【フリーランスの仕事論】デザイン言語は世界共通。デザイン思考を駆使して、日本のマーケットにインパクトを与えていく Article Image

【フリーランスの仕事論】デザイン言語は世界共通。デザイン思考を駆使して、日本のマーケットにインパクトを与えていく

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完全審査制のフリーランスプラットフォーム Sollective(ソレクティブ)には、やりがいのある仕事を求める優秀なフリーランスが多数登録しています。そんな Sollective で活躍中のフリーランスは、経歴もバックグラウンドも人それぞれ。

今回お話を聞くのは「デザイン思考ファシリテーター」という、すこし聞き慣れない肩書きをお持ちの松尾洋子フレドリカさん。彼女の仕事は「デザイン思考」を活用しながら企業のコンサルティングや、ワークショップを通してビジネスを推進していくのだそう。

この職業は 松尾さん自身、3人しか日本国内の同業者を見つけられていないと語るほど珍しい仕事でもあります。その気になる仕事内容やフリーランスになったいきさつ、デザイン思考ファシリテーターの今後などについて伺いました。

松尾洋子フレドリカ/デザイン思考ファシリテーター 2016年よりデロイト トーマツ コンサルティングに在籍し、ビジネスアナリストとしてさまざまなプロジェクトに携わる。2018年にフリーランスの「デザイン思考ファシリテーター」として独立。企業やスタートアップ、NPOなどのクライアントに、クリエイティブなワークショップを行っている。 Sollective プロフィール:https://www.sollective.jp/freelancer/YokoFM66

ワークショップを通してクリエイティブな商品開発を

—— 松尾さんの肩書きである「デザイン思考ファシリテーター」は、あまり聞かない職業ですがどういうお仕事なのですか?

簡単に言うと、デザイン思考を使って各会社のイノベーション商品の開発プロセスをサポートするコンサルティングです。

やりたいことや作りたいものがあっても、どこからスタートしていいか分からないという企業に個別のプログラムを作って、共同開発のような形でワークショップを提供しています。海外ではワークショッパーと呼ばれることが多く、ここ4〜5年で人気になっています。

—— 海外では増えているんですね。日本ではデザイン思考という言葉もまだ浸透しきっていない印象ですが、どういう考え方なんでしょうか。

私は、クリエイティブに問題を解決するプロセスがデザイン思考だと思っています。

消費者の立場で製品やサービスについて考え、いろいろな思考プロセスを使いながら問題を捉え解決策を探します。たとえば、設計会社のように設計図を作ってみるとか、他社がやっているプロセスを当てはめてみるとか。

デザイン思考の大きなポイントは、ロジカルに問題提起して解決策を見つけるだけでなく、そこにクリエイティブな方法を取り入れることで、ユーザーの思いを可視化してユーザーの立場で考えられる点だと思います。

—— なるほど。ワークショップを終えたら、そこで仕事は終了するのですか?

それはクライアントによりますね。私はアイデア出しの段階から携わることが多くて、ワークショップだけで終わることもありますが、次の商品化のフェーズに入ったり、リサーチに関わったりすることもあります。

—— ワークショップはどういう風に進めていくのですか?

デザイン思考のプロセスは、以下のように進めていきます。

1. 理解 (Understand):課題・問題を理解 2. 発散(Diverge):課題に対するソリューションのアイデア出し 3. 決定(Decide):検証したい要素や1の理解を深め、プロトタイプ作成のためのアイデアを決定 4. 試作(Prototype):ソリューション検証のための、低コストで簡単な試作品を作成 5. 検証 (Test & Validate):作成した試作品でアイデアを検証

ワークショップもこの流れに沿って進めますが、この5つのプロセスを何度も繰り返すこともあります。

たとえば、想定するユーザーとその課題を決めてアイデアを出し、プロトタイプを作ってテストまで進んだとします。その時に、「自分たちが想定しているユーザーは、実際には存在しない」ということに気づくことがあるんですよ。

そうすると、どういうユーザーかを再度理解するために、ユーザー理解の手法のひとつである共感マップに戻ります。つまり、デザイン思考のステップ1に戻り、理解を深めるためにさらにリサーチを行ったり、調べなければいけないことを集めたりするのです。そういう風に各プロセスを行ったり来たりしながら、本当にユーザーが求めているものに商品を近づけていきます。

多くの企業はそのプロセスを省略してロジックだけで進みがちです。でも、元のアイデアがよくなければ、制作のお金と時間ばかりがかかってしまいますよね。なので、デザイン思考のワークショップでアイデアの検証を早い時期にすることは有益だと思います。

流れに乗り、チャンスをつかんでフリーランスに

—— このお仕事を始める前は、企業で働いていたのですよね?

はい、中学から大学まではアメリカで過ごしましたが、日本のマーケットがこれから面白いということで就職の時に戻ってきて、デロイト トーマツ コンサルティング(以下デロイト)に入社しました。デロイトでは、ビジネスアナリストとして社内のいろいろな部署とプロジェクトに携わっていました。

その時に、クライアントから社内でワークショップをしたいという依頼があって、それがきっかけでデザイン思考の世界を知りました。

—— そこでデザイン思考がピッタリ来たのですね。

元々自分の思考が、デザイン思考のプロセスに似ていたのだと思います。

それと、私は日本語と英語を話しますが、その間をつなげてくれたり不十分な部分を補ってくれるのが、デザイン思考の言語ではないかと思うんです。デザインというヒューマンテクノロジーは世界共通ですよね。デザインは、みんながやりたいことを作れる新しい言語だと考えています。

—— なるほど。その後、フリーランスになられましたが、何かきっかけはありましたか?

それが……実は私はフリーランスになろうと思ってなったわけではないんです(笑)。デロイトには2年間いましたが、私がやるべき仕事がどこか別のところにあるとなんとなく感じていました。それで辞職して、自分を見つめ直すためにオーストリアやハンガリー、ドイツ、オランダ、アルバニアなどを3カ月旅行しました。

その旅行中に友達から、「ある大手企業があなたのやっていることに興味があって、ワークショップをやりたいんだって」というメッセージが来たんですよ。それで、「ぜひやりたい」とメッセージを返したら、「帰国後、全部できるように準備しておくから」と返事が来て、実際に帰国したら仕事があったんです。本当に運とチャンスに恵まれたと思います。

—— では、その流れでフリーランスになったということですか?

はい、完全に流れに身を任せて独立してしまいました。でも、私は流れとチャンスはとても大事だと信じているので、そういうタイミングだったのかもしれません。

デロイトでの経験も、自分には必要なものだったと思います。当時は大手企業で素晴らしい勉強の機会を与えられていたのに気づいていなくて、日本語のレベルも低かったと思います。振り返ると未熟な自分がとても恥ずかしいのですが、たくさんのことを学べて、その時のお客さんのおかげで今があって、デロイトには本当に感謝しています。

—— すべてが今に結びついているのですね。ところで、フリーランスになってみて、困ったことなどはありましたか?

支払いが6ヵ月遅れたお客さんがいました。

—— え、それは辛い!

それまで会社勤めだったし、フリーランスになったばかりで相談する人もいなくて、どうしていいか本当にわからなかったです。そういう時に相談できる、フリーランスの横のつながりみたいなのがあるといいなと思いました。

—— そうですね。Sollective のコミュニティは、今後そういうこともフォローアップできるようにしたいと思っています。

行動することで、企業の雇用に対する意識を変えていきたい

—— 同業者は日本にいらっしゃるのですか?

以前にソーシャルメディアのコミュニティで探したら、日本では自分を含めてフリーランスで活動しているのは3名だけでした(笑)。今はもうすこし増えていると思いますが、日本ではまだ浸透していないですね。

でも、デジタルアプリケーションのマーケットが大きくなればなるほど、この手法が必要になるので、今後日本でも広がっていくと思います。

—— すごくニッチですね。ワークショップを個人で開始して、変わったことなどはありますか?

お客さんにはデザイン思考のプロセスを提供するだけでなく、それぞれにカスタマイズしてあげることで、本当に必要なものを提供できるということに気づきました。企業にいた頃は効率よく進めることを意識していましたが、必ずしもそうでなくていいのかなと。

たとえば、デザイン思考はアメリカで始まったものですが、自分が日本の文化に合わせてカスタマイズして、それでインパクトが与えられるのならそれでいいと思えるようになりました。以前はうまく乗れなかった波に、やっと乗れるようになったと感じています。

フリーランスでこの仕事を始めて今年で3年目なんですが、いまだにウェブサイトも名刺もないままで、お客さんの口コミや仕事関係のコミュニティを通してのみ依頼が来ています。

—— それって、すごいですね!今後、特にやっていきたいことはありますか?

ボランティアを積極的にやりたいですね。去年、新型コロナウイルス感染症の影響で、ワークショップが全部キャンセルされたことがあったんです。その時、悩んでいるよりは何かやろうと思って、インドの貧しいコミュニティーのために活動している NPO にボランティアとして参加しました。

そこでは、たくさん学ぶことがあったし、プロジェクトマネジメントのスキルなども身についたと思います。

—— フリーランスだと、比較的自由に時間調整ができるという利点がありますよね。

はい。そして、自分がパッションを持てることに取り組みやすいというのも、フリーランスのいいところだと思います。フリーランスだからこそ柔軟性を持って動けるという利点を活かして、いろいろな会社や NPO に持っているスキルやパワーを注げば、もっとフリーランスを雇いたいと思ってもらえるかもしれません。

そういう風に私たちが行動することで、もっとフレキシブルに雇用して、物事を変えていくという意識を企業に持ってもらえればと思います。

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Writer / Maki Watanabe Sollective:https://www.sollective.jp/freelancer/Maki Editor / Eri Yoshida Sollective : https://www.sollective.jp/freelancer/Eri Twitter : https://twitter.com/eri_riri Contributor / Erika Iwai Sollective : https://www.sollective.jp/freelancer/Erika Twitter : https://twitter.com/IwaiErika

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