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フリーランスが妊娠・出産したら何をすべき?妊娠初期〜後期までの体験記

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フリーランスは専門性を生かして活躍できる一方で、福利厚生や社会保障には難点も多いといわれます。そのひとつが、「産休」「育休」といった出産にまつわる制度。いつか子どもを持ちたいと思いつつ、フリーランスで可能なのかと不安を感じる方もいると思います。

かくいう私もそのひとり。フリーランスとして働くなかで妊娠し、うれしい反面「これからどうすればいいんだろう」と最初は途方にくれました。けれど、半年の産休・育休を経た今なら妊娠・出産を考えるフリーランスに「なんとかなる」と胸を張って言うことができます。

今回はこれから妊娠・出産を迎えるフリーランスのために、私の妊娠体験記をお届けします。

妊娠中にやったこと&やればよかったこと

妊娠がわかったらすぐに準備を始めよう!

私の妊娠が判明したのは、ライターとしてのフリーランス歴が5年目にさしかかったとき。周囲にフリーランスで妊娠した人もほとんどおらず、最初はとにかく不安でした。

ラッキーだったのは、4週目の初日に病院に行ったおかげで、妊娠が早めに判明したことです。早く妊娠の検査をすると、その分だけ産休や育休に向けた準備期間も長くなります。フリーランスは、会社員と比べてやることが多いため、「あれ?」と思ったらすぐに病院に行くことをおすすめします。では、実際にこの時期に私が行った準備をご紹介します。

【産休に入る日を決める】

会社員と違い、フリーランスは産休や育休の期間をすべて自分で決めます。期間を決めるとき、私がまず参考にしたのが出産手当金の満額支払い期間でした。

出産手当金とは、簡単にいえば「産休中の人に国がお金を払う制度」です。残念ながら国民健康保険の加入者は対象外なのですが、ほかの保険に入っている人、事業を法人化した人などはフリーランスでも受け取れます。私もその対象者でした。

この出産手当金は「出産42日前〜56日後の間に働いていると減額される」という仕組みがあります。私は満額もらえるようしっかり休むことを選びました。同じく対象になる人は、この制度を念頭に置いて期間を決めるのがおすすめです。

【復帰の目標時期をゆるく決める】

休みに入る日を決めたら、次はいつまで休むかを決めます。自分の経験からいうと、復帰時期は目標だけ立てておき、最終決定は産後にするほうがよいと感じます。

私は当初「出産後の育休は3か月」と決めていました。が、つわりや妊娠後期の体調不良に疲れ、出産・育児という人生の貴重な時間を大切にしたいと考えるようになり、最終的には約半年の休みを取りました。

復帰の時期は、産後の体調、メンタル、赤ちゃんの性格、保育園の入園時期など、自分ではコントロールできない要素で変わることがあります。しっかり復帰目標を立てると達成できないときストレスになるので、「最低限この時期には復帰する」という目標だけ決め、あとはなりゆき任せでどっしり構える方が精神的にもよいと思います。

【プロに最新の支援制度を聞く】

実はフリーランスの妊娠・出産にまつわる支援制度はかなり多く、住んでいる地域などによって申請できるものが違います。さらに年々、子育て支援制度が増えているため、ネットの記事や数年前に出産した友人の話では情報が古いことが多かったです

私はお世話になっている税理士さんに相談し、見逃している税制や支援制度がないかをチェックしてもらいました。税理士の知り合いがいない人は、役所の相談窓口を利用してもよいと思います。

【やればよかったこと:つわりに向けて仕事を減らす】

妊娠が判明した頃のことで、私がもっとも後悔しているのがつわりに向けて仕事を減らせばよかったということです。

私はもともと体が丈夫だったため、つわりでも頑張ればなんとかなるだろうと思っていました。が、妊娠2か月目につわりが始まると、とても仕事できる体調ではなく、しかし引き受けた仕事を断るわけにもいかず、結果的に質の低い仕事をして、取引先にかなりの迷惑をかけてしまいました。仕事を断ることより、質が低い仕事をするほうがフリーランスとしては致命的なので、つわりの時期は勇気を持って断るべきだったと反省しています。

また、つわり以上に厄介だったのが集中力の低下でした。妊娠初期は血液が赤ちゃんにどんどん送られるため脳にまわらず、集中力・思考力が驚くほど悪化しました。高い専門性で仕事をもらっているプロフェッショナルフリーランスの人は、この点も考慮に入れておくとよいと思います。

つわりは、長い人は出産直前まで続きますが、原則1〜3か月程度です。「仕事の時期を後ろ倒しにしてもらう」「分量を減らしてもらう」といった調整で対応できることが多いので、ぜひ私の失敗談を反面教師にして、むりのない範囲で仕事を調整してください。

妊娠初期のうちに取引先に連絡をする

妊娠1〜4か月の時期を、妊娠初期と呼びます。妊娠報告には早いと考える人も多いですが、私の場合は連絡先が多かったこと、後任が必要な取引先がいくつかあったことから、この時期に報告を始めました。

実際、企業としては妊娠報告は早ければ早いほうが助かるそうで、感謝されることが多かったです(ただ、赤ちゃんが安定していない時期でもあるので、決してむりして報告する必要はないと思います)。ここでは、取引先に妊娠報告するときに私が気をつけたことをご紹介します。

【過去の取引先も含めて連絡先をリストアップする】

フリーランスは、妊娠を報告する相手が多岐にわたります。私はヌケモレがないように、報告を始める前に連絡先をすべてリストアップしました。

このとき忘れがちなのが、「過去に仕事をしたが今は取引をしていない企業」です。私の場合は、直近1年で仕事をしたところはすべて報告しました。ふとしたときに再度依頼をもらったとき、自分が返信できない状況かもしれないからです。また、先に一報入れておいたおかげで、復帰してからの営業メールが送りやすかったです。今後仕事をする可能性がわずかでもある企業は、妊娠を報告しておくのがベターだと思います。

【自分が知っているもっとも立場が上の人から報告する】

会社員が妊娠を報告する場合、最初に伝えるのは上司が多いと思います。が、フリーランスの場合は誰に伝えるかがはっきり決まっていません。窓口の担当者やマネージャーのほか、スタートアップの場合はCEOに直接伝えるという選択肢もあります。

私は取引先ごとに伝え方を試行錯誤していましたが、振り返ってもっともスムーズだったのは「自分が知っているもっとも立場が上の人に報告する。その後ほかの人にも順次伝える」という伝え方でした。

基本的に、担当者は日々のやりとりが多いので、直接報告できるタイミングがたくさんあります。が、立場が上の人はなかなか会わないので、自分で機会を作らないと報告しないまま休業することになりかねません。社内で妊娠のことが情報共有されていればよいのですが、そうでない場合は「スキル不足や条件の折り合いがつかなかった」と勘違いされるリスクがあります。担当者だけでなく、マネージャークラスの人にもできるだけ直接連絡するとよいと思います

【やればよかったこと:妊娠報告は何回もする】

フリーランスは、会社員より出社の頻度が少ないことが多いです。特に私はリモートワークだったため、お腹が大きくなったところを取引先にほとんど見せていませんでした。結果として、産休に入ることを取引先に忘れられていたことが何度かありました。

そんなことあるのかと思われるかもしれませんが、「社員の産休は覚えていても、外部の取引先の産休までは覚えていない」ということは意外と多いです。フリーランスはあくまで外部者だと考え、以下の工夫をするとよいと思います。

・メールで文面を残す ・機会があるたびにリマインドする ・カレンダーやプロジェクトシートでハイライトしておく

私の場合、取引先も悪気があって忘れたわけではありませんでした。お互い気まずい思いをしないためにも、リマインドは何度もしたほうがよかったなと思います。

妊娠中期は稼ぎどき!短期の仕事が最適

妊娠5か月からはいわゆる「安定期」。赤ちゃんの状態が安定し、自分の体調もよくなることが多いです。

私の場合、安定期は妊娠前の最後の稼ぎどきでした。つわりで後ろ倒しにした仕事を片づけ、復帰後につながりそうな仕事をしていたのがこの時期です。食事に気をつける以外はほぼいつもの生活でしたが、フリーランスとしていくつか気をつけたことがあります。

【長期の仕事は3か月以内に終わるものにしぼる】

安定期は3か月ほどで、その後は妊娠初期よりもトラブルの多い妊娠後期に入ります。そのため、長期の仕事を依頼されたときは、安定期に終わらせられるかを基準に引き受けていました。少し厳しいスケジュール管理でしたが、私は妊娠後期に後述の切迫早産になったため、結果的にはよかったと思います。

【やればよかったこと:緊急時に備えて引き継ぎの準備をしておく】

安定期は「今のうちに働こう」という思いが強く、目の前の仕事をたたむ準備をほぼしていませんでした。が、安定期を抜けると、いつ仕事ができなくなってもおかしくない妊娠後期がやってきます。

私は妊娠後期に突然、切迫早産の診断を受けました。切迫早産は、早産の一歩手前で安静が必要な状態のことで、妊婦の5人に1人がなるといわれています。

「今日から長時間労働は控えてください」「場合によっては産休を1か月前倒ししてもらいます」と病院で説明されながら「もう生まれるかもしれないの?!」とひどく焦ったのを覚えています。

幸いにもできるだけ外出しない、疲れたらすぐに横になって休むといった対応で出産予定日まで乗り切ることができたのですが、妊娠後期は考えてもみなかった体調トラブルにぶちあたる時期だと痛感しました。

安定期といえども、妊娠中には変わりありません。周りに仕事の進捗や情報を常に伝えておき、いざというときすぐに引き継げる状況にしておく方が賢明です。

トラブル頻発の妊娠後期。むりせず税務や書類手続きを進める

安定期が終わると、身体のトラブルが急増します。あまり知られていませんが、「後期つわり」と呼ばれる症状が出やすい時期でもあります。初期より後期のほうがつらかったという人も珍しくありません。

私の場合、大きくなった胎児に酸素をとられて常に息苦しく、毎日気絶しそうなほど眠く、切迫早産の薬の副作用で動悸が激しく、少しの間座っているのも大変でした。

この時期は、とにかくトラブルが多いので、妊娠初期以上にむりしないのが何より大事だと思います。働けるのもあと少しだと焦るかもしれませんが、仕事を増やすのではなく「たたむ」ことに集中しましょう。

【書類手続きに手をつける】

出産にまつわる書類は、出産一時金、出産手当金、子育て支援金、子どもの扶養届、子どもの健康保険申請など大量にあります。

そして、忘れてはいけないのは通常、会社が作ってくれる書類をフリーランスは自分で作らないといけないこと。単純計算で、会社員の倍の書類を作らないといけません。さらに、保育園を考えている場合は、想像以上に締め切りが早いです。産休に入ってからやろうと思っていると、すでに締め切りを過ぎていることがあります。

体調不良や早産で予定どおりに書類を作れないこともあり得るので、遅くとも妊娠後期に入ったらすぐに書類の準備にとりかかりましょう

【確定申告などの税務処理をできるだけ終わらせる】

時期によっては、出産と確定申告がかぶることがあります。その場合は、思い切って税理士さんに丸投げするのもひとつの手です。この場合、税理士さんにも出産予定日を伝えておき、連絡がつきにくい時期を把握してもらうとよいと思います。

自分で行う場合、産後よりも産前に準備するのがおすすめです。産後は寝られない日々や、起き上がることすら難しい体調が続きます。疲れから記入ミスなども発生しやすいので、産前にできるだけ終わらせる、終わらせられないなら外注するというプランがよいと思います。

【請求書を早めに出す】

産休に入るタイミングによっては、休業中に請求書を発行する必要があります。私は、休み前にすべての請求書を作り、メールの予約送信機能を使って送信しました。

請求書を出すのを忘れて育休明けなどに発行すると、決算時期をまたいで状況が複雑になることがあります。出し忘れがないか、休み前に必ず確認しておきましょう。

【産後に連絡する人をリストアップしておく】

私は、仕事から完全に離れないうちに、産後に連絡をする人をリストアップしておきました。いつでもいいと思いがちですが、育児中は仕事の記憶が薄れてしまい、連絡先にヌケモレが出る可能性があります。まだ仕事脳になっているうちに、リストを作っておくと安心だと思います。

【産休1〜2週間前から取引先にリマインドする】

休みに入る時期が本格的に近づいてきたら、改めて産休に入る日を取引先に伝えるとベターです。復帰の目標が決まっている場合は、その時期も改めて伝えるほうがよいと思います。復帰がいつかわからない場合は「◯月頃に改めてご連絡します」と伝えるだけでも連絡がしやすいです。

また、休業中に作業が発生しないか、引き継ぎに問題がないかの確認なども、少し早めに行っておきましょう。

おわりに

フリーランスの妊娠・出産は、会社員に比べて準備が多く、不安な点も多いです。しかし、妊娠中に自分の体調に合わせたフレキシブルな働き方ができることはフリーランスの強みでもあります。

自分自身の妊娠を振り返ったとき、もっともよかったのは「リモートで体調に合わせた仕事ができた」「妊娠を心から祝福し、応援してくれる人たちと仕事ができた」ということでした。

不安も多いと思いますが、決してむりせず、貴重な時間を自分のペースで楽しんでください。次回は産休・育休中の過ごし方をご紹介します。

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