映画『ブラックベリー』に学ぶ、フリーランス独立後の課題と対策 Article Image

映画『ブラックベリー』に学ぶ、フリーランス独立後の課題と対策

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エンジニア、デザイナー、ライターなど専門職でも、フリーランスとして独立すると本業だけでなく財政管理や契約交渉などのさまざまな業務対応に迫られます。「うまく営業するにはどうすれば」「報酬交渉って難しい」など、独立後に初めて求められるスキルの数々に愕然としたフリーランスは珍しくないでしょう。

独立前にありがちな課題を把握しておけば、具体的な準備を進められ、フリーランスとしての働き方も想像しやすくなるはず。また今、もし独立直後でさまざまな課題に圧倒されているのなら、課題の正体を明らかにして打開したいところです。そんなときに課題を認識し、考えを深めるきっかけをくれるのが映画『ブラックベリー』です。

🚨以下はネタバレを含みますので、これから視聴する人はご注意ください。

映画『ブラックベリー』について

映画『ブラックベリー』は、スマートフォンの先駆けとも言われる携帯端末 BlackBerry の誕生から衰退までを描いた作品です。天才的な技術開発者で CEO のマイク・ラザリディスと親友のダグラス・フレギンによるリサーチ・イン・モーション社が BlackBerry を生み出し、大きな成功を収めながらもその短い歴史を終えるまでを映し出しています。

作品序盤、マイクとダグは技術やアイデア、情熱を持つ一方で経営には疎く、会社は深刻な赤字に陥っています。しかし経営を任せるためジム・バルシリーを共同 CEOに迎えてから状況は一変。BlackBerry の開発は勢いよく進み、同社には大きな成功がもたらされます。

また手段を問わず強烈な経営手腕を発揮するジムの影響を受け、頼りなかったマイクは経営者として大きく変化します。しかし同社、そしてマイクが経験する変化のなかには成長だけでなく痛みや損失もあり、真の成功とは何かをを問いかけてきます。

映画の題材はスタートアップですが、自分の事業を立ち上げ拡大する点ではフリーランスも同じ。つい共感してしまう場面や、よくある課題が数多く描かれています。今回は映画『ブラックベリー』の印象的なシーンから、そうした課題や対策について考えてみましょう。

課題1:営業・説明が苦手でサービスの魅力が伝わらない

映画『ブラックベリー』の冒頭シーンでマイクとダグは、のちの共同 CEO のジムに対し、BlackBerry の原案となるアイデアを売り込もうとします。しかし高圧的なジムの様子に2人は動揺。マイクは気を取り直して話し始めますが、プレゼンに慣れない様子で台本を棒読みしてしまいます。さらにテクノロジーに詳しくないジムにはうまく話が伝わらず、ジムは早々に席を立ち、マイクは大きく肩を落とします。

一方、同じ専門知識を持ち、積極的に話を聞く姿勢を見せる相手へのピッチになると、マイクは水を得た魚のように説明。参加者はその画期的な内容に大いに沸き、盛り上がります。

相手により説明しやすさは変わる。専門性に合わせて準備を

「説明は苦手だし、営業的な話法はなおさら」「売り込みに気が引ける」と感じるフリーランスは多いかもしれません。基本的な話し方に不安がある場合には、ビジネス向けの話し方講座などを参考に練習するのも一案です。とはいえ、上に紹介した2つの場面では、同時期のマイクでも説明がうまくいく場合といかない場合を映しています。つまり、そもそも話す相手の姿勢や専門性によって、営業や説明の難易度は左右されるということです。

乗り気ではない相手に聞いてもらうのが難しいのはもちろんですが、理解してもらうには相手の専門性を意識した説明方法や言葉選びも必要です。説明が必要な際には、聞き手の背景を知ったうえで意識して準備しましょう。また、相手の立場でわかりやすい資料を作っておくのもおすすめです。要点を整理し、見てわかりやすい資料にしておくことで、「一からすべて説明しなければ」という負担を軽減でき、筋道を立てて話す基礎にもなります。

ただ話し方のスキルを身につける重要性もある一方で、映画後半では BlackBerry のプレゼンの場でマイクが慣れた様子で決め台詞を並べるのに対し、参加者から「また宣伝文句か」との言葉が出る場面も。よいコミュニケーションとは単に上手な言葉の羅列ではないこと、また自分らしい説明の仕方とは何かを考えさせられるシーンです。

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課題2:交渉できずに取引で損してしまう

当初のリサーチ・イン・モーション社は交渉が下手で、取引先に都合よくつけ込まれていたにもかかわらず、マイクもダグもその危機の深刻さを認識できず放置していました。共同 CEO に就任し状況を知ったジムは、すぐさま取引先に掛け合い損失を取り戻そうと交渉を始めます。

発注者義務を規定するフリーランス新法で交渉しやすい環境へ

自分で交渉を行うのはフリーランスも同じですが、そもそも契約書なしで業務が始まるケースも珍しくありません。そうした状況では請け負う範囲が曖昧になったり、認識がずれたりしかねず、結果的に立場の弱いフリーランスが損をしてしまう可能性があります。そんな状況を変えるのが2024年11月に施行されたフリーランス新法です。

新法はフリーランスがより安心して働けるよう、発注事業者に新たに義務を課す法律で、「書面等による取引条件の明示」など6つの義務と、「報酬の減額」「買いたたきなど」などを禁じる7つの禁止項目が含まれています。契約書なしで協業してきた取引先とも仕切り直す機会になるうえ、新法自体が契約内容をしっかり話し合う助けにもなるでしょう。

自分の望む条件や譲れない境界線を洗い出す

とはいえ、安心して働ける条件の交渉はやはり自分で行う必要があり、課題であることは変わりません。

交渉のためには、まず求める条件や報酬額を書き出し、自分で理解しておくことが大事です。すべてが思いどおりにいかないことも考え、業務内容、報酬、仕事量など、優先順位や妥協できる範囲も考えてみましょう。相手との着地点を見出すために、または必要ならしっかり断るために、交渉前に譲れない条件を洗い出しておくのがおすすめです。自分が犠牲になる感覚があるなら仕事を受けないという線引きも重要です。

課題3:経済的成功のため大切なことを犠牲にする

初期のリサーチ・イン・モーション社の雰囲気は和気藹々としている一方、覇気がなく成功しようという意識は感じられません。そこにジムが加わったことで緊張感が生まれ、世界中から精鋭を採用しながら事業は急拡大します。しかしビジネスの成功とは裏腹に仲間同士の朗らかな雰囲気は職場から消え去り、親しかったマイクとダグの関係も寒々しいものになっていきます。

事業に改善や変化が必要であるのと同時に、この作品からは失いたくないものも考える重要性が伝わってきます。マイクは人間関係よりもビジネスの拡大を望んでいたのかもしれませんが、成功を手にしたあとのマイクの表情に喜びは見られず、本当の意味での事業の成功とは何かを問いかけてくる場面です。

成長や変化だけでなく失いたくないものも考える

フリーランスの場合、仕事を受けすぎて健康をおろそかにしたり、サービスの質を確保できなかったりする状況は現実的にありえます。また多忙や不安定が原因で、望むライフスタイルから遠ざかってしまう場合もあるかもしれません。

フリーランスという生き方を選ぶのは、そもそも自分自身が大事にしたい価値観や基準があるからではないでしょうか。独立後、実際に自分の基準で成功に近づくためには、自分の優先順位をしっかり把握し続けることが大切です。業務内容やワークライフバランスなど、フリーランスという働き方を選んだ理由に立ち返りながら経営判断を進めることで、その先の結果も納得して受け止めやすくなるでしょう。

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自分が望むフリーランスとしての生き方を明確にしよう

映画『ブラックベリー』は、自分で事業を営むうれしさや興奮とともに、成長や変化の裏にあるリスクや、知らぬ間に失っていく大切なものまでを映し出しています。マイクやダグの働き方を見ながら、フリーランスという働き方、生き方に自分が何を望むかを明確にできると、課題に直面した場合の具体的な解決策も見えてくるかもしれません。

また自分を売り込むためのマーケティングや事業運営のための経理業務など、フリーランスが直面する課題は今回取り上げたもの以外にも存在します。多面的かつ具体的に対策を行うために、ほかのフリーランスの経験談も参考にしながらリサーチを進めましょう。

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