組織改革したい企業のためのフリーランス協業論。議論メシ黒田さん×エリカ対談
変化のスピードが速い現代、企業が成功するにはフレキシブルな組織改革が欠かせません。フリーランスとの協業は、その重要な選択肢の1つです。
とはいえ、すべての企業がフリーランスとの協業に慣れているわけではありません。そこで今回は、自らもフリーランスとして活動する傍ら、問いでつながるコミュニティ「議論メシ」を運営する黒田悠介さんと、ソレクティブ CEO の岩井エリカが、フリーランスと協業する際に押さえておくべき企業側のポイントを語ります。
🎙黒田悠介さん: 問いでつながるコミュニティ「議論メシ」主宰者。対話で課題を解決する「ディスカッションパートナー」としても活動するほか、新しいキャリア論を提唱する書籍『ライフピボット』を出版している。過去には経営者やキャリアコンサルタント、フリーランス研究家を経験。キャリア論を発信し続ける「メガネをかけたボウズ」。
🎙岩井エリカ: Imperial College London 工学部修士課程修了後、2010年に住友電気工業に新卒入社し新規技術の特許獲得等に貢献。その後渡米し UCLA Anderson School of Management で MBA を取得後、メガベンチャー Riot Games, Inc. で HR ビジネスパートナーを務める。帰国後は広告代理店の人材マネジメント統括を経て、フリーランスの人事コンサルタントとして独立。2020年にウォン アレンと株式会社ソレクティブを設立。
フリーランスと協業するとスピード感のある組織改革ができる
—— まず、組織改革をしたい企業がフリーランスと働く最大のメリットはなんでしょうか?
黒田:一番はスピードだと思います。フリーランスにサポートしてもらいながらチームを作ると、すばやくチームが作れるんですよね。
エリカ:そうですね。フリーランスは、新規事業の立ち上げにすごく向いていると感じます。8割がフリーランスというチームをまず作り、うまくいったらだんだんと社内で巻き取っていくというやり方は、新規事業に勢いがつけられるのでおすすめです。
黒田:あとは「今すぐやらないといけないけど、社内に誰もできる人がいないタスク」というのはフリーランス向きですね。
エリカ:わかります! 中途採用に半年ほどかかる企業は多いですよね。でも、最適な人が見つかるまで半年も待つのは、ビジネスとしてすごくもったいない。それならフリーランスと協業して組織改革する方がはるかにいいのではないでしょうか。
—— フリーランスをチームに入れることに不安を持つ企業もまだまだあります。
黒田:現場でよく言われるのはセキュリティの課題ですね。「情報を漏らされたらどうしよう」という心配です。でも、フリーランスはひとつの失敗が次の案件に響いてくるので、ほとんどの人はセキュリティ意識がすごく高いです。
エリカ:会社員以上に気をつけている人も多いですよね。こういったフリーランスへの誤解はどんどんなくしていきたいです。
—— コロナ禍で働き方も大きく変わりつつありますが、企業とフリーランスの協業は進んでいるのでしょうか?
黒田:リモートワークを導入されている企業では、前よりもフリーランス協業が進んでいると感じます。リモートだと、正社員もフリーランスも画面越しに仕事を任せることになるので、あまり違いがないんです。
エリカ:そうですね。メールやチャットでのコミュニケーションが増えた結果、フリーランス側が(チャットを通じて)社内の情報を取りやすくなったと思います。情報があると社外からでも積極的に意見を出しやすいし、企業側もフリーランスに意見を求めやすくなったと感じます。
その結果、リモートワークが進んでから、エンジニアやデザイナーといったクリエイター職のフリーランスだけでなく、事業開発や営業、マーケティングなどビジネスに関わる職種の募集も増えています。
フリーランス採用で一番重要なのは「スキルセットの確認」
—— 企業がフリーランスと協業するコツについてお伺いしたいのですが、どういう企業がフリーランスとの協業に向いているのでしょうか?
エリカ:一番重要なのは、社員の方が社外の人と働くことに積極的なマインドをもっているかどうかですね。
黒田:そうですね。業界や規模はあまり関係ないと思います。
—— 企業が、優秀なフリーランスをうまく採用するコツはありますか?
エリカ:初めてフリーランスを採用する場合は、「会社として初めての試みです」ときちんと明記するのがおすすめです。そのうえで、コミュニケーションしながら業務や条件を決めていく姿勢を見せるといいですよね。
黒田:よくあるのは、社員の方や既に働いているフリーランスの知り合いに声をかけてもらう「リファラル」ですよね。ただ、フリーランスどうしのリファラルはスキルチェックがしにくいという問題があります。
慣れていない企業の場合は、Sollective や (黒田氏が運営するフリーランスコミュニティの)FreelanceNow のようなプロを間にはさむ方がミスマッチが起きずに済むはずです。
—— フリーランスの採用面接ではどんなことをチェックするべきでしょうか?
エリカ:正社員の面接の場合はカルチャーフィットを重視しますが、フリーランスは正社員のように社内で育成しないので、カルチャーよりコミュニケーション能力のチェックの方が重要になりがちです。それから、私の場合は依頼する業務のスキルセットは必ず確認するようにしています。
黒田:僕もスキルセットの確認は非常に重要だと思っています。過去の実績を聞くだけではなく、そのプロジェクトでどこを担当したか、何人チームでやったのか、最終的なアウトプットはどうだったかなど、詳細に確認した方がよいと思います。
エリカ:あまりフリーランスに慣れていない企業の場合は、一旦経験豊富なシニアレベルのフリーランスを採用するという方法もあります。ディレクション的な視野を持っていれば、こちらが慣れていなくても向こうがアドバイスしてくれるんですよね。そういったディレクションの経歴のチェックも大事かもしれません。
フリーランスをチームの一員として扱う
—— フリーランスに能力を発揮してもらうため、企業側が気をつけるべきポイントはありますか?
エリカ:うまくいっている企業は、フリーランスをチームの一員として扱っていると感じます。必要な社内の情報を提供して、バックグラウンドも共有して、社員とフリーランスの間でちゃんと信頼関係を作っているんです。
黒田:契約書できちんと業務を決めるというのも重要だと思います。企業側が慣れていないと、フリーランスへの仕事の切り出し方があいまいになりがちなんですね。
それで、いざ業務のときに「この情報を教えていいのかな?」と不安になって情報共有が少なくなったり、仕事をふるタイミングがずれてしまったりします。最初からきちんと範囲を決められるといいですよね。
—— 契約書に関する話し合いは、フリーランス側も苦手というケースが多そうです。
黒田:頻繁でなくていいので、定期的に契約を見直す機会を作っておく方がいいんじゃないでしょうか。その方がお互いにストレスを溜めずに済みますよね。
エリカ:そうですね。お互いに契約を見直すタイミングがあった方が、企業とフリーランスが対等に話せて、パフォーマンスにも繋がってくると思います。
—— 最後に「今後のフリーランス業界がこうなって欲しい、こうしていきたい」というご希望があればお聞きしたいです。
黒田:「個の時代=インフルエンサーのように有名じゃないと食べていけない時代」というイメージがあると思うんです。でも、実際は有名でなくても、プロフェッショナルなら自分のやりたいことでちゃんと食べていけるんですよ。そういう「フリーランス=プロ」というイメージがもっと広まって、業界がもっと盛り上がって欲しいですね。
エリカ:私たちソレクティブは企業とフリーランスのマッチングからスタートしましたが、今後は契約が成立したあとのサポートも充実させていきたいと思っています。それから、企業のフリーランスに対する理解も変えていきたいですね。ハードルはありますが、これからもフリーランス業界を盛り上げていきたいです。
—— 本日はありがとうございました!
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