インボイス制度、正直どうする?緊急アンケートから見えた現状とは
いよいよ2023年10月1日からスタートするインボイス制度。
この制度が始まると、消費税の仕入税額控除は適格請求書発行事業者(インボイス事業者)にのみ認められます。仕入税額控除とは、「売上に伴い預かった消費税」から「支払った消費税」を引いた差額を納められる仕組みです。逆に言えば、今後は取引相手がインボイス事業者でなければその差し引きができません。
...難しいですよね。もう少し噛み砕いてみましょう。
フリーランスの皆さんは、仕事を受ける立場の人が多いでしょう。企業からすれば消費税の支払い先となるわけです。しかし売上が1,000万円以下の場合、皆さんは免税事業者となり、その消費税を納めなくてよいとされています。そして2023年10月まではそれによって企業が影響を受けることはありません。
ところが10月以降は影響が生じます。皆さんがインボイス事業者でない場合、企業は皆さんに支払った消費税額を、自社の売上に伴って入ってきた消費税額から引くことができません。つまり企業は「免税事業者のフリーランスと取引すると、納める税金が多くなる」のです。そしてその結果、免税事業者との取引を避ける事業者が現れるのではないかと予想されています。
かといって免税事業者からインボイス事業者になると、これまで納付を免除されていた消費税を今後は納めることになり、実質的に負担が増えてしまうのです。
こうした状況を踏まえて、Sollective(ソレクティブ)では、コミュニティメンバーに対してアンケート調査を実施。インボイス制度への対応状況や、情報収集方法等について聞きました。
📝アンケート概要 ・実施期間:4/11~4/18 ・回答数:17件 ・対象:Sollectiveコミュニティに登録しているフリーランス ・回答者職種:デザイナー、エンジニア、広報、ライター、編集、コンサルタント、人事、ディレクター(広告系)、翻訳通訳
インボイス制度への対応はフリーランス内でも分かれる
まずは、気になる登録率を見てみましょう。
「登録している、登録するつもりである」と答えた人は17人中6人。逆に「登録しない」と答えたのは17人中5人で、フリーランス内でも意見が分かれる結果となりました。
登録した理由で最も多かったのは、「今後の取引先との関係」。インボイス制度に登録しなかった場合、取引先の納税額が増えて関係性が悪化することを危惧し、登録を決めた人が多いようです。
その一方で、インボイス制度の導入にあわせて取引先と基本単価を上げる交渉がしたいという意見もあり、これまでの契約を見直す機会として捉える人もいるようです。
逆に、登録しないと決めた人は「現在免税事業者であるため、消費税分の負担増を避けたい」という理由のほか、取引先がインボイス事業者でない個人情報が公開されてしまうこと、導入が始まったばかりで制度が不安定であること、手続きの難しさなども「登録しない」という決断につながっているようです。
こうした結果を見ていくと、インボイス制度について考えるときは「取引先との関係と、税負担回避のどちらに重きを置くか」「制度に対する不安度合い」という2点がポイントとなりそうです。
決められない理由は理解不足と情報不足
今回の調査では、17人中6人がインボイス制度について「まだ決めていない」と回答しています。
その理由としては、「今後インボイス制度が変更・改定される可能性があると考えている」との回答が多くありました。
また「情報が錯綜していて、結局どうなのかがわからずにいます」(ライター)という声もあり、あえて決断をせず様子を見ている人もいるようです。
さらに「インボイス制度について、自身の理解が足りていないと感じる」「登録することが損か得か判断できない」といった、理解度の浅さや情報不足を決められない理由として挙げる人も目立ちました。
「情報収集は自力で」が主流
では、フリーランスのインボイス制度の理解度はどれくらいなのでしょうか? 同じアンケートでは、インボイス制度への理解度も調査しました。
すると結果は二分。「ある程度理解しており、自身の理解度に不安は感じない」という人が9人いる一方で、「わからない点や不安な点がある」「まったく理解していない」を合わせると8人になりました。ちなみに「非常に詳しく理解している」と答えた人はゼロでした。
「ある程度理解している」人にどうやって理解を深めたかを尋ねたところ、「ネット・新聞・本」など自力で調べたという回答がもっとも多い結果となりました。
具体的な方法として寄せられたのは次のような声です。
自力で調べた人が多かった一方、「税理士など専門家に聞いた」という回答はその半分ほど。専門家への相談は正確な知識を得るには確実な方法ですが、実践している人は少ないようです。
次回は「そろそろ登録するかどうかを決めたい」「もっと理解する必要を感じている」というフリーランスの方向けに、決断するためのポイントとインボイス制度の対応ステップを、税金の専門家である税理士が解説します。
※個別の回答は、一部編集部にて改変しています。
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