日本で働く外国人フリーランスの挑戦【インタビュー】
スキルさえあれば、自分が好きな場所で働くことも可能になるフリーランス。最近流行っている地方と東京の2拠点生活はもちろん、リモートの仕事を持って海外へ旅行するという選択肢も身近になってきています。好きな場所で働きたい人や、1か国に縛られずさまざまな経験を積みたいと思っている人にはまさにぴったりでしょう。
インドネシア出身のモーションデザイナー、Baswara(バスワラ)さんもそんな生き方を実践する1人です。
今回は、インドネシア・イギリス・日本という3か国で就業経験のある Baswara さんに、なぜ海外で働こうと思ったのか、そして見知らぬ土地でどうやって仕事を始めたのかなどを聞きました。日本を拠点にする外国出身のフリーランスの皆さんはもちろん、今後海外に挑戦したい人もぜひ参考にしてください。
モーショングラフィックを学ぶためにイギリスそして日本へ
—— 現在どんな仕事をしていますか?
モーションデザインの仕事をしています。モーションデザインとはアニメーションとグラフィックデザインが混ざったもので、CGに動きをつける仕事です。
具体的には、CM や映画のオープニング VTR、イベント用の動画の作成などで、最近は採用動画や会社の紹介動画も多いですね。映像業界はいま盛り上がっているため、モーショングラフィックの仕事はとてもおもしろい時代だと思います。
現在は東京を拠点に、日本の企業でフルタイムの契約社員として働きつつ、フリーランスとしてインドネシアやイギリスの企業と仕事をしています。その日本企業では当初パートタイムとして働いていたのですが、運よくフルタイムのオファーがあったので応じることにしたんです。
—— 日本で働く前のキャリアを教えてください。
インドネシアの大学でアニメーションを学んだあとテレビ局で働き、今度はイギリスの大学院でモーションデザインについて学びました。それからロンドンで1年ほどフリーランスをしたあと、インドネシアに戻って友だちと会社を作り、そこで4年間仕事をしていました。
日本に来たのは2020年です。
—— どうして日本で働こうと思ったんですか?
もともと日本の文化やアニメーションが好きで、日本のモーショングラフィックにとても興味がありました。クオリティが高く、インドネシアとは全然やり方が違います。
あとは、今から10年以上前に友人が『映像作家100人+100 - Japanese Motion Graphic Creators』という日本の本を貸してくれたんです。その本に感銘を受けていつか日本で勉強をしたいと思うようになりました。
実は小さい頃はあまり海外に興味がなく、イギリスや日本で働くなんて考えられませんでした。きっかけをくれたのは大学生の頃に参加した国際サークルです。そこで海外で働いている人たちの話を聞くうちに、違う国で働くというのがどういうことなのか具体的にイメージできるようになり、自分も経験してみたくなったんです。
そうして実際に複数の外国で仕事をしてみると、新しい文化に触れ、新しいスキルを身につけ、新しい人と出会うことができました。不安でしたが挑戦してみてよかったなと思っています。
違う国のやり方や文化を知っていることが自分の強み
—— 仕事をするためには語学の習得が必須かと思うのですが、勉強はどうしていましたか?
まず英語ですが、僕はインドネシアのジャカルタ出身のため、土地柄英語を話す人が多い環境で育ちました。
次に日本語の習得ですが、日本に来て最初の1年は岡山の語学学校に通っていたんです。英語がなかなか通じないため日本語しか使うことができず、勉強がはかどりましたね。当時は10時から16時まで勉強をしていました。
学校を出た今も日本の映像作品を通して日本語の勉強を続けています。特に是枝裕和監督の映画や脚本家の坂元裕二さんが手がけたドラマが好きです。
—— 日本で仕事をするうえで、大変だったことを教えてください。
最初の1年は日本語を話せなくて、全然友達ができませんでした。なので寂しかったです。
東京に引っ越してからは語学が上達したこともあり、自然と日本人の友達が増えました。そのほかにも東京にはインドネシア人のコミュニティがあったので交友関係が広がりましたね。
とはいえ外国で暮らすと言葉の壁や文化の違い、そして孤立感は常に問題になります。学ぶことはもちろんですが、現地の人となるべくつながるようにしたり、母国の友人や家族と連絡を取ったりするなど、快適に過ごすための努力は必要だと思います。
仕事面では、ロンドンでも東京でも動画作りの仕事の流れは一緒です。ただ絵コンテなど知らない用語がたくさんあり、最初はコミュニケーションを取るのに苦労しました。
—— インドネシアとイギリス、そして日本で働き方に違いはありますか?
インドネシアと比べると、日本ではみんな時間に正確だなと感じます。たとえば就業時間ですが、インドネシアでは5分や10分くらい遅れてもみんな気にしません。
ただイギリスも日本と一緒で時間はしっかり守るという文化だったので、僕の場合はすぐに日本のやり方に慣れました。
あとは、日本の方が手作業が多い印象です。たとえば以前日本のアーティストと仕事をしたのですが、彼が持ってきたイラストは手描きのもの。インドネシアは IT が進んでいるのでみんなコンピューターを使っています。日本ならではのやり方だなと思いましたね。
—— 外国で働いていたからこその強みはありますか?
日本では自分の意見を言うのが苦手な人が多い印象です。でもインドネシアもイギリスも、意見をどんどん出す文化。なので物おじせずにアイデアを出せる姿勢は僕の強みですね。
ほかにもインドネシアとイギリスの制作方法を知っているので、仕事に必要な新しいソフトを紹介したり、日本にはない手法を教えたりできるのも僕ならではだと思います。
夢で終わらせず仕事を取るためには、業界やトレンドの調査も必要
—— 今後の展望を教えてください。
現在ミュージックビデオに興味があるので、チャンスがあればぜひ作ってみたいです。
あとは、フリーランスとしてもっとたくさんの企業と仕事をしたいと考えています。フルタイムの契約社員の仕事は収入が安定するので精神的に余裕ができますが、フリーランスの方が自由度は高いですよね。それだけでも価値があると思うんです。
現在日本ではモーショングラフィックがとても盛り上がっているので、あと10年くらいは日本で学びたいですね。
—— 最後に、海外で仕事をしたい人へアドバイスをお願いします。
自分がどこの国に行きたいかはもちろん重要ですが、クリエイターの場合は自分の作品がその国に合うのかどうか、事前に調査をしておいた方がよいと思います。
僕自身、日本なら自分の作品ややり方で貢献ができそうという予測が立ったので行こうと決断できたんです。
マーケットや業界がどうなっているのかや、どんな作品が売れるのか、自分が貢献できそうかどうかなど、ぜひ具体的に調べてから挑戦してみてください。
—— 本日はありがとうございました!
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