企業がフリーランス・副業ワーカーと契約書を交わしたほうがいい理由とスムーズな契約締結の方法 - 岩井 エリカの視点
Sollective(ソレクティブ) は2022年3月24日、業務委託契約書作成ツール「契ラク by Sollective」をリリースしました。いくつかの簡単な設問に答えるだけで、自分たちの契約内容にぴったりな書面が約5分で作成できます。
契約書の作成は、慣れていないと面倒に感じられるのではないでしょうか。そのせいか、企業から契約の内容が書面で明示されている人は約3割という調査結果もあります。ですが、口約束だけで仕事をしていると、後で大きなトラブルにつながることもありますし、そういった話をいくつも聞いてきました。
Sollective は、日本のフリーランス・副業の人たちを応援するために、この現状を改善したいという想いと共にこの新しいツールを開発しました。サービス開発にあたっての想いは、こちらの記事にまとめているので、ぜひ目を通して頂けると嬉しいです。
そして、企業にとっても一緒に働くフリーランス・副業のみなさんとしっかりと契約書を交わすメリットは実はかなり大きいのですが、残念ながらその重要性があまり浸透していないなと感じる場面も多くあります。
今回は「なぜ企業はフリーランス・副業ワーカーと契約書を交わすべきなのか」ということを、日米で人事として働いてきた私、岩井 エリカの視点でお伝えしていければと思います。
契約書締結をしたほうがいい理由
JTUC(日本労働組合総連合会)が行った「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2021」によれば、取引先事業者から「必ず契約内容の明示がある」と答えたフリーランスは約3割でした。そして、「この1年間にフリーランスの仕事でトラブルを経験した」人は約4割にのぼります。
トラブルの内容は、「報酬の支払いの遅延」「一方的な仕事内容の変更」が最も多く、「不当に低い報酬額の決定」なども。これらの原因として、「契約関係の曖昧さもトラブル遭遇率の高さの一因となっているのではないか」と報告書では述べられています。
この調査ではフリーランスが経験したトラブルを取り上げていますが、契約内容が曖昧なまま仕事を進めることは、企業にとっても大きな不安材料となります。面談時に口頭で説明して、その場ではお互いに了承しても、記憶に残らなかったり理解があやふやだったりすることはよくあるからです。
私が以前働いていたアメリカでは、いろいろな国の人がいてバックグラウンドもさまざまなので、書面で同意を得る必要があり、契約書を交わすのが一般的でした。ところが、日本では「暗黙の了解」という言葉が示すように、口にしなくても当事者間で理解が得られているものとして物事が進んでいきがちです。けれど、暗黙のうちに仕事が進んでいき、後になって意思の疎通ができていなかったことに気づいた経験がある人もいるのではないでしょうか?円滑に仕事をしていくためには、同じ文化を共有する人とでも、書面を作成しておくのがベストです。
また、契約書を締結せずに後でトラブルになった場合、ベースとなるものがないため収拾がつかなくなることがあります。そういう状況を回避するためにも、契約書を締結しておくと安心です。
大事なのは、契約書を作ることで、やってもらうべき業務内容や要望を文書化することです。契約書に業務内容がしっかりと記載されていれば、企業はそれを元にフリーランスの仕事ぶりを評価することもできます。業務内容に記載されている仕事ができていなければ、相手に契約書を確認してもらって改善を促すことも可能になる、ということです。
フリーランスのほうも文書化されていれば仕事内容が理解しやすく、仮に企業側の要望に応えられなかった場合も、何ができていないかを把握するのが容易になります。「最初にどういう契約を交わしたか」を確認できる契約書はお互いにとって大切なものなのです。
契約書の代わりにメールではダメなの?
「契約書を作らなくても、打ち合わせで確認したことをメールで送信すれば十分では?」という意見もあるかもしれません。ですが、契約書のように細かい部分まで網羅した内容のメールを送るのは、かなり難しいはず。メールだと業務内容や報酬、支払い方法、納期のような基本事項だけで、契約の解除などにまで踏み込むことは稀ではないでしょうか。
あってほしくはないですが、仕事がうまくいかなくてフリーランスや副業で働く人との契約を解消する場合のことも考えておく必要があります。もしも、契約の解除について書かれた文書がなく、双方が同意できなければ裁判になることもありえるのです。
メールは文章になっているので、口頭だけで済ますよりはいいかもしれません。でも、ビジネスにまつわる法律のプロが必要な項目をあげたフォーマットに沿って契約書を作れば、より完成度が高くなり、安心して仕事を依頼できます。
おすすめの契約書締結までの手順
では、契約書締結までの流れを簡単に説明していきます。
まず打ち合わせで、企業(発注者)はフリーランス(受注者)への要望を明確に伝えます。ここでは企業側が、業務範囲や納期、報酬、支払い条件などについて口頭ですり合わせ、フリーランスの意見を取り入れながら条件の調整をしていきます。
それを元に契約書の原案を作ってフリーランスに送り、改めて内容を確認してもらいます。その際に調整が必要であれば、再度話し合って修正を加えます。そして、双方が納得したら契約締結です。ちなみに、ここでは企業が契約書を作成する前提で説明しましたが、契約書を作るのは企業、フリーランスのどちらでもかまいません。
このようにして業務委託契約を結びますが、中でもとても重要なのが最初の打ち合わせです。最初の打ち合わせの場で、業務の範囲や成果物、納期、報酬などについて決めておくのは最低限必要なことですが、契約期間の更新や成果物の所有権などについても話しておくべきです。
また、「週に一度ミーティングに参加してほしい」とか、「このメッセージングアプリでコミュニケーションをとりたい」などの要望があれば、それについても話して契約書に記載しておくとよいと思います。相手が契約書を見た時に、まったく知らないことが記載されていた、ということだけはないようにしましょう。
そして、その話し合いの中で信頼関係を築くことも、契約と同じくらい大事だと私は思っています。ある程度信頼感がないと、質問をしたり意見を言ったりもしにくいですよね。信頼感は安心感につながり、それが仕事にも影響してきます。契約する前にコミュニケーションがしっかりとれているかどうかで、その後の業務の進行も大きく変わってくるのです。
なので、最初の打ち合わせは、お互いが納得するまでじっくり時間をかけて進めてみてください。そうすれば、契約書を締結するタイミングでは話し合った内容を確認するだけですみます。
「フリーランスと一緒にビジネスを加速させる企業」を増やしていきたい
現在の世界のトレンドは、「柔軟なジョブ型雇用で、フリーランスの力を最大限活かす」方向にシフトしています。この大きな流れの中で、企業が優秀なフリーランスや副業ワーカーの力を借りることは、これまで以上に増えていくはずです。
ただ、現実にはフリーランスと働きたいと思っても、発注の仕方や契約の方法がわからなくて躊躇してしまう企業もあります。法務担当者が社内にいない、契約書の作成に慣れていないなどの理由から、口頭で説明しただけで仕事を依頼してしまっている企業もあるはずです。
もっと簡単に、もっとスムーズにフリーランスと契約することができれば、日本企業のビジネスはさらに加速していくと私は思います。それを後押ししたくて、私たちは「契ラク by Sollective」を作りました。
「契ラク by Sollective」は、フリーランス・副業ワーカーにお仕事をお願いする際に必要な「準委任契約」と「請負契約」の両方の業務委託契約書を提供しています。
フリーランスや副業で働く人の採用を検討している企業のみなさまは、この機会に「契ラク by Sollective」を活用してビジネスを加速させていってください。
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Sollective は、「トップフリーランスの力でビジネスの可能性を広げる」をモットーに、やりがいと能力に見合った仕事を求める優秀なフリーランス・副業ワーカーと、多様化するビジネスの即戦力となるエキスパートを探している企業を直接つなぐプラットフォームです。もし、すこしでも興味を持っていただけたら、ぜひ登録いただけると嬉しいです。
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