AI サービスを生む創業期スタートアップ × 生成 AI に挑戦したい UI/UX デザイナー【事例】
創業期のスタートアップでは、社内に必要なすべての知見を備えるのは難しいもの。そんなときに頼れるのがハイスキルフリーランスです。
Sollective(ソレクティブ)を通して出合った企業とフリーランスの事例を伝える「企業とフリーランスの幸せな協業」。第7回で取り上げるのは、生成 AI を活用した営業担当者支援サービスを開発するスタートアップのサルエドと、UI/UX デザイナー木村博信さんのケースです。
UI/UX のノウハウ不足に悩むサルエドは、経験豊富なフリーランスの手を短時間借りるという方法で、スピード感を損なわずに開発を進めています。徹底的に議論と思考を重ねるたびに信頼関係も強めていく、株式会社サルエド CEO の本郷理一さんと木村博信さんに協業の今とこれからを聞きました。
UI/UX の知見を求めるスタートアップと、生成 AI に挑戦したいフリーランス
ーー最初に、今回の協業前のそれぞれの状況について教えてください。
本郷:サルエドでは生成 AI を活用して営業担当者の育成を支援する「AI上司サルトル」というプロダクトを開発しています。これは AI が営業マネージャーの代わりに商談全件に張りついてアドバイスするサービスで、その開発を加速させるために人材をアサインしたく、Sollective に相談しました。
木村:私はフリーランスの UI/UX デザイナーとして長年仕事をしているのですが、これからの UX デザインには生成 AI に関する知見が不可欠だと感じていたところでした。実際、個人的にも生成 AI で何ができるかなどを研究していました。
ーーどんな経緯で今回の協業に至りましたか?
本郷:仕様が固まっていない開発当初から、このプロジェクトはフリーランスの力を借りて進めていました。というのも、上流工程から担えるレベルの正社員採用は争奪戦なので。一方でフリーランスなら人材が意外と見つかりますし、アサインまで時間もかかりません。プロダクト開発初期のフェーズではフリーランスの方に依頼するのがうってつけです。
それでバックエンドのハイスキル人材を採用するべく Sollective に相談したところ、その職種よりもノウハウが不足していた UI/UX デザインをエキスパートに任せてはどうかと提案がありました。そこで出会ったのが木村さんです。
木村:Sollective からサルエドさんの案件がメールで配信されたのを見て、本当に「秒」で応募しました。ちょうど挑戦したかった生成 AI を扱う案件でしたし、スタートアップのスピード感や、サービスをゼロから生み出せる点などにも魅力を感じたんです。短時間で関われるという点さえ提示された条件にぴったりでした。
ーー募集開始から契約まで9日間というスピード感でした。
本郷:プロフェッショナルフリーランスに強い Sollective の紹介なので信頼はしていました。決して安くない単価でしたが、それも過去に協業されたクライアントからの評価の表れです。あとは木村さんと面談して、大丈夫だと…これは直感ですね(笑)。依頼業務のすり合わせを行えば、それ以外に検討事項が特段なかったので即決しました。
スタートアップとしてはカルチャーフィットも大事にしているのですが、その点も実績のある方なら柔軟に対応できると思っています。そもそもフリーランスは案件ごとにさまざまな職場環境で仕事をされているわけなので。
オンラインでミーティングを行うフリーランスの木村さん(左)とサルエドの本郷さん(右)
スタートアップに欠かせないスピード感の要は幅広いスキルと経験を持ったフリーランス
ーー木村さんはプロジェクトでどのようなことを担当していますか?
木村:基本的には週1回、本郷さんとオンラインで1対1のミーティングを実施しています。今はサービスを通じてどんな価値を提供すべきかの設計を終え、ようやくデザインの試作に入った段階です。
本郷:当初は私が実作業を担当し、木村さんには「壁打ち相手」になってもらおうと考えていました。でも実際のところ私は経営全般を見なければならず、とても手を動かす時間はありません。それで現在は、木村さんが私との議論から課題を見つけてタスクをこなし、私が進捗や成果物を確認するという役割分担に落ち着きました。
ーー経験豊富で守備範囲の広い木村さんだからこそ任せられたのですね。
本郷:はい。というより、創業期のスタートアップでは、木村さんのように1人で何でもできる人材でないとスピード感がなくなってしまいます。「このタスクはできません」と言われると、新たに人材をアサインしなければなりませんから。しかも人数が増えるほどコミュニケーションやタスク管理などのマネジメントコストも増える。木村さんはブランディングやウェブサイト制作など幅広く対応できるうえ、細かな指示がなくても自分で考えて進めてくれるので助かります。
ーー木村さんは、どんなところにプロジェクトのおもしろみを感じていますか?
木村:生成 AI の活用に挑戦できているのはもちろんですが、本郷さんとの議論を通じてサービスを具現化するプロセスに醍醐味を感じています。
このサービスのターゲットユーザーは営業担当者で、私がこれまで UX デザインの対象としたことのない人たちです。ですので、それらしい UI デザインを簡単にあてがうのではなく、まずはユーザーへの理解を深めることが不可欠でした。本郷さん自身は営業経験が豊富なので、議論を通じてその知見に触れられるのは大変勉強になります。
サルエドの「AI 上司サルトル」
想定どおりに進まない状況を理解してくれるフリーランスはスタートアップの心強い味方
ーースタートアップという視点で、木村さんと協業してよかったと感じることはありますか?
本郷:木村さんはスタートアップの開発状況に理解があり、仕様変更や手戻りにとことんつき合ってくれるんです。前回のミーティングでは「これで OK」と思っていたのに時間が経つと「やっぱり違うかも」と思うことはよくあります。そうした状況でも、嫌な顔を見せずに次の打ち手を考えてくれる安心感は大きいです。
木村:史上初のものを作っているわけですから、想定どおりに進まないのは当然とも言えますね。迷いや手戻りが発生したときに、デザイナーとして解決方法を提示するのが自分の役割だと思っています。
ーーとても心強いパートナーですね。
本郷:はい。かといって、木村さんが導いた答えを私がそのまま受け入れるという関係性ではありません。「これでいいのか?」という不安は常にありますし、意見の衝突も日常茶飯事です。でも、それは信頼関係がないとできないことですし、よいものを作りたいという情熱を共有できている証拠だと思っています。
木村:議論が発散して、ミーティングが4時間くらいになったときもありましたよね。
本郷:あれは疲れすぎてよくなかったですね、反省しています(笑)。木村さんにお願いしたいことがどんどん増えてしまっていますが、この先も引き続き協業していきたいです。
ーー最後に、今回の協業が木村さんのキャリア観に与えた影響について教えてください。
木村:私のフリーランス歴は長いのですが、自分から手を挙げてプロジェクトに参画したのは、実は今回が初めてでした。挑戦したいと願っていた領域の案件をお手伝いできることになり、日々やりがいを感じています。今回の協業のように、自分の目指したい方向にキャリアを進めていくかたちで今後も仕事ができればうれしいです。そう気づく転機になりました。
ーー本日はありがとうございました!