
フリーランスと自営業は何が違う?8種類の働く形態をマッピング
働く形態が多様化しつつある現代、「フリーランス」「スポットワーカー」など、新しい単語を見かける機会も増えてきました。
新語は混同して使用されることも多いですが、本来の意味や適切な使用シーンはそれぞれ異なります。また、自身の職業を選んだり、周りの働き方を理解したりするためにも、正しい理解が欠かせません。
そこで今回は、働く形態を表す8つのキーワードを図で整理したうえで、それぞれの意味を解説していきます。

1. フリーランス
エンジニアをはじめとするデジタル人材のほか、クリエイターなど専門スキルを必要とする職種も多く、近年増えているライフスタイルのひとつです。「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」では、次のように定義されています。
「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」 *¹
法律上は「事業者」にあたり、雇われる側ではなく雇う側として安全衛生管理などの義務を負います。そのため、年次有給休暇や育児休業などを規定した労働基準法、労災保険制度、解雇規制などは適用外です。取引先とは対等なパートナーという関係で、指揮監督を受ける立場にはありません。
また、上の定義に「一人社長」とあるように、フリーランスのなかには1人で法人を営むケースもあります。そのため、必ずしもフリーランス=個人事業主とはいえません。
💼分類:事業者
🤝契約形態・報酬形態:業務委託契約(請負契約・委任契約・準委任契約)で業務委託報酬を受けるのが一般的
*¹ 出典:内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」
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2. 自営業
総務省統計局が行う就業構造調査の分類では、「個人経営の商店主、工場主、農業主、開業医、弁護士、著述家、家政婦など自分で事業を営んでいる者」*² とされています。
上で見たフリーランスの定義では、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長」とされていた点を考慮すると、自営業とは実店舗を持つ点、そして個人事業主に限られる点の2つが特徴だといえるでしょう。例を挙げると、飲食店、美容院、学習塾などを営む個人が当てはまります。
💼分類:事業者
🤝契約形態・報酬形態:業務内容によって変わる
*² 総務省統計局「令和4年就業構造基本調査の結果 4.用語の解説」
3. 自由業
フリーランスの言い換えとして使われるケースも多い言葉です。辞書によると、自由業は以下のように定義されています。
「一定の雇用関係によらず、時間に束縛されないで、独立して営む職業。多くは特別な技能・技術・知識に基づく専門的職業で、芸術家・芸能人・医師・弁護士・会計士・文筆業など。自由職業。」*³
フリーランスとの違いがあるとすれば、「働く時間や方法を自由に選べる」ことを強調している点かもしれません。また古くからある言葉のため、弁護士・医師といった歴史が長い職種に対しては、フリーランスではなく自由業という言葉を使う傾向にあります。
なお、総務省統計局による就業構造調査の分類に自由業は含まれておらず、上の2つに比べると解釈がより曖昧な言葉だといえます。またフリーランスの定義が進んだことから、今後使われる場面は減っていくかもしれません。
💼分類:事業者
🤝契約形態・報酬形態:業務委託契約で業務委託報酬をもらうのが一般的
*³ コトバンク「デジタル大辞泉 「自由業」の意味・読み・例文・類語」
4. 派遣社員
労働者派遣事務所(派遣会社)に雇用され、企業などに派遣されて働く人のことを指します。
「事業者」にあたるフリーランス・自由業・自営業とは異なり、分類は「労働者」です。そのため、休暇の取得や解雇規制といったルールが適用され、保護の対象になります。
派遣というと事務作業、講師、工場スタッフなどのイメージが強いかもしれませんが、実は専門職に従事する人もいます。ただし、一定の企業と仕事をできる期間が法律で決まっている点、スキルが収入に反映されにくい点で、前述の3つとは異なります。
💼分類:労働者
🤝契約形態・報酬形態:派遣会社との雇用契約で給与を受けるのが一般的
5. フリーター
フリーアルバイターの略で、アルバイトやパートといった時間制の雇用契約を結んで働く人のことを指します。
高度な職務経験やスキルを求められない業務を担うことが多く、売上などの成果目標を負うこともあまりありません。仕事の責任が軽い傾向にあるため、参入障壁が低い働き方です。
分類は派遣社員と同じく、雇われる側の「労働者」にあたり、労働基準法や場合によっては福利厚生が適用されます。
飲食店スタッフ、コンビニなどの販売スタッフ、家庭教師などが代表的な職種として挙げられます。
💼分類:労働者
🤝契約形態・報酬形態:時間制の雇用契約で給与をもらうのが一般的
6. ギグワーカー
近年登場した新しい言葉で、シェアリングエコノミーサービスやクラウドソーシングサイトを通じて単発の仕事を請け負う人々を指します。
労働者・事業者のどちらに当てはまるかは、本人が開業届の手続きや法人化を行っているかどうかによるため、一概にはいえません。
また、取引先の企業と業務委託契約や雇用契約などを結ぶことは少なく、プラットフォーム上の「利用規約」を契約書の代わりとする場合が多いのも特徴です。
食事宅配の配達員、家事代行、ライドシェアの運転手といった比較的新しい職種に加え、ウェブデザイナーなどのデジタル系職種も増えつつあります。単発でも遂行できるシンプルな業務が多いのが特徴です。
💼分類:事業者
🤝契約形態・報酬形態:利用規約をもとに業務委託報酬を受けるのが一般的
7. 日雇い派遣
「日々または30日以内の期間で業務に従事する労働者」を日雇い労働者といます。日雇い派遣はそのうち派遣会社を介する働き方を指しますが、労働者保護の観点から現在は原則禁止されており、以下の例外のみ認められています。
①日雇い派遣の例外業務:ソフトウェア開発、書籍等の制作・編集、広告デザイン、研究開発、事業の実施体制の企画・立案など18種の業務
②日雇い労働者が下記いずれかに該当する場合:
・60歳以上の者
・雇用保険の適用を受けない学生(いわゆる「昼間学生」)
・副業として従事する者(生業収入が500万円以上の者に限る)
・主たる生計者以外の者(世帯収入が500万円以上の者に限る」
💼分類:労働者
🤝契約形態・報酬形態:派遣会社との雇用契約で給与をもらうのが一般的
参考:厚生労働省「日雇派遣の原則禁止について」
7. スポットワーカー
近年登場した形態で、サービスを通して仕事を請け負う労働者です。「スキマバイト」と呼ばれ、数時間から1日などの超短期で働くのが特徴です。
スポットワーカーについては、新しい言葉ということもあり解釈が定まっていません。プラットフォームを通じて仕事を探す点ではギグワーカーと同じですが、「利用規約」に同意して業務を請け負うギグワーカーとは異なり、スポットワーカーは主に雇用契約を勤務先と結びます。
職種はフリーターと同じく、飲食店スタッフ、コンビニなどの販売スタッフなどが多いようです。日雇い派遣で禁じられている職種も多く、日雇い派遣禁止を形骸化しているとしてルールづくりを求める声も上っています *⁴。
💼分類:労働者
🤝契約形態・報酬形態:利用規約をもとに業務委託報酬を受けるのが一般的
*⁴ 参考:日本経済新聞「スポットワーク、派遣規制を骨抜き 問われる労働者保護」
まとめ
上に挙げたようなキーワードを正しく理解することは、それぞれのライフスタイルや働き方への尊重にもつながります。偏見や先入観にとらわれることなく、知識をアップデートしていきましょう。
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Writer / Maishilo
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Editor / Yuna Park
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