Netflix『ザ・プレイリスト』が映す、スタートアップ vs レガシー企業 Article Image
2023.10.05# トレンド

Netflix『ザ・プレイリスト』が映す、スタートアップ vs レガシー企業

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映画やドラマを通じて組織のあり方を考えるこのシリーズ、今回はスウェーデン発全6話のミニドラマシリーズ Netflix『ザ・プレイリスト』をご紹介。音楽ストリーミングサービス Spotify の歴史についてフィクションを交え描いた作品です。

音楽業界に革新をもたらしたスタートアップ Spotify 側の視点に加え、影響を受けたレガシー企業の苦難や進化も映し出したこの作品。変化を迫られるレガシー企業や大企業で働いている人なら、つい共感する場面も多いかもしれません。

今回は Netflix『ザ・プレイリスト』を通じて、スタートアップ側とレガシー企業側が抱えがちな葛藤を比較し、変化の岐路に立つレガシー企業や大企業に役立つ考え方を見ていきましょう。

🚨以下はネタバレを含みますので、これから視聴する人はご注意ください。

新ビジネスの興奮と混乱を追う Netflix『ザ・プレイリスト』

Netflix『ザ・プレイリスト』は、2006年の創業から Spotify の歴史を追いかけた作品。最後のエピソードの舞台は2024年以降で完全なフィクションとして描き、約20年間にわたる Spotify の変遷を映し出します。

エピソードごとに語り手が変わる群像劇で、Spotify 創業者のダニエル、大手レコード会社のスンディンに加え、プログラマー、弁護士、共同経営者、アーティストそれぞれの視点から Spotify との関わりが描かれます。Spotify の成功で苦境に立たされる人々も登場し、異なる立場での現実を映すことで新しい価値について多角的に考えさせられる作品です。

ではさっそく、変化についてスタートアップ側とレガシー企業側が抱えがちな葛藤と、転換期のレガシー企業の助けになる考え方を作品内の場面から見ていきましょう。

「革新を拒否される」対「変化のリスクが大きすぎる」

スタートアップ「皆現状を変えたくないだけ」

Spotify のサービスを始める前、ダニエルはレコード会社に対して音楽ストリーミングビジネスについてのプレゼンを繰り返していました。音楽の違法ダウンロードサイトが横行し代替サービスの必要性は明らかにもかかわらず、企業からよい反応を得られない状況にダニエルは「皆現状を変えたくないだけだ」と苛立ちを覚えます。

レガシー企業「現状を無視した変化は許せない」

一方、スウェーデンでソニー・ミュージックの CIO を務めるスンディンは、音楽違法ダウンロードサイトが人々に浸透していく状況に危機感を募らせていました。すでに変化が始まっていることを痛感しながらも、制作や演奏、録音や編集など、さまざまな作業を経て生まれた音楽が無料で配られる状況に「彼らは盗んでいるのと同じ」と憤ります。

そんな矢先、ダニエルはスンディンをつかまえ、Spotify を売り込もうとします。しかしダニエルが発した「無料配信」の言葉が逆鱗に触れ、スンディンは話を聞かずに立ち去るのです。

よい変化を見極めたレガシー企業だから生み出せる影響

レガシー企業のなかでも、新しいことを導入しようとしている人ならダニエルの心境に共感できる人もいるはず。一方で、既存の枠組みに慣れ大勢の従業員を抱えるスンディン側の立場なら、変化に慎重になるのも自然かもしれません。

結果的に、スンディンは避けられない変化について理解しようと違法ダウンロードサイトの運営者に会い、ダニエルのプレゼンも受けます。そして内容を理解し、よい変化を見極めたうえで、レガシー企業としてできることを見出し Spotify の躍進を大きく後押ししていくのです。

レガシー企業は、その影響力を活かして変化のあり方を選び、導いていくこともできます。向き合い方により、変化はレガシー企業にとって脅威ではなく、進化の機会になるのです。どのような業界でも、スンディンのような変化への姿勢が企業、そして業界全体を進化させるための鍵になるでしょう。

「無知で無鉄砲?」対「古臭くて時代遅れ?」

スタートアップ「自分たちは現実を知らないのか」

Netflix『ザ・プレイリスト』中盤で、ダニエルは「デジタルネイティブの若い自分たちだからできることがある」と突き進みますが、実際のビジネスの現場では初めての経験続きでわからないことばかり。Spotify チームはビジネス案を信じながらも、音楽のライセンス交渉などを進めるなかで苦戦します。

レガシー企業「自分たちは年をとったのか」

一方、テクノロジーや社会の変化を認めながらも否定的な自分に気づいたスンディンは「自分は年をとったのか?」とふと問いかけます。

また Spotify を後押しすると決めたあと、スンディンはアメリカのソニー・ミュージックを訪れ Spotify との提携を提案。しかし、CEO は「新しいことはこりごり」といった否定的な態度です。ビジネスが危機にあると知りながら時代の変化と向き合おうとしない様子に、今度はスンディンが苛立ちを覚えます。

新たなアイデア実現に大企業の経験を活用

「私たちの親は、パンクとロックの到来をどう思ったかな?」と、あるシーンでパートナーがスンディンに問いかけます。変化に戸惑い、悩むスンディンも、かつては新しい文化を楽しむ若者だったことを思い出してほしい、という優しい呼びかけです。

新しいアイデアなら、既存の枠に収まらない部分が出てくるのも、生み出した若い世代に経験がないのも自然なことです。その内容が素晴らしいなら、枠組みを変える価値もあるでしょう。

枠組みをどのように変化させるかを考えるうえで、レガシー企業が長年培ってきた経験や知見は大きな力になります。そして、枠組みの見直しは新しいビジネスが価値を発揮する助けになるだけでなく、避けられない変化のなかでレガシー企業が進化し、影響力を持ち続けるためにも大事なステップになるはずです。

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変化のなかでレガシー企業、大企業が担える役割

Netflix『ザ・プレイリスト』では、Spotify 創業からの約20年を描くなかで、ダニエルをはじめそれぞれの持つ立場や権力、関係性も大きく変わっていきます。そして、新たなビジネスが社会を変えていく喜びや興奮だけでなく、それに伴う厳しい現実も突きつける、現実的な視点で語られています。

変化し続けるテクノロジーや価値観、枠組みに対してレガシー企業がどう向き合うべきか、また変化のなかで大企業だからこそできることは何かを考えるうえで、さまざまな共感や刺激をもたらしてくれるでしょう。

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