧倒されたんです。 マテル社といえばバービーやホットウィールというおもちゃが有名ですが、もう、ザ・アメリカのおもちゃってという感じで、ぬいぐるみ大好きな私はテンションが上がってしまいました(笑) 何より、働いている皆さんが本当に楽しそうで魅了され、入社を決意しました。

—— マテル社では具体的にどのようなお仕事に従事されたのでしょうか?

マテルの人事の中核を担うセンターオブエクセレンス(Center of Excellence) として採用、タレントマネジメントに従事し、経営視点に立って人事戦略を立案、実行する HR Business Partner(HRBP)に就任しました。 具体的には、インターン時に本社リクルーティングの効率化プロジェクトを担当して、年間数千万円のコスト削減を実現するソリューション(問題解決案)を提示し、正社員として入社後、実際に実行しました。

マテル社の同僚たちと

マテル社の同僚たちと

インターン期間も含め3年弱マテル社に在籍した後、メガベンチャー企業である Riot Games Inc. (ライアットゲームズ)に転職。コーポレート部門初となる HRBPとして、多くの人事プロセスやプログラムの作成、導入をゼロベースで実現しました。

ライアットゲームズにて

ライアットゲームズにて

運動はあまり好きではなかったけれど、ロスに引っ越してからランニングに目覚めました。
5km大会などで優勝できるようになるまで!

運動はあまり好きではなかったけれど、ロスに引っ越してからランニングに目覚めました。 5km大会などで優勝できるようになるまで!

渡米から6年後、日本への帰国を決意

—— ライアットゲームズの職務を果たした後日本に帰国されたそうですが、帰国を決意されたキッカケは何だったのでしょうか?

うーん・・・一番大きかった要因はおばあちゃんが子宮がんになって、もう残りが長くないと言われたことかもしれません。腫瘍も大きくなってしまっていて。それもあり、そろそろ一旦帰ろうかなと思いました。

帰国後は、Geometry Ogilvy(ジオメトリー・オグルヴィ)日本支部にて、人材マネジメント統括に従事しました。主に採用チームの設立、従業員のパフォーマンス管理システムの導入、実行を通じたビジネスの改善を担当しました。

—— 実際に経験されてみていかがでしたか?

大変でした(笑) イギリスに本社を構える大きな企業なので、本当の意味でのゼロイチではないのですが、イギリス本社でできている人事プロセスを日本にローカライズさせて導入する必要がありました。

また、私が入社したときがちょうどジオメトリーとオグルヴィーが合併するというタイミングでした。そういう時こそが人事の出番で、組織の改善など様々なことにチャレンジさせていただきました。

フリーランスとしての葛藤、そしてソレクティブ立ち上げの背景

—— 2019年、フリーランスの人事コンサルタントとして独立されたんですよね。フリーランスとして、当時どのように案件を獲得されていましたか?

実はフリーランスとして活動を開始した最初の半年間くらいはお仕事がなかったんです。 日本のフリーランスって人脈ベースで仕事を得ることが多いと思うのですが、9歳から海外で多くの時間を過ごしてきた私は、そういった人脈が日本には少なかった。そのため、ゼロベースで繋がりを築いていく必要がありました。 半年間かけて人脈構築と営業活動をして仕事を獲得できるようになりましたが、本当に大変だったのを覚えています。元々人見知りするタイプで(笑)

また、当時存在していたフリーランス用のプラットフォームは、小さなタスク単位の案件が中心だったので、自分の押し出したいスキルやレベルと求められているものがマッチしていない気がしました。

人との繋がりも大切だけれど、もっとプロジェクトの上流工程からスキルやパフォーマンスで勝負できるような機会やチャンスが欲しいと思っている人はたくさんいるのではないか。フリーランスのお仕事獲得や個人のマネジメントシステムを変えたら、自分の本当の強みややりたいことにもっとエネルギーと時間を注力できるようになるのでないかと考えるようになりました。

—— そういった経験から、ソレクティブを立ち上げようと思われたのでしょうか。

そうですね。あとは、ジオメトリー・オグルヴィで働いているとき、デジタルチームでUX ディレクターをしていたのがソレクティブ共同創業者であるアレンでした。 デジタルチームの組織づくりをサポートしていく中で、組織がどうあるべきか、どんな組織を作っていきたいのかなど、人材市場における日本の課題について語ることが多かったんです。アレンはアメリカ出身で、私もアメリカで働いてきたので、海外と日本の両面から人材採用のあり方を見たとき、日本の人材市場に貢献できる部分があるんじゃないかと考えるようになりました。

あとは、フリーランスを取り入れた組織づくりが最も進んでいるアメリカでは、フリーランス=その分野のプロフェッショナルという価値観なのに、未だに「フリーランスは社会に馴染めなかった人」だとか「フリーランスは言われたタスクしかできない」と思っている人が多い。私自身も「社会人やめてフリーランスになるの?」「大丈夫?」みたいなことを周りに言われ、日本ではフリーランスはプロフェッショナルであるという認識が弱いのかもしれないと感じました。

—— 確かに、フリーランスの社会的地位はまだまだ低いように感じますね。他に今のソレクティブのビジネスモデルを形成している出来事や想いがあれば教えてください。

既存のフリーランス人材業界はマッチングだけに注力しすぎなのかもしれないと思ったんです。マッチングもすごく重要だけれど、フリーランスにとっての本当のスタートって仕事を得た後じゃないですか。だからこそ、フリーランスと企業を繋ぐプラットフォームだけでなく、案件を獲得した後、契約書から始まる全ての庶務業務をサポートする SaaS型プロダクト(バックオフィスツール)の開発をしようと決めていました。 ※その第一弾として、2022年9月、フリーランス・副業ワーカーに特化したワンストップ型電子契約サービス『契ラク®︎ by Sollective』を発表しました。

また、フリーランスとして活動してるとき結構孤独だったので、同僚みたいな仲間に出会えるコミュニティを作りたかったというのもあり、現在ソレクティブではコミュニティ運営にも力を入れています。

共同創立者であるAllen Wongと

共同創立者であるAllen Wongと

元人事として思う日本の人材採用の課題

—— ソレクティブを創業されてからのストーリーもお聞きしたいところですが、今回の記事では、日本のフリーランス採用システムを変えていこうと働きかけている中で思う、人材採用の課題についてお話を伺いたいなと思います。

各企業のCEOや人事の方と、採用の課題について実際にお話する機会が多いと思うのですが、現在どのような課題を抱えてる方が多い印象でしょうか?

どの企業も「良い人材を採用してこそ良い事業を作れる」ということを分かっているので、次のステップとして「良い人材をいかにスピーディに確保できるか」が重要になってきます。

皆さん理想の人材条件はあると思うのですが、必ずしもその条件全てを満たす採用ができるとは限りません。 例えば、本当は優秀な人材を正社員として迎え入れたい。けれども、フルタイム(週40時間)で即日入社してもらうのは現実的に厳しい。もしそのプロジェクトが立ち上げ途中で本格始動していない場合、週40時間の稼働も必要がない可能性もあります。 また正社員採用の場合、入社してもらうまでに3〜6ヶ月もの月日がかかってしまう場合があり、その間にかなりの機会損失をしている可能性があります。 特にスタートアップや新規事業は限られたリソースとの勝負だということもあり、できる限りスピーディーに優秀な人材を採用したいはず。

そんなとき、専門性の高いフリーランスを瞬時に採用することができたら、機会損失を防ぐことができるかもしれません。フリーランスの人が安いというわけではなく、例えば優秀な人材に3ヶ月間だけでもプロジェクトに参加してもらうことができたら、事業が成功する確率も上がると思うんです。

フリーランス採用の一つのあり方として、このような「短期採用」もありだと思います。

ジョブ型へ移行していく上で、私たちに必要なマインドセット

—— 今年、これまでのメンバーシップ雇用制度からジョブ型雇用制度に移行していくと発表されました。ジョブ型雇用が今の日本に必要な理由は何だと思われますか?

これまでのメンバーシップ制度は、仕事ができる人が報われるのではなく、同じところに長くいる人が長くいるほど報われる制度だと思うんですね。

まず、メンバーシップ型のメリットから説明すると、例えば新卒で人事部に配属されて何年か経験をした後、経理部に行ったり、事業開発をしたり、営業をしたり・・・幅広く経験させるって、日本の学校と同じですよね。色々な業務を経験することができるので、経営者を育てるのにはすごくいい制度だと思います。 ただ、社員全員が社長になるわけではないですよね。幅広く経験を持つということって、それが生かされる経営ポジション( CEO や COO など)にならない限り、あまり意味を持たないと思うんです。

一方、10年同じ領域を極めてきた専門家は、知識も経験も長けています。そういった人材を組織の中に呼び込む(ジョブ型雇用をする)ことで、生産性も効率性も向上し、組織としてより良い成果を生むことが可能になります。

そしてその「ジョブ型雇用制度」を支えることができるのが、「フリーランス」だと私たちは考えています。特にソレクティブに登録してくださっているフリーランスの方々は、専門性を持ちながらも、社員・業務受託という雇用システムの壁を超え、チームとしてプロジェクトに貢献できるプロフェッショナル人材です。

そしてこのようにアジャイルなジョブ型組織の実現に貢献できる彼らこそが、日本経済再生のトリガー(引き金)になるのではないかと考えています。

シード期の資金調達時、願いを込めてゲットしただるま氏。
だるま氏が身代わりになり(?)割れ目が入ってしまったが、速攻ボンドで接着され、今でも見守ってくれている。

シード期の資金調達時、願いを込めてゲットしただるま氏。 だるま氏が身代わりになり(?)割れ目が入ってしまったが、速攻ボンドで接着され、今でも見守ってくれている。

最後に

—— エリカさんが生きていく中で大切にされているモットーがあれば教えてください。

2つあります。1つ目は、「挑戦し続ける」、2つ目は「流れに乗る」です。 「流れに乗る」を英語では「Go with the flow」というのですが、もちろん人生のハンドルを握っているのは自分だけれど、物事全てをコントロールすることは難しい。ときに「流れに身を任せてみよう!」という勇気も必要だと気が付いてから、このモットーを大切にしています。

スタートアップの登竜門 B Dash Camp用に撮影した写真で、ソレクティブメンバーお気に入りの一枚です。

スタートアップの登竜門 B Dash Camp用に撮影した写真で、ソレクティブメンバーお気に入りの一枚です。

—— 最後に、チームメンバーに一言お願いいたします!

日本のフリーランス業界を活気づけ道を切り開いて行くのは、私一人ではありません。ソレクティブメンバーのみなさんです! 長い道のりになるかもしれませんが、私たちが恐れずに挑戦し続けることができれば、結果的に日本経済の底上げになり、その苦労も価値のあるものになると信じています。楽しみながら前進していきましょう!

グローバルなチームメンバーのみんなと

グローバルなチームメンバーのみんなと

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Sollective は、「フリーランスの価値を証明する」をミッションに、完全審査制フリーランスプラットフォーム(マッチングサービス)の運営とフリーランスのための SaaS 型プロダクト(オールインバックオフィスツール)を通じて、フリーランスが強みを発揮し、自らが思い描く、あるいは追い求めるキャリアパスを実現できるようサポートしています。また企業に対して、会社の規模に関わらず、フリーランス・副業ワーカーを取り入れたアジャイルな組織づくりを推進することで生産性向上をサポートし、ビジネスの加速を促しています。もし、すこしでも興味を持っていただけたら、ぜひ登録いただけると嬉しいです。

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