フリーランスの業務委託契約書の作成方法は?契約の流れや注意点、おすすめツールも紹介
フリーランスとして活動する場合、企業との契約の際に業務委託契約書を作成・締結することが大切です。認識相違によるトラブルを回避するだけでなく、お互いの信頼感をつくることに役立ちます。
ですが、「業務委託契約書の作成方法が分からない」「どうやって締結すればいいの?」という悩みを持つフリーランスもいるのではないでしょうか。
今回は、フリーランス向けに業務委託契約書の作成・締結方法を解説します。
・クライアントとフリーランス、どちらが業務委託契約書を作るべき? ・業務委託契約書のテンプレートはあるの?
などの疑問を持っている方も、ぜひ参考にしてみてください。
業務委託契約書の必要性
そもそも、なぜ業務委託契約書は必要なのでしょうか? 業務委託契約書の意義・目的や、契約書を締結しないとどんなことに困るのかなど具体的にご紹介していきます。
■そもそも、業務委託契約とは何なのか?
業務委託契約書とは、業務を委託する側(委託者)と業務を委託される側(受託者)間での約束ごとを明記した書面です。双方が仕事をすすめるにあたり、それぞれの義務と権利を明確にし、文章で残しておくことが目的です。
業務委託契約書には、業務内容・報酬金額・支払いの方法・納期など諸条件を記します。お互い合意のうえで署名・捺印し締結するため、認識の齟齬を防ぐのに役立つのです。
基本的にフリーランスが業務委託契約書を締結するシーンでは、フリーランスが受託者となり、企業・団体・組織などが委託者となります。
近年、多様化する働き方のなかでフリーランスとなる人が増えました。同様にフリーランスを活用する企業も増え、業務委託契約書のニーズが高まっています。
■必要性1:トラブル回避
業務委託契約書は、なによりトラブル回避に役立ちます。諸条件が明確に記されており、お互いの署名・捺印があるため認識の齟齬が起きづらくなります。言った・言わない論によるトラブルや、「そういう意味だとは思わなかった」などの言い争いを防ぐことにもつながります。
また業務委託契約書があれば、後から条件を付け足されたり変更されたりするトラブルも防げます。イメージ通りの仕事をしてパフォーマンスを上げるためにも、業務委託契約書が必須だと言えるでしょう。
■必要性2:互いに信頼感が増す
業務委託契約書があると、お互いの信頼感が増します。口約束ではなく書面を介して約束するため、反故にされる心配を払拭できるのです。
また、「やり取りに慣れている」「丁寧な対応をしてくれる」というポジティブなイメージを与えられます。新規のクライアントに信頼してもらうためにも、また長く関係性を続けるためにも、業務委託契約書は締結すべきものだと言えます。
■必要性3:大手企業は契約書締結が義務
大手企業では、業務委託契約書の締結が義務付けられている場合があります。下請法の対象となっている場合や、トラブルや訴訟を防ぐため、社内規則で必須と定めている企業が多いことを知っておきましょう。
そのため、「業務委託契約書を締結したくない」というフリーランスは、大手企業の案件を請け負えない可能性があります。仕事の幅を増やすためにも、業務委託契約書に関する知識は仕入れておくべきものでもあります。
■必要性4:契約交渉を進める材料になる
完全に白紙の状態から手探りで新規業務の交渉をする場合、お互いに不慣れで時間がかかってしまう可能性があるでしょう。
しかし業務委託契約書のベースがあれば、気になる点・修正したい点などを相談しやすくなり、契約交渉をよりスムーズに進められます。
また、お互いの権利・義務・役割分担に関する相談も進みます。契約時のタイムロスを防ぎ、効率よく働くためにも業務委託契約書があった方がよいでしょう。
■必要性5:裁判で使う可能性がある
万が一大きなトラブルに発展し、損害賠償請求や知的財産権違反などの裁判が起きた場合、業務委託契約書が重要な資料になることがあります。
裁判所に業務委託契約書を提出すれば、客観性と合理性のある判断を下してもらいやすくなるでしょう。証拠のひとつとして使えるため、トラブル解決につながります。
反対に、業務委託契約書がなければ正確な判断はしづらいものです。場合によっては自分にとって不利益な判断がされたり、泣き寝入りせざるを得なくなったりする可能性もあります。自分を守るためにも、業務委託契約書は必ず作成・締結しておきましょう。
「契約書」のパターンは2種類
契約書には、いくつかのパターンがあります。それぞれの違いを知り、契約書の内容を作成・確認することが欠かせません。
この章では、契約の種類について詳しく解説します。
■フリーランスが締結するのは「請負契約」か「準委任契約」
フリーランスがよく締結する契約は、大きく「請負契約」と「準委任契約」に分かれます。
1つ目の「請負契約」とは受託者が業務を完成させ、その対価として委託者が報酬を支払う契約です。エンジニアやライター、デザイナー、製造業者などがこれに該当することが多いです。
フリーランス側は、依頼された業務を確実に遂行・完成させること、および成果を発揮することが求められます。期待通りの効果を得ることを目的とする契約であり、ミス・欠陥・誤作動があれば請け負ったフリーランス側に修正する責任が生じます。
最初に定義した要件を満たせなかった場合、損害賠償の対象となる場合もあるため注意が必要です。一方、発注側は成果物に応じて報酬を支払うことが求められます。
2つ目の「準委任契約」とは、業務の遂行に対する報酬の支払いを約束する契約です。フリーランス側は、依頼された業務を遂行することが求められます。あくまでも遂行することが目的であり、その結果として成果物が生じるかどうかは関係ありません。
たとえば、コンサルティングや広告宣伝などの結果、売上や利益が上がらなくても契約書に定められた業務を遂行していれば問題ない、ということになります。受注側と発注側が対等な関係性になりやすく、フリーランス側が自らの判断で業務を進められる場合が多いことが特徴です。
なお、法律行為を伴う場合は「委任契約」、法律行為を伴わない場合は「準委任契約」と分かれます。
例えば独占業務の多い税理士・弁護士・社会保険労務士などの士業や医師・看護師など、資格がないとできない仕事を伴う場合は「委任契約」となるため注意しましょう。
■都度契約書を交わすか、「基本契約+個別契約型」にするか
フリーランスが業務委託契約書を締結するスタイルは、2つあります。
1つ目は、都度契約書を交わすスタイルです。案件に合わせて毎回条件を見直せるため、内容が頻繁に切り替わる場合に便利でしょう。その分作成・確認に時間がかかるため、ある程度テンプレートを用意しておく必要があります。
2つ目は、「基本契約+個別契約」を交わすスタイルです。基本契約とは、すべての取引に共通する基本的な内容を網羅した契約のことを指します。毎回契約書を作って内容を確認する手間を短縮しやすく、長い付き合いとなるクライアントとの契約におすすめです。
個別契約とは、案件に合わせた詳細な条件を補足・補完する契約のことを指します。要件・納期・報酬など、都度変わる部分だけを見直す契約と言えるでしょう。
どちらがより利便性が高いかは、契約の内容や取引の頻度により異なります。最初は「都度契約型」から始め、頻度が増えたら「基本契約+個別契約型」にシフトするのが一般的です。
■クライアントが契約書を作らない場合、どちらが作るべき?
業務委託契約書を作るのが委託するクライアント側でも受託するフリーランス側でも、全く問題ありません。クライアント側に改めてお願いして作ってもらうことも、自ら契約書のベースを作り提示することもできます。
ただし、可能であれば自ら作る方法を模索してみるとよいでしょう。自分に優位な内容を盛り込んだり、契約交渉の主導権を握れたりする可能性が高いです。
実際の契約に至るかはお互いの合意によりますが、少しでもチャンスを増やしたいときは契約書の作成を担当してみましょう。
■契約書テンプレートは使ったほうが良いの?
テンプレートを使えば、内容に悩むことなく業務委託契約書を締結できます。ただし、インターネット上で取得できるテンプレートには法的に正しい内容であるか判定が難しいものも多く、十分吟味する必要があります。そのため、業務委託契約書作成ツールを活用するのがおすすめです。
Sollectiveが提供している「契ラク by Sollective」の場合、弁護士の監修のもと作成された契約書を無料で利用することができます。
項目の追加・変更・削除などのカスタマイズもしやすく、業務委託契約に関する知識が浅いフリーランスでも手軽にカスタムした契約書を作れることが魅力です。複数の契約をダッシュボード上で一元管理できること、約5分で業務委託契約書を作成できることも、手間の削減に貢献します。
※「契ラク」は、株式会社ソレクティブの商標または登録商標です。
業務委託契約の仕方と締結までの流れ
次に、業務委託契約を締結するまでの流れを紹介します。業務委託契約を初めてする方やクライアントとのトラブルが絶えない方は、改めてチェックしてみましょう。
■STEP1 契約内容の話し合い
まずは、契約内容の話し合いから始めます。
委託者である企業は、委託したい業務の内容・希望する納期・報酬の目安や予算などを提示します。受託者であるフリーランスは、内容に問題なければ合意し、調整が必要であれば相談するとよいでしょう。
聞いておきたい事柄があれば、双方早めに確認しておくことが大切です。無理に片方の都合ばかり押し付けようとせず、お互いにとってちょうどよいラインを探ることがコツです。
■STEP2 業務委託契約書の作成
契約内容の確認後、業務委託契約書を作成します。前述の通り、クライアント側・フリーランス側どちらが作成しても問題ありません。どちらかが既にテンプレートを保有していれば、手直ししつつ使ってもよいでしょう。
どちらにもテンプレートがない場合、先に紹介した「契ラク by Sollective」などの業務委託契約書作成ツールを使うのがおすすめです。請負契約と準委任契約どちらにも対応しているツールであれば、さまざまなクライアントとのやり取りに使えます。
■STEP3 契約内容の確認・修正
業務委託契約書が作成でき次第、内容を双方で確認します。話し合いをして決めた業務内容・納期・報酬を確認するほか、追加の文言や条文も確認しておくとよいでしょう。
特に、自分にとって不利な契約となっていないか確認し、気になる点があれば遠慮なく質問・相談することが大切です。お互いに気になる部分がなくなるまで必要に応じて修正・改善し、業務委託契約書を完成させます。
■STEP4 業務委託契約締結
ひな形ができたら、業務委託契約書の締結に進みます。
紙で業務委託契約書を交わす場合、業務委託契約書を作成した側が2部印刷するのが一般的です。テープもしくはホチキス等で製本し、ページがバラバラにならないよう(後から追加・修正されることがないよう)対策しておきましょう。
契約年月日を決め、2部の業務委託契約書にまたがる形で割り印をして署名・押印します。2部ある業務委託契約書は、それぞれ1部ずつ保管します。
近年は、オンライン上で契約締結できるツールも増えています。「契ラク by Sollective」はひな形を作り、そのまま先方に送信して内容の確認・署名を依頼できるため便利です。
電子署名機能を搭載しているツールであれば、わざわざ印刷・製本してコストをかけて郵送し合う必要がありません。特にフリーランスは自宅やコワーキングスペースで働いている人が多いため、オンライン上で手続きを完結できるのは大きなメリットとなるでしょう。
自分とクライアントにとって使いやすい方法を選択し、契約締結することが大切です。
業務委託契約書でチェックするべきポイントと注意点
最後に、業務委託契約を締結する際にチェックすべきポイントを解説します。特に下記項目は必ずチェックしておきましょう。
・業務範囲 ・報酬 ・支払いタイミング ・契約期間 ・再委託 ・秘密保持 ・著作権・知的財産権 ・キャンセル料・契約の途中解除 ・トラブルが発生した場合の責任の所在 ・債務不履行・損害賠償
ひとつずつ注意点も兼ねて紹介するため、「思っていた契約と違った」「こんなはずではなかった」という後悔を防ぐためにご確認ください。
■業務範囲
業務内容はもちろん、業務範囲もしっかり確認しておきましょう。可能な限り細かく業務内容を記し、齟齬がないかチェックします。
ここをきちんとチェックしておかないと、「依頼した仕事を遂行してくれなかった」とクレームを言われてしまう可能性があります。また、どんどん依頼内容が増えて負担が増大するなど、受託者が損するケースも考えられます。
特に、下記のような内容はしっかりチェックしておきたい項目です。
・保守業務の対応時間・曜日・休業の有無 ・修正・改善・復旧対応の有無 ・アップーデート対応の有無 ・定期的なミーティングの有無 ・定期的なレポート分析・提出の有無
業務内容が多すぎて書ききれない場合、「関連業務並びに付随業務の一切を含むものとする」もしくは「その他、甲乙間で別途合意した業務を含むものとする」と記すのが一般的です。
業務を進めているうちに、新たに必要な作業が増えることも多いです。ある程度臨機応変に対応できる幅を残しておけば、双方win-winな契約となるでしょう。
■報酬
報酬に関する項目は特に後々のトラブルに発展しやすいため、念入りに確認します。総額計算か単価計算かなど、報酬の設定方法は下記の通り多岐に渡るため要注意です。
・総額計算(合計〇〇円、総額〇〇円、など) ・単価計算(1枚〇〇円、1件〇〇円、など) ・時給計算(稼働時間〇時間につき〇〇円、など) ・成果計算(入会1人につき〇〇円、契約金額の〇〇%、など)
どの場合でも、報酬の算定根拠を併記するのが理想です。算定に締め日がある場合は、「月末締め15日払い」「10日締め末日払い」など締め日と支払いの時期を明記します。
■支払いタイミング
報酬は、金額と同じく支払いのタイミングについても確認が必要です。一般的には以下のタイミングの翌月や翌々月に支払われる場合が多いです。
・作業クオリティに問題がないと検収されたタイミング ・作業が完了したタイミング ・サービスがリリースされた(公開された)タイミング
一括で支払うのか、分割で支払うのかも盛り込んでおくとよいでしょう。代表的な分割の方法として、下記3つが挙げられます。
1. 完了時に一括で支払う 2. 着手時と完了時の2回に分けて支払う 3. 着手時・中間時・完了時など3回以上に分けて支払う
「想定していたタイミングで報酬が支払われない」「求めるレベルに達していないのに報酬ばかり急かされる」という齟齬は、大きなトラブルに発展する可能性があります。後々の信頼関係に響くことも多いため、「始めが肝心」と捉えて契約締結時に確認しておいましょう。
■契約期間
契約期間も、あらかじめ定めて業務委託契約書に盛り込みたい項目です。
あらかじめ契約期間が明確に決められている場合、終了時期を記載します。業務の進捗に合わせて変更する可能性がある場合は、「当該業務が終了するまで」と記しておくとよいでしょう。
ただし、いつが「終了」に当たるのか齟齬が生じる可能性があることに注意が必要です。「支払いが完了するまで」など明確に契約が切れるタイミングを書き、誰が見ても分かりやすい業務委託契約書にするのが理想です。
また、自動更新の有無について定めるケースもあります。ルーティンで発生する業務の場合、自動更新の決めごとを設けてもよいでしょう。
■再委託
再委託とは、委託者から受けた業務をさらに他のフリーランスやアウトソーシングサービスに委託することを指します。いわゆる「二次請け」「三次請け」をしていいか、に関する項目とイメージしておくとよいでしょう。
再委託のメリットは、下記の通りです。
【フリーランス側のメリット】 ・業務を効率よく回せる ・実働時間を短縮できる ・自分が体調を崩したときなどのリスクヘッジができる
【クライアント側のメリット】 ・複数のフリーランスが参画するためクオリティが上がる ・納品のスピードが上がる ・ボリュームが大きい仕事でも任せられる
しかし、デメリットもあるため安易に再委託を考えるのは危険です。
【フリーランス側のデメリット】 ・再委託先を慎重に選定する手間がかかる ・納期遅延・クオリティダウンの責任が自分にかかる ・再委託にコストがかかる
【クライアント側のデメリット】 ・自社情報の漏洩リスクが高まる ・ノウハウ・ナレッジが流出する ・業務の進捗状況が見えづらくなる
再委託を避けたい場合、業務委託契約書上に再委託禁止と明記するか、承認を得た場合のみ許可すると記すなど対策が必要です。または全面的に再委託を認めず、委託先の制限を設けるなど工夫するのもよいでしょう。
■秘密保持
業務のため交換せざるを得ない社外秘情報・個人情報・機密情報は、お互い適切に管理する必要があります。故意に流出させた場合はもちろん、盗難・紛失・書き換えによる損害が生じた場合、大きな信用問題につながりかねません。
損害賠償請求に発展する可能性もしっかり見極めたうえで、秘密保持に関する項目を定めていきましょう。
近年、業務委託契約書とは別に秘密保持契約書(NDA)を作成・締結することも増えています。秘密保持契約書(NDA)では、主に下記のようなことを定めます。
1 秘密情報の定義に関する規定 何を秘密情報として扱うか、対象・内容・範囲を定義する項目です。
2 秘密情報の管理方法に関する規定 秘密情報を管理する義務について規定し、情報漏洩が重篤なリスクにつながると定める項目です。主に管理方法を定めることが多く、IDPWの設定・二段階認証・ウイルス対策ソフト・持ち出し禁止などさまざまなことを盛り込みます。
3 秘密保持義務の内容に関する規定 具体的にどんな行為が秘密保持義務違反になるのか明記します。たとえば、許可なく第三者に情報を開示すること、前項の管理方法に適さない環境で管理することなどを挙げるのが一般的です。全て羅列することはできないため、「その他不適切と認められる行為」など対象を広げるケースもあります。
4 秘密保持義務の例外に関する規定 例外的に秘密保持情報としない対象・内容・範囲があれば、定義します。「個人を特定できない範囲での分析データ」「画像処理して個人を特定できなくした写真」など、具体例があると分かりやすいでしょう。また、既に公知となっていた情報も対象外とすることが多いです。
5 秘密保持義務の期間に関する規定 秘密保持義務を守らなければいけない期間について規定します。業務を委託している間だけ守ればいいのか、契約が終了した後も守り続ける必要があるのかなど、詳しく記載しておきましょう。また、契約終了後のデータ破棄について触れる企業も増えています。
6 事故発生時の報告に関する規定 秘密情報が漏洩したとき、および漏洩した可能性が少しでも疑われるときは、お互い速やかに報告することを義務づけるのが一般的です。エスカレーションを定めるなど、具体的な報告フローを決めておくのもよいでしょう。
7 秘密保持義務違反時の制裁に関する規定 万が一秘密保持義務違反が起きたときの制裁(ペナルティ)を規定する項目です。一切の支払いをせず一方的に契約を解除できる、損害賠償を請求するなど、内容はケースバイケースです。
8 合意管轄に関する規定 前項の「秘密保持義務違反時の制裁」が起きて裁判などに発展した場合、管轄の裁判所がどこかを規定します。ほとんどの場合、「甲および乙は、本契約に関連して生じた紛争については〇〇地方裁判所を第一審の専属管轄裁判所とすることに合意する」などの文言で記載されます。
損害賠償など困惑する内容も多いように感じられますが、お互い信用して業務をするためにも必須の項目だと思っておきましょう。また、秘密保持契約を締結することが信頼アップにつながることもあります。
■著作権・知的財産権
イラスト・デザイン・文章・アプリケーションなどの作成・開発を委託する場合、著作権や知的財産権への配慮が求められます。特許権・実用新案権・商標権などもここに含まれます。
この取り決めがない場合、著作権や知的財産権はクリエイターであるフリーランス側に帰属します。著作権・知的財産権を持っていれば、フリーランス側が許可した範囲を超えて制作物が使われることはありません。
著作権・知的財産権をクライアント側に移したい場合、どのタイミングで権利が移るか、それに合意するか明記する必要があります。クレジットだけ残すのか、利用許諾の範囲を決めるかなど、細かく確認しておくとよいでしょう。
■キャンセル料・契約の途中解除
万が一途中で契約を解除せざるを得なくなったときに備え、キャンセル料・解除方法などを盛り込みます。民法第641条では、請負人が仕事を完成しない間は委託者側は損害の賠償をすることによっていつでも契約を解除できる、とされています。
つまり、支払う予定であった報酬さえ渡せれば、いつでも契約解除できるのです。
しかし、受託者側に関する条文はありません。(委任契約の場合を除く)受託者であるフリーランス側から契約を破棄したくなった場合、どのような条件で成立するか相談しておく必要があります。
どちらの場合でも、キャンセル料がかかる場合の期間や金額まで細かく規定しておくことで、トラブルを予防する効果が得られます。
■トラブルが発生した場合の責任の所在
トラブルが発生した場合を想定し、責任の所在を明らかにしておきます。成果物のクオリティやパフォーマンスについては、受託者が負うことが多くなるでしょう。度重なる要件変更に伴う納期遅延が起きた場合、委託者側の責任が大きくなります。
全てのトラブルをリストアップし責任の所在を明記することは難しいですが、代表的な例だけでも載せておくことをおすすめします。
■債務不履行・損害賠償
受託者側の都合で債務不履行を起こし、委託者に損害を与えた場合、損害賠償に発展する可能性があります。一般的には「受託者が受託者の責めに帰すべき事由により委託者に損害を発生させたときは、受託者はすみやかにその損害を賠償しなければならない」と記載することが多いでしょう。
経歴やスキルを詐称して業務委託契約書を締結したり、連絡無視・度重なる納期遅延などコミュニケーション上の障害が多かったりする場合も債務不履行とみなされます。
損害賠償の項目は、基本的に上限や範囲を設けることが多いです。しかし悪質かつ重篤な債務不履行とみなされた場合、上限を設けず損害賠償請求されることもあるため、業務委託契約書の内容はしっかり確認しておく必要があります。
このように、契約書の確認事項は多岐にたわります。ですが、認識相違によるトラブルを回避し、お互いの信頼感をつくるためにもしっかりチェックして仕事にとりかかるのがおすすめです。