ポストコロナ時代の生産性向上とは? 鍵は上司・同僚とのコラボレーションの負担軽減 Article Image
2021.11.01# トレンド

ポストコロナ時代の生産性向上とは? 鍵は上司・同僚とのコラボレーションの負担軽減

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ポストコロナの世界に移行していく中で、リモートワークの悩みはつきません。とはいえ、しっかりと従業員の状況を分析し、適切な判断に基づいて対処することで、業務の大幅な効率化を図ることができます。

変わりゆく世の中の流れに合わせて、従業員がより効率的に働けるようにいちはやく組織や働き方を作りかえることができた企業は、業績や優秀なビジネスパーソンを確保しつづけられますし、それによって競合優位性を持つことになるはずです。

今回は、海外の心理学者や企業の研究チームによる最新の分析とあわせて、どのように働き方を変えていくべきかを紹介します。

目に見えない「スイッチングコスト」が効率を落とす

アメリカのビジネスメディアである Harvard Business Review の記事「コラボレーションによる過大な負荷が生産性を低下させる」によれば、リモートワークの普及によってメールやチャット、電話やビデオ通話などのやりとりに費やす時間は、新型コロナウイルスによるパンデミック以降、大幅に増えているといいます。

リモートワークでのメールや通話などのやりとりの問題は、量の多さだけではありません。メールなどのやりとりと、自分の作業を交互に行うことによって起こるスイッチング(切り替え)コストという、目には見えない問題も抱えています。

認知心理学者の研究によると、一度作業を中断してメールに返信するだけで、元の状態に戻るのに64秒かかるといいます。仕事を頻繁に中断される人は、仕事量が増えるだけでなく、ストレスが増し、時間に追われてしまうのです。

コロナ禍でリモートワークが増えた影響で、このスイッチングコストが増えた方も多いのではないでしょうか?

スイッチングコストを減らし、効果的な上司・同僚とのコラボレーションを行うための解決策を、同記事の中からふたつ紹介します。ひとつめは、個人でできる簡単なものなので取り入れやすいものになっています。

個人のリズムに合わせて自分の時間を確保することが大切です。朝一番にメールに返信した後、2時間ほど集中して仕事をする人もいれば、早い時間にクリエイティブな作業を済ませて、メールの返信は1回30分ずつ3回に分けて行う人もいます。また、より効率的な人は、メールを受け取るたびに返信するのではなく、優先順位をつけて、決まった時間にまとめて処理する傾向があります。

ふたつめは、上司・同僚とのコラボレーションによる従業員の負担を減らすために、時間の使い方を工夫することで対応した企業の取り組みです。

リモートワークへの移行に加えて、主力商品の急激な需要増のあったGeneral Mills 社では、2020年3月時点で、従業員がやりとりに費やした1週間あたりの平均時間は21.4時間でした(Microsoft Workplace Analytics による General Mills 社の社内データを基に算出)。それが7月末には週25.7時間と20%も増加したのですが、この時期には従業員のネガティブな感情も増加していたことがデータ分析でわかったのです。そこで従業員のストレスや、燃え尽き症候群が増え続けるのを防ぐために取られた解決策は、会議の回数を増やすことではなく時間の使い方を工夫することでした。“Free-Form Fridays” と呼ばれる取り組みは、そのひとつです。 (中略) Free-Form Fridays では、毎週金曜日の午後2時以降はミーティングなどの予定を入れないようにし、その時間は自分の仕事に集中したり、メールをチェックしたりする時間に充てます。その結果、リモートワークによるストレスの増加を抑え、従業員一人当たり平均して、メールや通話などのやりとりに費やす時間を週に8時間削減できました。

スイッチングコストを減らすためには、メールやチャットなどで常につながっている状態をなくし、時間の使い方を工夫することが重要であることがわかります。

ハイブリッドワークの生産性を高めるチームのコツ

リモートワークを取り入れたものの、コミュニケーション不足や生産性の低下など、企業の悩みも増えてきています。この悩みを解決するための手がかりとなりそうなのが、Harvard Business Review の記事「ハイブリッド時代における『生産性』の再定義」で紹介されているマイクロソフトの研究結果です。

新型コロナウイルスの影響を受けてリモートワークが始まってから、マイクロソフトでは "New Future of Work"と呼ばれる研究グループを作り、リモートワークに関する研究を行ってきたそうで、その結果を以下のように語っています。

調査では、人々はオフィスでの勤務を懐かしく感じる一方で、リモートワークの柔軟性も捨てがたいと考えていることがわかりました。サティア・ナデラ CEO はこれを「ハイブリッド・パラドックス」と呼んでいます。組織はハイブリッド・パラドックスを考慮した上で、これからの生産性について新しく定義し直す必要があることが明らかになりました。それは、仕事と家庭の境界がなくなったときに、「どれだけの仕事をこなすか」だけでなく、「どのように働くか」まで考えなければいけないということです。

以前公開した記事でも、リモートワークとオフィスワークを組み合わせたワークスタイル「ハイブリッドワーク」の方法としてマッキンゼーの分析などを紹介してきました。

ハイブリッド時代における『生産性』の再定義」で紹介されているマイクロソフトの研究チームの「ハイブリッド・パラドックスを考慮した生産性」も、この記事で紹介した内容に近いものになっています。その中から、より具体的に行動に移しやすいハウツーとしてふたつピックアップしてご紹介します。

リモートワークとオフィスワークにはそれぞれ長所と短所があるので、同じ結果を求めるのではなく、それぞれの特徴を生かしていくことが重要です。オフィスでは、人間関係やホワイトボードを囲んでのブレインストーミングなどを優先させます。そして自宅で仕事をするときは、家族との時間やフィットネス、趣味の時間などを加味して一日の予定を立てます。(中略)リモートワークが効果的かどうか、またどのように効果的なのかは個人差が非常に大きいため、それぞれの人に合ったやり方を見つけることが、うまくいくコツです。
マイクロソフトでは、社員がオフィスに戻りたいと思う最大の理由は、コラボレーションとソーシャルな繋がりです。しかし、チームの他のメンバーが自宅で仕事をしている日にオフィスに行っても、そのような交流は得られません。つまり、ハイブリッドワークの生産性を高めるためには、個人のワークスタイルとチームのニーズの間で妥協点を見つけることが重要になります。 そのための方法のひとつとして、職場でどのように協力していくのか、チーム内で取り決めをすることが必要です。 マイクロソフトでは各チームにハイブリッドでどのように協力していくかを定義するチーム規範を作成し、ミーティングのない日を設定したり、人が集まる対面でのチームミーティングを計画したりしています。

リモートワークとオフィスワークの特徴を見極めて自分に一番ストレスのかからない働き方を探したり、チームでの協業について議論し決まりごとをつくるなど、こういった細かい積み重ねで柔軟な働き方を作っていくことこそ、これからの組織に必要なことなのかもしれません。

ポストコロナの世界では、生産性の向上について働く量ではなく働き方で捉える必要があります。ハイブリッドワークにおいても、一人ひとりのワークスタイルを尊重しながらチームとして仕事を進める仕組み作りができるかどうかが、生産性向上の鍵だと言えそうです。

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