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2023.11.07# トレンド

リトリートがリモートチームの一体感を高める理由

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コロナ禍を機に、働き方の柔軟性は大きく高まりました。以前はオフィスで決まった時間に働いていた人たちの多くが、今では時差出勤やリモートと出社のハイブリッドワークを行うなど、それぞれのライフスタイルにあった働き方を取り入れています。

その一方で、同じ場所で顔を合わせて働く機会が減ったことで、メンバー同士のつながりやチームの一体感の低下を感じる人も多いようです。実際に Pew Research Center の調査では、コロナ禍以降にリモートワークを始めた人の60%が、同僚とのつながりが弱くなったと答えたことがわかりました(出典1)。

とはいえ、画一的な働き方に戻るという選択肢は現実的ではありません。それどころか、ビジネスを取り巻く環境が急速に変化する今、雇用形態や背景にかかわらず優秀な人材を採用した組織づくりは不可欠です。つまり、働き方以外にも組織の柔軟性がますます進むと予想されるわけですが、そんな状況でチームの一体感をどのように育めばよいのでしょうか。

その方法の1つが、アメリカの企業で広がるリトリートという取り組みです。リトリートとは、日頃リモートおよびハイブリッドワークを行うメンバーが、日頃の職場や職務を離れたところに集まって一緒にアクティビティをする機会を指します。

この記事ではそんなリトリートの定義やメリットをわかりやすく解説。その後、リトリートがなぜチームの一体感醸成に役立つのかを紹介します。

リトリートとは:日常から離れて、みんなで集まり、真のつながりを形成する機会

そもそもリトリート(retreat)という言葉は「避難。避難所。静養所(心身を静かに休めて健康の回復をはかる場所)」を意味します(出典2)。それが転じて、企業によるリトリートは、チームメンバーが職場、仕事、日々の職務から離れて実際に集まり、アクティビティや交流を楽しむ機会を指すようになりました。

内容は、何か学びを得るための体験、あるいはメンバー同士の交流を目的としたパーティーや旅行などさまざまです。また、たいていはチームの結束を目的としているため、オフラインで行われる場合が多いのが特徴です。

アメリカにおけるリトリートの需要は急速に伸びており、企業向け旅行の市場は2023年までに5,000億ドルにのぼると予測されています(出典3)。またある企業向けリトリートコーディネートサービスでは、2023年の予約率が前年比で25%増えていることもわかりました(出典4)。

実際に、大手テック企業を中心に導入事例も増えています。たとえば、出社解禁になってからも、一部従業員にはフルリモートの許可をするなど、多様な働き方を尊重しつつ成果を上げてきた Salesforce。同社は従業員が集まってつながりを育める場所を提供しようと、 Trailbrazer Ranch という9万坪以上の福利厚生施設をローンチしました。ほかにも、 Airbnb は約6,000人の従業員がどこからでも働けるようにしつつ、四半期に一度は1週間ほどオフラインで集まるようにしています。

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リトリートは社員旅行と何が違うのか

リトリートと社員旅行は目的が異なります。上で述べたとおり、リトリートは日頃主にオンラインで仕事のやりとりをするチームの結束を高める手段ですが、社員旅行にそうした文脈はありません。したがって、基本的に全員が常にオフィスで働く状況では、社員旅行でメンバーに会うこと自体に特別な意味はなく、リフレッシュの要素が目立ちます。

また、社員旅行が盛んに行われていたバブル期には、業績や成果を讃えてボーナスとして実施した企業が多く、贅沢な印象も強いでしょう。一方、昨今のリトリートは、チームの一体感向上のための取り組みという位置づけに加えて、多くの企業がオフィスを解約して経費を削減できたからこそ実現したという背景もあります。

リトリートとチームビルディングの違いは?

チームビルディングの目的は組織全体のパフォーマンス向上です。アクティビティは個々の能力を発揮してチームで取り組むものが中心で、なかには数時間で完結するものもあります。また内容によってはオンラインでもオフラインでも行えます。たとえば月面で母船にたどり着くための必要なアイテムの優先順位をチームで話し合って決める NASA ゲーム(出典5)などは定番です。

一方リトリートは、そもそもそのニーズが柔軟な働き方によるチームの一体感低下に起因しています。また、リトリートには静養所という意味があるとおり、忙しい日常から抜け出し、いつもとは違う場所に集まって何かをするというのも特徴です。たとえばスポーツやキャンプなどを通して、職場とは違った環境でチームのつながりを意識するのもその1つです。

ちなみにリトリートとチームビルディングは必ずしも異なるものとして扱われるわけではありません。なかにはリトリートの予定の1つとしてチームビルディング要素があるアクティビティが含まれるケースもあります。

リトリートのメリット:なぜリトリートはチームの一体感向上に役立つのか

では、リトリートはチームの一体感にどう貢献するのでしょうか。メンバーの視点で見ると3つのポイントがあります。

効果1:招待を通して、帰属意識や貢献を実感できる

全員が集まる機会が減ると、各自の立ち位置や貢献度が見えづらくなるためメンバーは不安になりがちです。そうしたメンバーがチームの一員である・貢献できているという実感を得られるかどうかは、チームや組織からの行動にかかっています。

リトリートへの招待は、メンバーに帰属意識や貢献を実感してもらうのに効果的です。また、リトリートは主催者である企業やリーダーがそれなりに計画と準備をする必要があるため、感謝のメッセージや表彰とは違った重みが伝わるでしょう。

効果2:共通の体験・目的を持てるようになる

メンバーが同じ目標や思いを共有する経験は、一体感を高めるうえで何よりも効果的です。アクティビティの種類はスポーツでもワークショップでもよいのですが、大事なのはチームや自社のミッションに関わるものを用意すること。それにより、各メンバーがアクティビティを通じてミッションとのつながりをより実感できるでしょう。

効果3:仲間を多角的に理解できる

メンバー同士がバーチャルな会議やデジタルコミュニケーションで交流する機会が増えた今、1人ひとりについて知ることが以前よりも難しくなりました。リトリートではメンバーが数日間以上物理的に集まるため、仲間を多角的に知るよい機会です。オフィスではなかなか発生しづらかった雑談から知る個人のこと。さらにはリアルな表情、声のトーン、ボディランゲージ、細かな視線も認識しやすくなります。これにより、会議室やオンラインでは見えなかった情報から相手を理解でき、より深いレベルでチームとのつながりを実感できるようになるでしょう。

実際、その効果は数字に表れています。Disney や Microsoft などをクライアントに抱えるリトリートコーディネートサービスの Happied の調べでは、リトリートなどのイベントに参加した従業員の80%のが「よりつながりを感じられるようになった」と実感しているとわかりました。

リトリートは、柔軟性の高いチームの一体感向上に効果的

どんな種類であれ、組織の柔軟性が高まると新たな不安や課題が生まれるもの。だからといって従来どおり正社員だけで同期的に仕事を進めていては、変化の激しい今のビジネス環境に太刀打ちできません。

一体感の低下は柔軟性の向上によって生まれた課題の1つですが、今回紹介したリトリートのような新たな打ち手を導入すれば、そんな課題を解決して柔軟化のメリットを最大限に享受できるでしょう。一体感低下を恐れて柔軟なチーム作りを躊躇するのではなく、新たな打ち手を導入して組織変革のスピードを落とさない発想は、日本でも多くの企業の参考になるのではないでしょうか。

出典1:Pew Research Center, COVID-19 Pandemic Continues To Reshape Work in America 出典2:英辞郎 on the WEB,  retreatの意味・読み方 出典3:CISION PR Newswire, Offsite Raises $3 Million To Recconect Remote and Hybrid Companies Through In-Person Experiences 出典4:The Wall Street Journal, Extravagant Company Retreats Are Making a Comeback 出典5:ビジネスゲーム研修.com, 本家NASAゲームで合意形成のプロセスを学ぼう!

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