個人事業主でも利用しやすい補助金は?フリーランスの経理 Q&A【補助金編】
個人事業主やひとり法人などのフリーランスも補助金を利用できると知っていましたか?とはいえ、補助金の情報を集めるのは大変だというイメージがあったり、申請のハードルが高いと感じたりするかもしれません。
今回登場するフリーランスも、補助金が気になるものの具体的にどうすればよいのかわからないという1人です。そこで本記事では、「フリーランスの経理」シリーズでおなじみの西浦啓一郎税理士が補助金の種類や選び方、申請の注意点などを丁寧に解説。ぜひ参考にしてください。
フリーランスが申請しやすいのは小規模事業者持続化補助金
山根:私は3~4年前に副業でフリーランスを始めて、去年完全に独立しました。それと同時に個人事業とは別に法人を設立したのですが、法人の収益はほとんどなく、今は個人事業の収入を法人に投資している状況です。法人事業を前に進めるために、使える補助金があればと思うのですが...。
西浦:その場合、まず検討したいのは小規模事業者持続化補助金でしょう。山根さんは個人事業も行っているとのことですので、法人と個人事業、それぞれで申請してみてもよいかもしれません。
山根:そんなことできるんですか?
西浦:はい、持続化補助金は通常枠、インボイス枠、創業枠の3つに分かれているため、個人事業主として通常枠に出し、法人として創業枠に出すなどの方法が考えられます。採択率は6~7割と比較的通りやすく、1年の間に申請タイミングが20回ほどあるので自分のタイミングで申請しやすいのも特徴です。
山根:法人は創業2期目なのですが、創業枠の対象になりますか?
西浦:創業3年以内の企業が対象なので山根さんの法人も該当すると思います。自治体等が実施する「特定創業支援等事業」による支援を受けると補助上限が200万円となるなど、金額も小さくありません。要件の詳細は公募要領に書かれているのでそちらも確認してみてください。
山根:申請は自分でできるものでしょうか?手続きなどに時間を取られたくないのが正直なところです。
西浦:持続化補助金であれば、会社の概要、自社や提供サービスの強み、経営方針・目標と今後の展望、補助事業の計画、今後の展望、収支計画をA4用紙数枚にまとめる程度なので、作業時間を1~2日ぐらい見ておけば大丈夫だと思います。しかも申請前に商工会議所のチェックを受けてハンコをもらうプロセスなので、書類に不備があればその際に指摘してもらえるはずです。
補助金は「後払い」かつ課税対象。申請は慎重に
山根:持続化補助金、よさそうです!申請時の注意点はありますか?
西浦:これは持続化補助金に限った話ではないのですが、だいたいどの補助金も「使った分の一部があとから支給される」仕組みです。持続化補助金の場合は申請額の3分の2が支給されるため、たとえば120万円使うと80万円が戻ってくるというわけです。つまり、自力で全額支払える資金力が必要ですし、3分の1は戻ってきません。
なので、「お金もらえるからこの施策をやる」のではなく、「この施策を行う足しにしたい」という考え方が重要です。不必要なツールを導入して支払いが大変、というケースもありますから。
また用途にも注意が必要です。持続化補助金は幅広い「販路開拓」に使えるものの、デジタル広告を含むウェブサイト関連費の補助上限額は、交付額の4分の1しか使えないという制限があります。つまり、先ほどのケースでは80万円の補助額のうち、ウェブサイト関連費に使えるのは20万円までです。なので、ロゴデザインやブランドガイドラインの作成、オフライン広告、また展示会や商談会の出展などと組み合わせることが必要です。
あと、意外と知られてないのですが、補助金として受け取ったお金には税金がかかります。
山根:えー!
西浦:個人事業主で所得税を払っている場合は、所得が増えると税率が上がってしまいます。その意味でも、目的が曖昧な申請は得策ではないでしょう。
自治体ごとの補助金もチェック
山根:ほかにはどんな補助金がありますか?
西浦:たとえば、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、革新的な製品・サービス開発の取り組みに必要な設備・システム投資等に使えます。対象が DX・GX 分野の場合の補助金額は、従業員5人以下でも100万円~1,000万円と大きく、補助率も3分の2です。ただし、採択率が30~60%程度と低いのがネックです。
ほかによく知られたものとしては IT 導入補助金があります。会計ソフトやセキュリティツールの導入に使えるのですが、申請は IT 導入支援事業者を通すことが必須で、ツールだけでなく事業者も選ばなければならないため、少し煩雑かもしれません。
これらの補助金は少し難易度が上がるので、専門業者に依頼したり顧問税理士に相談したりするのがおすすめです。
山根:できればコストもかけたくはないのですが...。
西浦:自治体ごとの補助金であれば、申請ハードルは少し下がるかもしれません。
たとえば東京都の中小企業デジタルツール導入促進支援事業はデジタルツールの導入にかかる費用の一部を支援する助成金です。予算に達するまで申請を受けつけているので、ソフトウェアの導入などを検討している場合は利用してもよいでしょう。
同じく東京都の創業助成事業は賃借料や広告費、市場調査費用などに幅広く使うことができ、補助額も最大400万円です。創業5年以内の事業者が利用できるのですが、個人事業主と法人の年数は通算されるため注意が必要です。
都道府県だけでなく、市区町村や NPO 法人などが主体となる補助金もあります。本当にいろいろありますので、ぜひ補助金のポータルサイトでチェックしてみてください。
申請準備には時間がかかる前提で、計画的に
山根:見たところ、現在受けつけ期間中の補助金が少ない印象です。
西浦:実は「今受けつけ中」のものだと、すでに間に合わない可能性があります。というのも、申請書を書いて出すだけで OK という補助金は少なく、商工会議所の認定を受けたり、自治体が行う事業を受けたりするなど複数のステップを経るケースが多いからです。また、申請は1回で通るとは限りません。
山根:なるほど...次にいつどんな補助金の申請が募集されるかはどこでわかりますか?
西浦:補助金はだいたい毎年同じ時期に募集されるので、先ほどのポータルサイトなどで今年の募集時期がいつだったかをチェックし、来年に向けて準備しておくのがよいでしょう。
一般的には、国や自治体の補助金は4月以降に新しいものが発表される傾向にあるため、4月中旬以降や5月から募集開始というところが多く、年度の後半には締め切られている可能性が高いです。
補助金の活用には計画性が何よりも大事です。「お金がもらえるから」という理由で飛びつくのではなく、必要なツール、支払いの計画、事業計画の策定、申請の準備など、計画的に進めるようにしてください。
山根:わかりました!
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📚「フリーランスの経理Q&A」シリーズ
Contributor / Keiichiro Nishiura(公認会計士・税理士)
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Writer / Yuna Park
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