【フリーランスの仕事論】CTO からフリーランスへ。自分の力を確かめるために、チャレンジしてみたかった
完全審査制のフリーランスプラットフォーム Sollective(ソレクティブ)には、やりがいのある仕事を求める優秀なフリーランス・副業人材が多数登録しています。そんな Sollective で活躍中のフリーランスは、経歴もバックグラウンドも人それぞれ。
今回はフルスタックエンジニア & IT コンサルタントとして活躍中の金本貴志さんに、フリーランスになってよかったこと、自分の強み、仕事をする上で大切にしていることなどについてお聞きしました。
フリーランスになって、自分自身の力を試してみたかった
—— まず、これまでの経歴を教えてください。
大学院を修了して富士通に入社し、携帯電話端末のソフトウェア開発に約4年間従事していました。ですが、大企業での働き方が肌に合わず、名古屋にあるカルテットコミュニケーションズ(以下カルテット)というベンチャー企業に転職しました。
カルテットの代表が僕の大学時代の同級生なんですが、SNS などで見ていると毎日楽しそうに仕事をしていて、羨ましく思い僕のほうから声をかけたんです。そして、常務取締役 CTO という形で迎え入れてもらい、約8年間在籍しました。
—— 8年間 CTO をされた後にフリーランスに…!? なぜそのような決断をされたのでしょうか。
ありがたいことに8年間で会社は急激に成長し、それに伴って僕の CTO としての役割もどんどん変わっていきました。最初は CTO とは言え「1人目エンジニア」でもあったので、自分でゴリゴリ手を動かしてモノづくりをしていました。それが、組織化していくにあたってどうしてもマネジメントに集中せざるを得なくなっていきました。そうして8年走り抜いて改めて振り返ってみると、最初の何もない状態から新しいものをこの手で生み出していた頃が一番楽しかったなと思ってしまったんです。
「カルテットの成長を本気で応援したいけど、僕個人の人生の目標とはズレがあるのではないか」「辞めることでカルテットに迷惑をかけるのは嫌だけど、こんな違和感を持ったまま役員のポストに就き続けることのほうが不誠実なのではないか」、そんな葛藤に苦しんだ末、やはりカルテットのためにも、僕自身がカルテットを好きでいるためにも辞めるのが一番だという結論になりました。
—— そのときに別の企業に入るのではなく、フリーランスを選んだのはどうしてですか?
会社員、会社役員とキャリアを歩んできたので、どうせなら今までしたことのない働き方をしてみたいと思いました。会社の看板なしで自分の力がどれくらい通用するのか試してみたかったというのもありますし、変化の激しい時代を生き抜くためにもっと「稼ぐ力」を鍛えておきたいという気持ちもありました。
苦手なのは、他人のペースに合わせて働くことだった
金本さんの作業スペース。指向性マイクと大光量照明でオンラインMTGも快適な環境なのだとか。
—— 現在はどんなお仕事をされているのでしょうか?
Web エンジニアと IT コンサルタントの二本柱で活動しています。エンジニアとして Web システムの開発を請け負いや業務委託でやらせていただいたり、社外 CTO や技術顧問といった形で、エンジニアの採用や教育なども含めた技術経営全般についてコンサルティングをさせていただいたりしています。
—— 実際、フリーランスとして働いてみてどうでしたか?
ありがたいことに今のところお仕事はいただけていますし、自分としてはお客さんによい仕事をご提供できているという満足感も得られています。ただ、それより何より、僕にはフリーランスエンジニアという働き方がとても性に合っていて毎日が最高に幸せです(笑)。
—— どういう風に合っているんですか?
自分のペースで働けるのがとにかく楽なんですよね……。毎朝ちゃんと7時に起きる、毎日会社に行って人と話すといったことが、自分ってこんなにも苦手だったのかと、フリーランスになってみて初めて気づきました。逆に今まで十数年間もよくその働き方を続けてこられたなと感心しています(笑)。
あ、もちろん状況次第でお客さんの都合に合わせたり無理を聞いてあげたりといった融通は普通にきかせますよ!恒常的に他人のペースを強制されるのが極端に苦手ということなんだと思います。
—— フリーランスになると生活に気持ちを向ける比重が大きくなるので、自分自身について気づけることが多いと思います。
そうですね。僕はずっと自分のことを「働くことが嫌い」な人間だと思っていたんですが、フリーランスになってみてそれは間違った思い込みだったと気づきました。働くことが嫌いなのではなく、他人のペースに合わせて働くことが嫌いなだけだったんです。
自分のペースで働けているときって、仕事に追われているという感覚があまりなくて、仕事をしている時間そのものを楽しめていると感じます。僕の場合、自分が楽しく仕事に向き合えるということを何より大事に考えているので、正直お仕事も「自分が楽しくやれそうか」という基準で選ばせていただいている面は大いにあります。それもあって、今はこれまでの人生の中で一番仕事を楽しめているなと思います。
もちろん仕事を選ばせていただくためには、それだけ求めていただける自分でいることが必須なので、楽をしたいと言いながらも実は陰で色々と努力はしています。逆に言ってしまえば、それさえ苦にならない人ならフリーランスは最高の働き方なのかもしれません。
モノづくりの喜びを追求していきたいから、提案はしっかりとやる
—— 金本さんの強みはどういうところですか?
もし一言で言うなら、「エンジニアとしてのスキルとコミュニケーション能力が両方高い」ことかなと思います。ヒアリングや分かりやすい説明がとても得意なので、たとえば受託開発でシステムを作る場合、お客さんの複雑な業務フローを丁寧に紐解いて確実に使えるシステムに仕上げるといったことが、平均的なエンジニアよりは上手くできると思っています。
—— 技術力だけでなく、お客さんの話を聞く力や提案する力というのも重要なのですね。
すごく重要です。技術は「どう作るか」の話ですが、お客さんが求めているのは「何を作るか」、もっと言うと「それによって事業がどう良くなるか」なので、そこを疎かにしちゃうと役に立たないものを上手に作ってしまうことになりかねないんですよ。
ただ、こんなことを言いつつも、僕個人としては仕事の中で一番楽しい時間はやっぱりコードを書いてるときなんですけどね。
—— えっ!? お客さんへの提案が得意なのに、一番楽しいのはコードを書くことなんですか?
はい。上手い設計・上手いコードでお客さんの課題をエレガントに解決できたなと感じると、めっちゃアドレナリンが出るんですよ(笑)。なんなら、その楽しい時間を増やすためにお客さんの要望を最初にきちんと整理して、できるだけ「あとは作るだけ」に近い状態を作ることを頑張っている感じかもしれません。
自分が作ったものでお客さんが喜んでくれるというのは、作り手としてこの上ない喜びではありますが、実はそのもっと手前に「上手に作れて気持ちいい」みたいな原始的な喜びがあるなと思っていて、さっきの話とは矛盾するようですが、個人的には結構それも大事にしてたりします。
—— なるほど。日々新しい言語や技術のアップデートがあるエンジニアにとって、提案からコードを書くところまで一気通貫でやれる金本さんのようなキャリアの歩み方は、ひとつのロールモデルになるのではないかと感じます。
以前はエンジニア35歳定年説なんていうのもありましたし、「この世界で生き残っていくためにどうするか」というのは、エンジニアの方なら誰しも考えていることだと思います。僕もあれこれ考えながら自分が価値を発揮できる領域を模索してきた結果として今がある感じですし、やり方は人それぞれだとは思いますが、何かの参考になれば嬉しいですね。
—— 金本さんがエンジニアとして「この世界で生き残っていく」ために、大切にしていることをぜひ教えてください。
実際、技術の進歩にキャッチアップしていくのは若い人のほうが得意だと思います。でも、当たり前ですけどエンジニアの仕事って技術を覚えることではなくて、それを使ってお客さんに成果をもたらすことなんですよね。
お客さんは業務のプロではあるけどシステムのプロではないので、エンジニアが業務をきちんと理解した上で「どうシステム化するのが一番よいか」あるいは「システム化の文脈から見て業務自体に変えたほうがよいところはないか」ぐらいの視座で話ができると、お客さんにとってすごく価値があるんじゃないでしょうか。
日々の仕事の中でそういう意識をしっかり持つ、書いているコードの向こう側にお客さんやエンドユーザーの存在をきちんと想像する、みたいなことが結局のところ大切なのかなと思います。
サバイバルに必要なのは「市場価値を正しく認識する」こと
—— 次に、フリーランスとしてのキャリアについても伺いたいのですが、金本さんがフリーランスとして仕事をする上で心がけていることはなんですか?
いろいろありますが、強いて1つ挙げるなら、自分を安売りしないことと、それでもなお安いと思ってもらえる仕事をするということです。
まず、プロとしての自覚を持つという意味で、自分の仕事に対して然るべき対価を要求することってすごく大事なことだと思うんです。でも、そこにしか意識が向いていないと、長期的にお客さんから求めてもらえなくなってしまう。なので、それだけの金額を請求してもなお、お客さんに安いと思ってもらえるような質の高い仕事をする、ということを心がけています。
—— 安売りをせずに、安いと思ってもらう……! エンジニアが優秀だと、お客さんの要望が曖昧でも意図を汲み取って作れるので、逆に簡単な仕事だと勘違いされることはありませんか?
確かにそういうケースはよくあると思います。僕の場合は、お客さんの要求のどこが簡単でどこが難しいのか、それに対して自分ならどれぐらい上手に対処できるのか、といったことをお客さんに積極的に伝えるようにしていますね。
加えて、初めてのお客さんには競合他社さんと相見積りをとってほしいといつも言っています。そうしてもらったほうが僕が言ってることが嘘じゃないというのがすぐに分かるので。
—— 自分の市場価値を客観的に認識できているのですね。
そうですね。自分の市場価値が分かっていないと、自信を持って値段をつけられないので。たとえば、提示した見積金額についてお客さんから「高くないですか?」と質問されたときに、「そこはこういう理由でこれだけの工数がかかるので、どうしてもその金額になっちゃうんです」ときちんと説明できるかどうかというのはとても大事なことです。
そこが曖昧なまま適当に値付けしてしまっていると、「高くないですか?」と言われたら言い返せなくて値段を下げることになるかもしれないですし、そもそも本当に仕事内容にそぐわない高い金額を提示してしまっているかもしれません。値付けの根拠をきちんと自分の中に持つこと、そしてそのためにも自分の市場価値を正しく認識すること、これは生き残っていく上で重要な1つのスキルだと思います。
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