フリーランスが知っておきたい契約にまつわる4つのキーワード。法律や見落としがちなリスクを正しく把握 Article Image

フリーランスが知っておきたい契約にまつわる4つのキーワード。法律や見落としがちなリスクを正しく把握

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フリーランスとして働く人の中には「契約書の内容がよくわからない」と契約書に苦手意識を持っている人も多いのではないでしょうか。

そういった苦手意識からか、しっかり確認せずに契約してしまったり、契約締結そのものを先送りにしてしまったりというケースも少なくありません。

ですが、ビジネスを円滑に進めたり後々のトラブルを回避したりするためにも、フリーランスにとって契約書は大切です。

本記事では、フリーランスがクライアント企業と契約を結ぶ時に知っておいてほしい4つのキーワードを通して契約書で見落としがちなリスクや気をつけるべきこと、そしてどのような法律になっているのかを分かりやすく説明していきます。

【記事の監修】弁護士法人GVA法律事務所・小名木 俊太郎 弁護士法人GVA法律事務所共同代表弁護士/and factory株式会社 社外監査役。各種SO(税制適格SO、有償SO、信託SO等)、ファイナンス、IPOサポート等、ベンチャー法務全般をサポートしている。第二東京弁護士会所属。 Twitter:https://twitter.com/shun01171 note:https://note.com/gva_onagi

知っておくべきキーワード1「独占禁止法」

個人で動くフリーランスの場合、クライアント企業との取引の中で立場が弱くなりがちです。そのため不利な条件で働くことになってしまうリスクを抱えています。

そんな時に役立つのが、「独占禁止法」です。

「独占禁止法」の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」で、公正で自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自に活動できるようにするために定められたものです。

そして「独占禁止法」では、「優越的地位の濫用」つまり企業が自己の取引上の地位が取引相手に優越していることを利用して、取引相手に自主的な判断をさせず経済上の不利益を与えるような行為を禁止しています。

たとえば、フリーランスが発注元から不当な要求や減額を受けた場合「独占禁止法」に反するため、公正取引委員会より「排除措置命令」が出ることも。そうすると不正な取引を行った企業に対して故意、過失の有無を問わず、損害賠償の請求ができるようになります。

クライアントとの取引で、不当な要求を受けていると感じたときは、ぜひ一度「独占禁止法」の内容を詳しく調べてみてください。

知っておくべきキーワード2「下請法」

「下請法」は、資本金1000万以上など一定の条件を満たした企業に適用される法律です。これは親事業者から下請事業者への不当な取扱いを規制するなど、フリーランスや中小事業者を守るために定められました。

「下請法」は「独占禁止法」の補完的立ち位置であり、主に以下のようなルールがあります。どれもあやふやなまま進めるとトラブルにつながりかねない重要な項目ばかりですが、こういった内容はすでに法律で義務や対応方法が決められているのです。

・発注内容を明記した書面の交付義務 発注内容、納期、発注額などの内容を記載して相手に通知する必要がある。 ・支払期日を定める義務 支払期日は物品等を受領した日(または下請事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内でできる限り短い期間内で定める必要がある。 ・下請代金の減額の禁止 親事業者は下請事業者に責任がないにも関わらず、発注後に代金の減額をすることはできない。 ・受領拒否の禁止 親事業者は下請事業者に責任がないにも関わらず、納品物の受領を拒むと下請法違反となる。

先にご紹介した「独占禁止法」とあわせて、厚生労働省からフリーランス向けのガイドラインがPDFにて公開されているので、こちらもぜひ見てみてください。

注意しておきたいのは、「下請法」によって規制される親事業者とは、資本金が1000万以上などの条件にあてはまる企業のみということです。そのため、とくに小規模企業と取引をする際には下請法が適用されないこともあると思いますが、契約書の締結の場面では「下請法」を参考に、発注内容や支払期日などの内容も重点的に確認するのがおすすめです。

知っておくべきキーワード3「債務不履行」

「債務不履行」とは「契約内容にある義務を果たさないこと」です。きちんと仕事をしていれば関係ない……と思うかもしれませんが、ここにも大きな落とし穴があります。

たとえばライターが記事を執筆した場合、納品後しばらく経ってから薬事法や薬機法、景表法などに違反していると判明したとします。

このとき依頼した企業は、ライターに「債務不履行」を理由に損害賠償を求めることができるのです。

もしこういったリスクを回避するならば、契約書に以下のポイントを盛り込んでおきましょう。

・契約書に免責事項を記載する 契約書に「納品した記事は薬事法、薬機法などに適応していることは保証しません」という一文を記載しておく ・損害賠償額を制限する 万が一債務不履行が発生した時の損害賠償額の上限を設定しておく

仕事にトラブルやミスはつきものです。あらかじめ自分の業種であり得るトラブルケースを想定して、備えておきましょう。

知っておくべきキーワード4「請負契約」

このキーワードは、デザイナーやエンジニアなど、成果物を納品する職種の人に関係してくるものです。

「請負契約」とは、成果物の完成をもって報酬が支払われる契約のことを指します。逆に言うと成果物が完成するまで報酬をもらうことができないため、成果物の基準を明確にしておくことがとても大切なのです。

成果物の基準というとイメージがしづらいですが、納品物をクライアントにデータ送付すれば完了なのか、Web上での公開まで行わなければいけないのかによって作業量は大きく変わってきます。

また、検収の回数や検収OKとなる基準、業務開始後に企画が中止になった際の責任の所在の考え方なども、トラブル回避のためにあらかじめ決めておくのがおすすめです。

この他に、「請負契約」で注意しておきたいのは「契約不適合責任」というキーワード。これは、フリーランス(請負人)が依頼主に納品したものが契約内容に適合していないと判断された場合、責任を負わなくてはいけないというものです。

たとえばエンジニアがシステム開発をして納品・契約終了後、しばらく経ってからバグがでた時にも適用されてしまいます。契約書上で契約不適合責任を求める期間や、その際の減額、賠償責任額が過度に厳しいものになっていないかを見ておくと良いでしょう。

番外編:制作物の「著作権」はどのように考える?

成果物を納品する機会の多い職種では「結局のところ、著作権は譲渡しても問題ないのか?」という疑問を持ったことがある人も多いかもしれません。

著作権をクライアントに譲渡したときのリスクとしては、納品物と同じ内容のものや似たものを他の企画に転用すると訴えられてしまう可能性があります。同じデータをほかの案件でそのまま使うことは考えづらいので、著作権を譲渡しても大きなリスクになることは少ないのではないでしょうか。

基本的にクライアントが用意する契約書では「著作権を譲渡する」と記載されているものが一般的です。ですが、最近は「自分の作品ポートフォリオのひとつである」として著作権を譲渡したくないと考えるデザイナーの方も増えてきています。

このあたりは自分のスタンス次第なので、どうしたいかを事前に決めておくのが良いでしょう。

またフリーランスとして必ず抑えておきたいのは、成果物を自分のWebサイトなどに実績として掲載する場合の注意点です。

これは契約書締結時に、秘密保持や公表にまつわる条項で「実績として出してはいけない」などの内容が盛り込まれていないか確認をすれば問題ありません。ですが、デザインや文章などの著作物のデータの場合には著作権も関係してくるので、契約書上でどのような扱いになっているか確認しておきましょう。

このように契約書上での確認は大切ですが、仕事は人と人との信頼関係でもあります。実績をサイトに紹介したい場合は、たとえ契約書上で問題がなくても先方に一言ことわりを入れてから掲載するのがおすすめです。

今回は、フリーランスが契約をする際に知っておきたい大切なキーワードを4つ紹介してきました。

フリーランスとして働いていると、クライアントとの行き違いや思いがけないトラブルに出会うことは少なくありません。自分の身を守るためにも法律をしっかり確認し、クライアントと擦り合わせや交渉をしていきましょう。

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