
大企業が頼るプロジェクトマネージャーに学ぶ、フリーランス成功のヒント
会社が未来を賭け、お金、人材、時間をつぎ込むプロジェクト。統括には社内を知り人脈を持つ正社員が起用されると思われがちですが、フリーランスで成果を上げる人もいます。
その1人が、プロジェクトマネージャー(以下、PM)として日本の伝統的な大企業のシステムおよび組織開発を外部から支援する大西徹さんです。
1か月の半分を神戸からリモートで、もう半分を東京にある取引先のオフィスで働き、講師や大学生の顔も持つ多忙な大西さん。正社員からフリーランスへキャリアを拡大してサービスの幅を広げていった背景や、フリーランス PM のニーズ、大企業と仕事をうまく進めるヒントを聞きました。
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ロールモデルに出会い、もどかしさの連続だった正社員を卒業
――これまでのキャリアについて教えてください。
工業高校の化学科を卒業後、工業薬品メーカーで約12年間、有機化学や高分子化学の新製品開発に携わりました。実験データの解析に使うプログラミングを独学で習得したことが、IT に興味を持ったきっかけです。その後、総合重工業メーカーのシステム子会社へ転職し、約14年間、数々の大型プロジェクトや特殊プロジェクトを統括しました。十分な PM の経験を積んだのち、2019年に独立して今に至ります。
――なぜ約26年間の正社員キャリアや肩書を手放して独立を決意したのですか?
組織では、自分でコントロールできる範囲が少なく感じたからです。また難題を上司に相談しても助けてもらえず「どうにか頑張れ」とそのまま戻ってきたり、立場的に客先への謝罪を求められて精神的に参ってしまったりなどを繰り返すうちに、「サラリーマン」を続けることに嫌気がさしました。
その頃よくビジネスアナリシス勉強会に参加していたのですが、それを開催するフリーランスコンサルタントが私のロールモデルとなりまして。IT に強くて組織開発もできる「師匠」の背中を見て「こんな風にやれば私もできるかも」とイメージできたので、独立を決めました。独立後はその人からすぐに仕事を紹介してもらえたので、スムーズにフリーランスを始められてラッキーでしたね。
――得意分野であった製品開発リードから組織開発支援へと、提供サービスの幅を広げられています。その経緯を教えてください。
システム会社で製品開発 PM をしていて気づいたのが、プロジェクトが滞る要因の多くが組織にあるということ。そこからチームビルディングや組織構造に関心を持ち始めました。「組織を変えること」は変革を起こすために触れざるを得ない領域なのです。
組織開発のノウハウは正社員時代に、中間管理職の経験や、風土改革への取り組みを通して学んでいました。が、知識の基盤はなかったので、アカデミックな書籍や論文を読み漁って勉強し、100%自信のある状態になってからサービス化したという経緯です。新サービスとして自分から売り込んだというよりは、取引先の課題を聞くなかで「こんなこともできますよ」と組織開発を提案した結果、興味を持ってもらえて、そこから提供する機会が増えていきました。

PMI 日本フォーラム2019に登壇した大西さん(左)。アジャイルなマインドセットと脳の仕組みの関係、事業開発へのアジャイルの適応を提案する内容について発表
PM に欠かせない人間関係。「話を聞いてくれる人」になって距離を縮める
――取引先に外部 PM として入るなかで「壁」を感じることはありませんか?
ありますよ、最初から壁です!初対面の取引先にポンと入るので、いつも転校生の気分です。それを打開するために、私はまず最初に社内インタビューを行います。各現場を回り、関係者からとことん話を聞くのです。相手に「話を聞いてくれる人だ」と認識してもらい、仕事の悩みを引き出してあげると自然と仲良くなれるのですよね。同時に、社内の状況理解にもつながりますし。
――フリーランス PM としてやりがいを感じたエピソードを教えてください。
ある大手通信系企業に任された最後の開発プロジェクトが心に残っています。協業会社からの「寄せ集め」で作られた約200人のビッグチームが日々オンラインで作業していたので、とにかくコミュニケーションが殺伐としていまして。そこで私は、距離のある課長同士が本音トークで打ち解ける場を設けたり、チームビルディングやアジャイルコーチのサポートを行ったりと1年かけて取り組みました。無事にリリースを迎え、最後にオンラインで振り返りワークショップを実施したのですが、お互いに感謝カードを共有して涙ぐむ参加者までいたのは印象的でしたね。長期で大変でしたが、最後はチームの結束力を高めて成功に導くことができ、大きな達成感を感じました。

大西さんが開催する読書会ワークショップの様子。大人の知的空間を創り出す試みとして、初対面の人々の参加を募って実施

大西さんが開催する読書会ワークショップの様子。大人の知的空間を創り出す試みとして、初対面の人々の参加を募って実施
多方面の現場経験や客観性を持つフリーランス PM は、企業からの評価が高い
――企業はなぜ正社員ではなく、あえてフリーランス PM に重要なプロジェクトを任せるのだと考えますか?
人手不足で社内に任せられる人がいないからでしょう。企業が大きいほど、正社員は日常業務に追われ、プラスアルファのプロジェクトに時間を割く余裕はないものです。加えて、外部 PM が率いるプロジェクトは成功率が高いと企業に評価されているのも理由かもしれません。さまざまな現場で多くの事例を見てきたから、状況に応じて的確な判断や対応ができる。そして客観的に会社を観察して「違和感」に気づき、遠慮なく指摘できる。これらは大事な役割であり価値ですね。フリーランス PM のニーズは多いですし、もし私が発注側だとしても、きっと外部の PM にお願いすると思います。
――企業から「重要な案件を任せたい」と信頼してもらうために、フリーランスは何を意識するとよいでしょうか?
紹介を待っているばかりでなく、セミナーやワークショップを通して「私はこんなことをしています」と自ら発信し、多くの取引先候補と出会っていくことでしょうか。これは私自身の課題でもあるので、今後は自分から積極的にアプローチしたいと考えています。

PMI日本支部のリーダーシップミーティングでワークショップのファシリテーターを務める様子

PMI日本支部のリーダーシップミーティングでワークショップのファシリテーターを務める様子
大企業案件が初めてなら「ステークホルダーリスト」でまず情報収集を
――大企業案件をスムーズに進めるためのヒントがあれば教えてください。
大企業の文化や「お作法」といった言葉にできないルールを知っているのは重要です。私の周りでも、スタートアップ案件を多くこなしたフリーランスが大企業を担当し、文化の大きな違いに身動きが取れなくなる様子を見てきたので。
もし大企業で働いた経験がないのなら、案件の初めに「ステークホルダーリスト」を作成するとよいでしょう。自身の仕事の関係者を一覧にし、役割を持つすべての人とタッチポイントを持てたかどうかをチェックし、積極的にコンタクトを取ること。オンラインで会った人、リアルで会った人、一緒に食事した人など、コミュニケーションの密度を可視化してつながりを持つことで、大企業のお作法のように聞かないとわからない情報を得る手助けになるはずです。
――フリーランス PM を目指している人へ、メッセージをお願いします。
大企業でプロジェクトマネジメントに関わっている人は、フリーランスになっても経験を生かして活躍できる可能性は高いです。私の多くの先輩方も独立して活躍しているので、キャリアパスとしては順当です。経験が浅い人は、経験させてもらえる機会に積極的に首を突っ込んでいくこと。最初から大きいプロジェクトをリードできるのはまれなので、まずは一部分だけ担当する PM のサポート業務から入り、経験を積むのが得策でしょう。
――最後に、今後の展望や挑戦したいことを教えてください。
「ビジネスの価値を言葉で表現する」能力を磨き、企画書作成などにも役立てるために、京都芸術大学の通信学生としてアートライティングを勉強しています。まずはその単位修得に励みたいですね。
あとは人工知能(以下、AI)が活用される時代に苦労しそうな中堅企業をもっとサポートしていきたいです。 私の使い方はちょっと風変わりですが、AI をエージェントのように使って本来2週間かかる仕事を半日で終わらせるなど、驚異的な効果を体感しています。ビジネスに活かせる手応えを感じているので、今後はそのような AI 技術をビジネスプロセスの変革に活用していきたいです。
――本日はありがとうございました!
Writer / Rutsuko Sakuma
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Editor / Yuna Park
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