
フリーランスの価値をもっと広めたい!本音で語る現状と未来【座談会】
「フリーランスの価値って、ちゃんと認識されていると思いますか…?」
Sollective コミュニティメンバー専用のコミュニケーションチャンネル「お困り相談室」にこんな問いかけが投稿されたのは3月後半のこと。この投稿に、多くのフリーランスが続々と反応。リアルで切実な声が飛び交いました。
「1社へのフルコミットはどうなんだろう?」
「取引先企業のバリューへの共感って、どこまで必要?」
「エンジニアは時間単価の案件が中心。成果で評価されたいのに…」
こうした議論を受けて、4月上旬に急遽 Sollective 認定プロのフリーランス9名による座談会が実現。エンジニア、マーケター、デザイナーなど、異なるバックグラウンドを持つメンバーが集合し、「フリーランスの現状と未来」を語り合いました。フリーランスとして日々活動するなかで感じる壁や制限、その解消方法を語り合ううちに見えてきたのは、職種が違っても、驚くほど共通していた悩みと気づきでした。
「立場の曖昧さや価値が正しく伝わらない」状況へのもどかしさ
最近気になっていることや実感している困りごとを、ざっくばらんに共有するところから座談会はスタート。普段、異なる職種のフリーランスが持つ課題や問題意識を知る機会はそう多くありません。参加者たちは、ときに真剣に、ときに「わかる!」と大きくうなずきながら、互いの声に耳を傾けました。
まず印象的だったのは、多くの参加者が現在のフリーランスという働き方に、一定の満足感を持っているということでした。対人関係のストレスが少なく、自分のスキルを提供して報酬を得るスタイルに、「生きている実感がある」と話す参加者も。
一方で、やりがいを感じながらも、フリーランスへの理解不足や曖昧な扱いに、戸惑いを抱く場面も語られました。
自分のペースで動けるので、今の働き方にはすごく満足。ただ、ひとりで活動していると企業側から「信頼に欠ける」と見られることもあり、「フリーランス=不安定」の印象をもたれているなと感じます。(アートディレクター/ウェブデザイナー)
リーダー的なポジションを任される案件が多いのでやりがいはあります。でも、「外部」の立場ゆえに、プロジェクトのリスクを指摘してもスルーされる場面も...そんなときは無力感を覚えます。(エンジニア/ITコンサル)
ほかの参加者からも、「安くて便利な外注先、としか見られていないと感じることがある」といった声が上がり、企業と対等な関係性を築く難しさが見えてきました。
さらに、フリーランスへの信頼をめぐる問題にも話が及びました。
知人のフリーランスをクライアントに紹介したところ、基本的なビジネスマナーが不十分で...結果的に自分の信頼まで問われる事態に。責任を感じると同時に、フリーランスに対する企業側の不安も実感しました。(Webマーケ支援)
最近、適正価格を大きく下回る条件で受注するフリーランスが増えていると感じます。結果的にクオリティが水準に届かず、別の人が案件を引き継ぐケースもよく見かけます。こうした状況が続けば、報酬相場が崩れるだけでなく、フリーランス全体の信頼性にも影響するのではないかと危機感があります。(ITコンサル)
フリーランスの活躍の場は広がったものの、必要なスキルや報酬の基準が曖昧になり、企業側には「何を基準に評価すればいいのか」が伝わりにくくなっていると感じます。(エディター)
これらの声を通して共有されたのは、フリーランス自身にも「信頼される振る舞い」や「適正な報酬と品質への意識」が必要なのではないか、という視点です。
また、低価格や低品質の受注が広がるなかで、「フリーランス=信頼できる心強い外部エキスパート」のポジションを確立する難しさも浮き彫りに。スキルに誇りを持っているからこそ、「フリーランスの価値が適切に評価されていない」現状へのもどかしさが感じられました。
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目指すのは、フリーランスの高スキルが正当に評価される未来
次は、現状の課題を踏まえたうえで、フリーランスにとって理想的な環境や活躍のしかたについて意見が交わされました。
もちろん、理想とする未来像は人それぞれ。最初は個々の視点からビジョンが語られていましたが、やがて「フリーランス全体にとっての理想的な未来」へと話は広がっていきました。
議論は大きく2つの方向に。まず1つめは、スキルや成果に見合った報酬体系への期待です。報酬面で妥協しすぎず、「スキルや成果を正当に評価してくれる企業と取引することも、ビジネス界におけるフリーランスの価値向上につながるのでは」という意見が見られました。
フリーランスが高スキルのエキスパートとして正当に評価され、成果に応じた報酬を得られるようになれば、活躍する場が広がり、結果的に企業への貢献にもつながるはず。自分もスキルを磨きながら、そうした案件に挑戦していきたいです。(エンジニア)
市場の相場に縛られず、自分のスキルに見合った報酬が得られる案件を追求していきたいです。価値を正当に評価してくれるクライアントとどんどん出合っていくつもりです。(プロジェクトマネージャー)
続いて、2つめの方向性は、自分らしいライフスタイルを実現しやすい契約形態や制度などです。「フリーランス=自由な働き方ができる」イメージとは裏腹に、その自由を手に入れるまでには、休みを取りづらい報酬体系や保障制度の不備といった、さまざまな壁が存在することが共有されました。
加えて、自由な働き方を本当に実現するには「一定の経験と信用を積み重ねる期間も必要」との指摘もありました。
報酬が何に対して発生するかにもよりますが、私の場合はプロジェクトに深く関わる契約が多く、フリーランスとはいえ安心して休めないのが本音です。この不安を解消できる柔軟な報酬体系や、フリーランス向けの保障制度が整っていくとうれしいですね。(エンジニア/ITコンサル)
理想は、誰もが自分らしい働き方を無理なく実現できること。私自身はここ数年、旅をしながら働く「ワーケーション」に取り組んできました。収入ももちろん大切ですが、それ以上に、自分の価値観に合った働き方を続けることを重視しています。そのためには、まず地道に実績を積む期間が不可欠だと思います。あわせて、ライフスタイルを無理なく支えられる保障制度など、環境面の整備も進んでいけば、より多くのフリーランスが自分らしく働き続けられるはずです。(ITコンサル)
スキルや成果への正当な評価と、ライフスタイルを尊重できる働き方。フリーランスの未来をよりよいものにしていくためには、それぞれに合った働き方を支える仕組みと、個々の努力の積み重ねが必要だとの認識が深まりました。
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信頼の積み重ねが築く「フリーランスに任せるのが当たり前」の社会
最後のテーマは、「現状から未来へたどり着くためのアイデア」。スキルや成果を正当に評価され、自分らしい働き方を無理なく続けられる未来を築くために、すぐに実践できそうな工夫や、すでに効果を実感している取り組みが語られました。
参加者に共通していたのは、課題を嘆くだけで終わらせず、自ら動き、未来を切り拓こうとする姿勢です。イベントやコミュニティを活用したネットワークづくりや、1人ひとりが成果にこだわって仕事に向き合うことが、「フリーランスに任せるのが当たり前」の文化を築く土台になる、そんな視点が共有されました。
地域の交流イベントに参加し、企業との接点を積極的に作っています。出会いが受注に発展する機会も多く、複数の案件を持つことがライフスタイルの安定やリスク分散にも役立っています。こうしたネットワークづくりは、個人の働き方を支えるだけでなく、フリーランス全体の信頼を高める土台にもなると感じます。(ITコンサル)
フリーランス同士が連携して価値を高める場面も増えていますが、何より重要なのは、どんな案件でも「個人として最大限のバリューを発揮する」マインドをもち続けること。個々が誠実に成果を出す姿勢が、フリーランスへの信頼につながっていくのではないでしょうか。(マーケター)
目の前の仕事に真摯に取り組み、成果を出し続ければ、自然と好条件の案件や新たなチャンスにつながるはずです。その積み重ねこそが、「外注が当たり前」「フリーランスにも任せられる」という認識を企業側に根づかせる一歩になるのでは。そうすればフリーランス全体の価値も着実に向上していくと思います。(アートディレクター/ウェブデザイナー)
目立ったのは、個々の堅実な行動がフリーランス全体の信頼へとつながり、「企業にとって欠かせない存在になっていくはず」という考え方でした。
続いて話題は、「この働き方をどこまで続けられるか」という現実的な課題へと移りました。フリーランスとして活躍し続けるうえで、避けては通れない年齢や体力の変化。これらの制約をどう乗り越え、自分らしさを保ちながら働けるのか。スキルを活かしながらキャリアを広げる選択肢や、未来に向けた備えについて率直な意見が交わされました。
年齢や体力の変化とどう向き合うかは、すべてのフリーランスにとっても現実的な課題です。実際、「50代に入ってから、目の疲れで PC 操作がつらい」と悩む声も耳にします。これまで培ってきたスキルを生かしつつ、早い段階から別業態へのシフトを視野に入れる。そうした備えが重要だと考えています。私自身も、すでに次のステップに向けた準備を始めています。(エンジニア/ITコンサル)
体力や年齢といった制約を受けながらも、自分らしいスタイルで働き、活躍し続けたい。そして、フリーランス全体の価値をさらに高めていくひとりでありたい。そんな前向きな思いが、座談会全体を通じて力強く伝わってきました。
フリーランス同士のつながりが「自分たちの価値を証明する」原動力に
職種やキャリアの異なるフリーランスが集い、率直に語り合った今回の座談会。
抱える悩みや描く理想は違っても、「現状へのもどかしさ」を共有する場面が何度もありました。「自分だけじゃない」と感じられたことが、フリーランスの未来を切り拓こうとする意欲へと自然につながっていくのかもしれません。
座談会は、Sollective 運営メンバーからの「これからもフリーランス同士で話す機会をつくっていきましょう!」という力強い呼びかけとともに締めくくられました。
Sollective のコミュニティでは、今後もフリーランスの現状や未来について議論を継続する予定です。コミュニティに参加していないフリーランスや、フリーランスと一緒に仕事を進める関係者の皆さんも、ぜひ X で @sollective をタグづけして意見を共有してもらえるとうれしいです。
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Writer / Shinobu Takayama
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Editor / Yuna Park
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